第44話 捕虜のカツ丼
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康が勇牧家を撃退した後。元殿坂家の洋館にある囚人を尋問する部屋にはテーブルと椅子があり、月理がいて、椅子に座っていた。
傭ヘドロがいて、彼女と向かい合っている。白と黒の横縞の長そでと長ズボンの囚人服姿で裸足。両手に能力封じの手錠があり、能力が使えないのに余裕の態度で椅子に座っていた。
「私をどうするの? 拷問? 処刑?」
分からないので楽しんでいる。
「そんなことはしません」
強い相手でも月理は冷静だった。
康は傭ヘドロを元に戻す命令をしたが、彼女の扱いに困っていた。優秀な人材で殺すのはもったいなくて、信頼できないので味方にもできない。
また敵になるかもしれないので捕虜にして管理するしかなかった。
同じ元玩無身でも彼女のせいでトランプの騎士隊と雑兵蟻の対策が広がってしまったので月理はよく思っていない。
能力が使えなくて、強い敵が多くいるので傭ヘドロはここから脱出する気がない。
「お待たせしました」
重苦しい空気を壊すように岡持ちを持った渚がやってきた。
「渚さん」
味方がきたので月理は少し笑い、傭ヘドロは少し警戒している。
「出前です」
テーブルに近づき、岡持ちから料理を出して置いた。
「これはカツ丼?」
傭ヘドロの前にカツ丼、月理の前に置いたのは球体の三つの肉団子だった。
「特別な捕虜なので食事は渚さんの料理で今回はカツ丼です」
傭ヘドロの食事は渚の料理の余り物や試作品で本人が持ってきた。
「どうぞ。毒なんて入ってません。ただお口にあうかどうか」
渚とカツ丼を見て毒殺はないと判断し、箸を持った。
「いただきます」
食事の時は手錠が伸び、カツ丼を持って食べることができる。黄金のような卵とタマネギをまとったトンカツを口に入れた。
食べた瞬間、トンカツが黄金の豚になって口の中を走る姿が頭に浮かんだ。豚は歯に当たりながら進み、食道を通って胃に消えた。
「おいしい」
とろけるようなトンカツと卵とタマネギがまろやかでサッパリしており、傭ヘドロは恍惚の表情を浮かべながら食べている。
「よかった」
おいしそうに食べている彼女を見て渚は喜んでいる。
「おいしいです」
傭ヘドロに対抗するように月理は肉団子をひとつ食べたが、真剣な表情だった。
「それはなに?」
カツ丼を完食した傭ヘドロは肉団子を見た。肉団子を作った渚が説明する。
「付け合わせの試作品でしたが今では仲間達に作る軽食で憎しみ団子です」
「憎しみ団子?」
調理の説明が好きで話す。
「いろいろな魚の肉を康様に逆らう者達のことを考えて粘りが出るまでミンチにして丸めて、鶏と豚のスープで煮込んだものです」
主に逆らう者達への憎しみを魚の肉にぶつけ、包丁でミンチにしてストレスを発散。味が逃げないように丸め、料理として出せる鶏と豚のスープに入れて煮込み、肉団子はスープを吸った。
「こちらもどうぞ」
月理は自分の軽食を与えた。
「どんな味かしら?」
傭ヘドロは肉団子をひとつとってかじった。
「おいしい」
美味だが、カツ丼と比べると地味だった。
「丸ごと食べるとすごいですよ」
よく食べる月理の話を聞いて、かじった肉団子を口の中に入れた。かむと吸ったスープが肉団子から流れ、口の中に広がっていく。
(口の中に広がってしみていくスープ)
カツ丼の余韻を消していく味で黒い憎しみの海がある砂浜を白いつば広帽子と白いワンピース姿の傭ヘドロが裸足で楽しそうに歩いている感じになった。
肉団子がほぐれ、いろいろな魚になって流れているスープを泳ぎ、口の中から胃に広がっていった。
「あっ」
傭ヘドロは恍惚の表情になり、また食べたくなって最後の肉団子を食べた。
捕虜になって傭ヘドロの食生活は豊富になった。
憎しみ団子の名前は憎しみとしみる、肉団子です。
「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」と「ストイックな二人の殴り愛」も連載中です。




