希望の指切り
「……まだアドネシアには仕事をして貰いたかったがまぁいい。 闇の力がどんどん弱まっているな?」
そう言ってアザイアは手を開いたり、閉じたりする。
「何故闇が弱まっている? 何か別の力が働いているのか?」
その原因はアザイアには分からない。
それもそのはずだ闇という存在はこの世界だと呪術というものとして唱独術の技術として扱われており、結界術、呪術、魔術の三つは唱独術として組み込まれている。
アザイアと戦ったリーゼは唱独術の使い手であり、呪術を解除する唱独術を体に掛けていた。
死に際の際にその術式を空間に散布し、既に現在進行でアザイアの闇はなくなっている。
十年も経てばアザイアは年を取っただけの強い魔法使いでしかなくなる。
アザイアはそれを知る事は一生ない。
「まぁいい。 これからは妖霊の時代だ」
そう言ってアザイアは雪景色を歩いた。
「……そうですか。 オルレイ様が」
「……子供達は孤児院で育てようと思っています」
「……お願いしますね。 ヤヌィ」
「はい」
「……帝国絶対に許しません!!」
そう言ってレイミーは玉座を強く叩いた。
「ん? ここは?」
真っ白で何もない世界。
その世界にオルレイはいた。
「うぐうぁぁぁぁうぅぅぅ」
声が聞こえる。
子供の声だ。
「……誰?」
オルレイが白い世界を歩くと一人の少年がいた。
「……なんだよ? ウゼェんだよ! あっち行け!」
見るからにボロボロだ。
黒い髪に黒い瞳服は白いダボっとした服を着ているその表情は絶望で染まっていた。
「……なんだよその目は? あっ? 俺をおちょくってんのか!?」
少年の目は血走っている。
何もかも絶望して自暴自棄を孕んだ声をしていた。
「……えっとあなた名前は?」
「……あっ? 三百号っていう実験動物だよ!」
「……名前ないの?」
「……名前なんて上等な物持ってねーよ!」
「……じゃあ私がつけてもいいかな?」
何故か悲しむ彼に名前をあげたい気分だった。
「……はっ?」
少年はオルレイの発言に対して驚いたのか呆けた顔をしている。
「巴なんてどうかな?」
「……なんで名前なんかつけるんだよ?」
「うーん。 私も何もなかったからかな?」
「何もねぇだ? お前はいい見た目してるし、裕福で家族もいたんだろ? いい身分だな!? おい!」
「……ううん。 違うよ。 私は捨て子だったんだ。 雪山に捨てられて死にかけた所を仲間に救われて今の私にして貰っただけだから」
「はっ? なんだよそれ」
少年は嘲笑をオルレイに向けてくる。
「……それで名乗ってくれる? これから三百号じゃなくて巴だって」
「……なんでお前の決めた事に俺が従わなくちゃなんねーんだんよ!」
「……あれ? もしかして友達いない感じ?」
「う、うるせぇ!」
「よしよし。 大丈夫大丈夫」
オルレイは少年の事を抱きしめていた。
かつて自分がされて嬉しかった事を彼にしてあげていた。
「なんだよいきなり?」
「辛かったんだね?」
「何がかっんだ?」
声が震えている。
「頑張っているんだね?」
「……う、うぅぅぅぁぁぁぁ」
「よしよし」
泣いた。
少年が泣いている。
年相応の子供のように泣いているのをオルレイは感じた。
「……ぐす。 グビ」
もう強がっている少年はいない。
ただ年相応の少年が目の前にいるだけだ。
「……たとえ今は一人でもいつか君は大きくなって色んな人に出会えるよ」
「……本当か?」
「うん。 本当」
そう言ってオルレイは笑った。
「……名前なんて言うんだよ」
泣きながら少年はオルレイの名前を聞いてきた。
「オルレイ・アースって言うんだよろしね」
「じゃあオルレイまた会えるか?」
「うーん多分会えないと思う。 だから忘れないでいて生きていれば必ずいい事があるって心の中で思って生きてね巴」
「分かった」
そう言ってオルレイは巴と指切りをした。
「じゃあ幸せにね巴」
「……分かった」
こうしてオルレイ・アースは粒子となって消滅した。
一人の少年に希望を与えて。




