第46話 イソギンチャクの処世術
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康達が境目にある街へ向かう準備をしている頃。その街の近くに要七がいて地面に座っていた。団員服姿だが、薄汚くて品がなくチンピラのようになっていた。
「圭流のやつ! ざまあみろ!」
酒を持っており、自分を追放した圭流が康に殺されたので喜んで酔っている。
「他人の不幸はいい肴だ」
要七は酒を飲んで現実逃避をしていた。鮟鱇田は康のものになり仕事ができず、醜態が広がって彼を迎えるところもない。
街にいると領民達に白い目で見られ、プライドが高い彼はだれもいないところで酔うしかない。
「康のやつ!! 絶対許さない!!」
こんな生活にしたゴスロリ男の娘を恨んでいるが、口だけでなにもできない。
「これが滅んだ磯木家の嫡男か」
若い美女が現れて要七を見ている。
背中に届くほどの長い金髪で炎のような赤いバンダナをしている。エキゾチックな深紅のドレス姿で裸足に先端が尖っている靴を履いていた。
「だれだ、お前は? いい女だな。おれの相手をしろ」
酔っている要七は下品な笑みを浮かべた。貴族の頃は女がたくさんいたが、今はばれないように犯して殺している。
美女は彼を軽蔑しており、さらに冷たい目になった。
「おんなあ!! なんだ、その目は!?」
彼女の目を見て怒り、立ちあがろうとした。無価値なものを見る目なのでプライドが高くて酔っている要七は過敏になっていた。
「この無礼者!!」
突然、若い男性が現れて剣を向けた。
「なっ!? だれだ!?」
要七は驚き、立ちあがるのをやめて睨んだ。
短い黒髪で金色のバンダナをしており、黄緑の団員服姿で黒いブーツを履いていた。
「僕の名は場田 翔利!! 宝美玉を治める砂総理家の切り込み隊長だ!!」
キザで自慢するように自己紹介をした。
「砂総理家だと!!」
自分より格上なので要七は驚いた。同じ年齢のイケメンでも今の自分と差があるので悔しかった。
「そして、このお方は砂総理家のご当主 砂総理荒尾様だ!!」
若い女性の紹介もした。
「砂総理家のご当主!! 宝美玉の黄金蠍!!」
要七は女性の正体を知って驚き、酔いが醒めて赤い顔が青くなった。
「無礼をお許しください!!」
彼は慌てて平伏した。知っていたらあのようなことはいわなかったので後悔している。
荒尾は優しい目になり、笑みを浮かべた。
「まあいい。私はお前に仕事とチャンスを与えにきた」
「荒尾様がおれに仕事とチャンスを!?」
彼女の言葉で頭をあげた。宝美玉を治めている名門 砂総理家の当主が直接仕事とチャンスを与えにきたので自分は特別と思うようになった。
(さすが荒尾様。お目が高い。康とは大違いだ)
要七は春也のことを忘れ、彼女を主と思い、腹心の気分になった。
「お前の仕事はあの街を私のものにすることだ。どんな手段でもいい。成功すれば翔利のような役職にする」
荒尾は街を指さして説明した。
「おれだけでですか?」
今の自分だけでは無理な仕事なので不安になった。
「安心しろ。ここに私の部隊がくる。その部隊とともに街を手に入れろ」
彼だけにやらせるわけがなく要七の不安は消えた。
「私はお前に期待している」
「は、はい!! 荒尾様にあの街を捧げます!!」
彼女の優しい言葉がうれしくて、要七は立ちあがり、街へ向かう。彼がいなくなり、二人は本性を見せた。
「あれでは康に負けるのは当然だ」
荒尾は冷めた目になり、頭から要七の存在を消した。
「あのような捨て駒の相手。お疲れさまです」
翔利は剣を鞘にいれ、主に頭をさげた。
「これが私の仕事だ」
彼女は康の動きに気づき、対策のために要七のような負け犬に声をかけて集めていた。
名門の当主がきたので要七のように自分を特別と思って喜び、困窮している者達は判断力がなく細かいことを考えず彼女の話に飛びついた。
「負け犬どもがあの街をメチャクチャにすればそれでいい」
康がくるのは分かっており、要七達に話すと逃げるかもしれないので隠して仕事をさせる。
「やつが最後だから宝美玉に戻るぞ」
「はい、荒尾様」
要七達を援護する気などなかった。
「それにしても期待しているといっただけで、その気になるとは。バカなやつばかりだ」
負け犬を人と思っていないので荒尾はバカにして笑った。
「まったく哀れです」
翔利は追従して笑い、二人は宝美玉に戻った。
荒尾と翔利がいなくなった後、彼女が声をかけた者が集まり、その中に要七がいる。
荒尾直々の仕事でやめることができず一発逆転や出世を狙う者達はやめる気などない。
なにも知らない要七達は砂塵の残党のようになっていた。
荒尾の名前はサソリです。
「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」と「ストイックな二人の殴り愛」も連載中です。




