第12話 盛者必衰の処遇
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春也達がいなくなった後。康は館の外におり敗北した団員達の処遇を決めている。館を守っていた団員達はトランプの騎士隊と雑兵蟻達に包囲されており逃げることができず生きた心地がしない。
団員達はひとりずつ康の前に出され、処断されていく。縛られていなくても康を恐れていて、なにもできず彼の両隣に黒のジョーカーと月理がいる。
「お前の家は断絶、すべての財産を没収する」
貴族の団員は家をつぶして、なにもできないようにし財産を没収して賠償金にする。家がなくなれば贅沢できず、もう貴族ではないので従っている下級団員達は離れるだろう。
「くっ」
首にはなっていないが、なんの権力もない庶民の団員にされたのは屈辱でゴスロリ男の娘を睨んだ。睨むだけでなにもいえない元貴族の団員は下げられ、次の団員が康の前に出された。
「お前は首だ」
庶民の団員は没収する財産がないので容赦なく首という罰を与えた。康は貴族なので庶民をどのように扱ってもいい権利がある。
「そんな」
首になって生活が困難になってしまったので絶望した。上の命令に従って戦闘をしたのに理不尽に解雇されたのは納得できないが、もう決まったことなので受け入れるしかなかった。
戦闘で多くの死者が出たので処刑はなく貴族の団員は断絶や降格、庶民の団員は解雇や降格で敗者達は敗北を認めても康を恨んでいる。
迅速に容赦なく処断していき最後の団員がゴスロリ男の娘の前に出された。
「要七」
銀知雄の息子を見てバカにして笑った。命が惜しくて自分だけ逃げようとした彼は捕まり、そのことを知っている団員達は冷たい目で睨んでいた。
要七達のせいで、こんなことになり自分だけ逃げようとしたので団員達は袋叩きにしたかったがトランプの騎士隊と雑兵蟻達が見張っていたためできなかった。
「康様!」
憎い敵に笑われ団員達に睨まれて屈辱を味わってもなんとか耐え、ひざまずいた。
「さすが正統なご当主様。春也と父は愚かでしたが、おれは違います。これからは康様にお仕えします」
すべて主と父のせいにし康に乗りかえようと媚びへつらい頭をさげた。
「ふふふ」
浅ましい姿が面白くてゴスロリ男の娘は笑い、団員達はひどいものを見たので怒りが爆発した。
「なに自分だけ乗りかえようとしてんだ!!」
「この恥知らず!!」
「こんなやつだったとは!! 死ね!! 死んで詫びろ!!」
今までの態度がウソのような要七を非難した。その中に彼の部下や親友がいた。
「だまれ!! おれ達に従うことしかできない無能ども!! お前達が死ね!!」
自分を罵倒する者達などどうでもよく頭をあげ、怒って罵倒した。自分だけ助かろうとしており余裕がなく、ひどいイケメンになっていて滑稽だった。
「あんたに従ったせいで!!」
「自分で決めたことだろ!!」
「お前とは絶交だ!!」
「こっちだって、その顔を見たくない!!」
要七だけでなく近くにいる者達を責める。親友や部下、上官だろうと関係なく言い争いをして険悪になっていく。これでもう結託することはないだろう。
逆らった者達の仲が悪くなるのは面白いが耳障りでもあるので康は手で指示を出し、トランプの騎士隊と雑兵蟻達は構えた。団員達は冷静になり言い争いをやめ、おとなしくなった。
「磯木家の優秀な嫡男を直属の部下にすれば役に立ちます!!」
静かになったので要七は自分を売りこむ。優秀で康のことを軽く見ているので部下になれると思っていた。心の底から仕える気などなく他のやつらのようにすべてを失うのが嫌なだけだった。
そんな浅ましい男が面白くて康は笑い、主を軽く見ているので月理は睨んでいた。
「春也がダメになって康様につくとは虫がいいですね」
忠誠心が高い彼女は鞍替えしようとしている要七を蔑み、汚物扱いしていた。普通の相手なら、このような態度はとらず今まで康を嫌っていて手の平を返した相手だから態度が悪い。
「なんだ、お前は!? 使用人か!? 使用人ごときが話の邪魔をするな!!」
大事な話に入ってきて侮辱したので要七は怒鳴った。自分より身分が高い者は覚えており身分が低い者は覚えないので康の使用人としか思っていない。
本人以上に康は怒っており怖い顔で要七を睨んでいる。
「私がお前のようなやつを部下にするわけがないだろ。身の程を弁えろ」
彼を陣営に入れる気など毛頭ない。
「優秀なおれがいらないというのですか?」
屈辱に耐えて媚びへつらった要七はゴスロリ男の娘の言葉が信じられなかった。
「うん、いらない」
はっきりいわれ、彼のプライドは砕けた。要七が優秀だったのは春也と父がいたからで味方に嫌われていて康の陣営には彼より優秀な味方がたくさんおり部下にする意味がない。
「磯木家は断絶、お前は首で財産はすべて没収。お前は使用人の仕事ができないから月理以下の庶民だ」
磯木家は滅び、すべてを失った。無一文の庶民にされた屈辱で康への恨みが増した。
「没収した財産は豊希に与えるから安心しろ、要七」
磯木家の財産はすべて婚約者に与える。婚約者という理由と彼女は内政に優れており財産を有効活用できる。
「なにか文句でもあるのか?」
「い、いえ!!」
文句があっても恐怖で、なにもいえず受け入れるしかなく頭をさげた。惨めな庶民になった要七を見て康だけでなく団員達もいい気味と思い笑っていた。
なにもできない彼は康への恨みが殺意となって心にたまっている。
新当主は第一基地へいき、同じように敗北した団員達を処断し、きれいにしていった。
死ななかった要七は無職の庶民になりました。
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「美女能力者のお腹にある別空間で特訓をして強くなった中途半端な能力者」と「非正規団員の小事件集」も連載中です。




