少女と面倒事
「ありがとうございます」
「こちらこそ美人さんと一緒に旅が出来たんだ役得だよ」
「び、美人だなんて!?」
オルレイはいきなりの褒め言葉にびっくりして赤面した。
「はっ! そいつが美人? 当たり前だろ? こんなんでもうちの傭兵団の中じゃあ一、二争うぐらい美人だ」
するとノヴァが得意げに笑って親指をオルレイに向ける。
「ちょ、ノヴァ! や、やめて! は、恥ずかしいから!」
「あん? 事実だろ?」
オルレイはいきなりの褒め言葉に動揺してノヴァの腕を掴んで宥めたがノヴァはなんて事ないように淡々とした態度を取られてしまいそれもまたオルレイは恥ずかしく感じた。
何を言っているのだろうかと思う。
自分が美人、とんでもない。
オルレイはずっと罵倒されて生きていたのだ灰色の髪も黄金の瞳も気持ち悪いと言われ続けてきたせいで十年経った今でも他者からの褒め言葉というのは慣れないものだ。
「とりあえずこれが代金だ」
「あいよ」
オルレイが慌ているのをよそに雷月が代金を支払い終えていた。
「さぁ行こうオルレイ。 私達の冒険へ」
「う、うん!」
オルレイはそんな動揺を抑えながら街並みを歩き始めた。
「はぁはぁっ!」
「待て!」
すると目の前から見るからにボロボロな少女が走ってくる。
背後から鎧を着た騎士の集団が襲いかかっていた。
「はぁなんだ?」
ノヴァが光景を見てため息を吐く。
「まぁ見ててあんま面白くないよね?」
雨も顎に手を当てて好戦的な笑みを浮かべた。
「まぁ、部外者である私達が関わったら大変でしょう? ここは大人しくしていま……ちょ、オルレイ!?」
「ジムド」
オルレイは雷月の静止も無視して咄嗟に手の平に魔力を集めて砂嵐を呼び起こした後少女を抱き抱えてそのままその場を離脱した。
「きゃっ!?」
「な、なんだぁ!?」
「チッ! 面倒事になった!」
「でも面白い……ね!」
「「うっ!」」
そう言いつつノヴァと雨が騎士の鳩尾に一撃を入れてそのまま倒れた。
「……はぁお前達は」
そんな光景に思わず雷月はため息を吐いた。