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ベティの双剣

 少し印象が変わった。

 あんまり人に教えるタイプではないと思ったからだ。


 ベティがタツザマにアドバイスを送っていた事は、タツザマから後々聞いた話だ。

 しかし僕の中でそれは、珍しいと思ったのだ。

 元々鳥人族は、強い者が領主を務めるらしい。

 じゃあ強い者がわざわざ、弱い者を鍛えるか?

 自分の地位が脅かされる可能性を考慮すれば、それは馬鹿のする事だと僕は思う。

 しかし今の鳥人族は、大きく変革の時期を迎えている。

 個人戦が主だった戦い方に、集団戦という概念が加わった。

 でも今まで、各々でしか戦ってこなかった者達だ。

 そうなるとリーダーが必要になる。

 出来る者出来ない者が現れるし、能力差だって出てくる。

 それをどのように補うのか考えるのが、リーダーだと僕は思う。


 前にも言ったかもしれないけど、リーダーには二種類あると思っている。

 俺についてこいと背中で語るタイプと、調和から上手く皆を動かすタイプ。

 どっちも間違ってないし、どっちも魅力的なリーダーは居る。

 でも僕は、ベティがなるなら前者だとずっと思っていた。

 人にアドバイスを送って、上のステップに導く。

 配下じゃないにしろ、あまり関わりが無かったタツザマもこの出来事で、ベティへの信頼感は上がったんじゃないかな。








 タツザマは土煙が収まると、持っていた水筒で口の中を濯いだ。

 その時に目に入ったのが、モールマンの死体である。

 どうして気になったのか?

 それは死体にへばりついている銀色が、どうなったのか知りたくなったからだ。



「コレ、モールマンは勝手に動くと言っていたな。もしかして、生きてるのか?」


 急に襲ってこないかと、警戒をしながら恐る恐るモールマンの死体に近付くタツザマ。

 太刀を抜き、いつ攻撃が来ても問題無いと構えながら、その辺に落ちていた長い木の棒で、銀色をつついてみる。



「・・・動かんな。生き物ではないのか?」


 もう少し近付いてみようと前へ出て、更に棒で銀色を動かしてみた。



「意外と重量があるな。これは金属か何かなのか?」


 一切動かない銀色に、タツザマはいよいよ触ってみる事にした。

 太刀を鞘に納め、ゆっくりと銀色へ手を伸ばす。

 そして彼は、とうとう銀色に手を触れてみた。



「固い!?どういう事だ?」


 思わず声が大きくなると、周りを見回して誰も居ない事を確認する。

 ギュッと握っても、変化する様子は無い。

 むしろ固くて、明らかに金属だと分かるくらいだった。


 熱した鉄は柔らかくなる事はタツザマも知っている。

 だが戦っている最中、何度もコレを太刀で触れたが、柔らかくなるくらいの熱など発していなかった。



「・・・何なのだ、この物体は?」


 彼は気になったこの物体を、持ち帰る事にした。










「早く出てこないかしら」


 空からゆっくりと、ある方向へ飛んでいくベティ。

 ベティは潜ったままのモールマンを、追い続けていた。


 モールマンは何故、ベティを避けたのか?

 それはモールマンとベティが放った攻撃で、すぐに明らかになった。




 ベティは紫色のモールマンの居る場所へ向かうと、そこには余裕の態度で待っていたモールマンを見つけた。

 腕を組み、ようやくやって来たベティを睨みつけていた。



「遅い!」


「あら、お待たせしちゃったかしら?」


 ベティはちょっとだけ笑ってしまった。

 まさか自分が、遅いだなんて言われると思わなかったからだ。

 自分より速い者など、居るのかすら分からない。

 そう思ったからこそ笑ったのだが、モールマンからすると馬鹿にされたと勘違いしたのだろう。

 左腕の大きな爪を空に居るベティへ向けると、火炎放射器のように炎がベティへと向かっていった。



「おっと!アナタ、炎が使えるのね」


 ベティが余裕で避けると、それもまた煽りと感じたのか、今度は右腕を空に向けた。



「あら、今度は水?」


 モールマンの右腕からは、水が吹き出していた。

 しかもその水は、カッターのように近くの木を斬り裂いた。



「凄い水圧ね。ん?アナタ、火と水の力、二つ使えるの?」


 ベティの疑問に、モールマンは鼻を鳴らした。

 そして当たり前だと言わんばかりに、意気揚々と答える。



「俺様はモールマンのエリート戦士!その辺の雑魚達と違い、二つの属性を有するのだ」


「エリートなの。凄いわねぇ」


 敵から凄いと言われたモールマンは、更に得意げになる。

 ベティはそれを見ていて、これは面白いと話を聞く事にした。



「ねぇ、エリートって言うくらいだから、やっぱり数が少ないのかしら?」


「そうだな、エリートと呼ばれる奴は二十くらいだが、真のエリートは俺様を含めて五体だろうな」


「あら凄い!もしかして、城に居たのもそうなの?」


「・・・そうだ。アレは俺様でも認める、強者達だな」


 紫色のモールマンは、他のモールマンに興味を持たれた事に不満そうだ。

 ベティはそれを察して、すぐに話題を変えた。



「やっぱり。でもアナタが一番目立ってたわね。他の人なら金色とか銀色の方に目が行くと思うけど、アタシは違う。紫は特別なのよね」


 モールマンの目の辺りの毛が、大きく動いた。

 ベティはそれを見て、更に言葉を続ける。



「アタシはそう、紫色が好きなのよ。金とか銀は、目立つもの。でも逆に言えば、金銀はくすむと汚く見える。紫は濃くても薄くても、また違った色として見えるしね」


「ほう!貴様は見る目があるな。スマジという地上の騎士達は、やはり金や銀に目が行っていたが。同じ地上の者でも違うのだな」


「そりゃアタシ達は、ヒト族じゃないし。ま、好みは魔族もヒト族も関係無いか」


 モールマンの反応は上々だった。

 ベティの言葉に、自分が誉められたと酔いしれている感があった。

 その事が分かるのが、モールマンの次の言葉だった。



「貴様はなかなか見所がある。どうだ?俺様が王に口添えをしよう。俺様の配下にならないか?」


 気分の良いモールマンが、ベティを口説きは掛かった。

 しかしベティの返事は、当然ながらノーである。



「ごめんなさいねぇ。アタシ、好きか嫌いかで言えば紫色は好きだけど、自分より弱い男に興味は無いの。それよりも、アナタ達の王は、何者?急にモールマンをまとめたんでしょ?」


「王?王の事を知ってどうする?」


「どうもしないわよ。ただ単に興味本位に聞いただけ」


 少し怪しまれたベティだったが、モールマンは少し悩んだ挙句に話を始めた。



「王の生まれた経緯は知らない。だが、あの方が頭角を現した後、モールマンは劇的に変わった。その証拠が、ジャイアントの女王の捕獲、そして捕食だったのだ。俺様も王より弱いつもりは無い。だが、もし戦っても勝てる気はしないな」


「ふーん。なるほどね」


 ベティはモールマンの言葉から、いくつかのヒントを得た。

 王は強いだけでなく、頭の回転が速い事。

 そして、自信過剰なこの紫のモールマンでも、勝てないと言わしめる相手だという事。



「それよりも、さっきの返答はどうなのだ?」


「さっきの返答?あぁ、配下になれだっけ?アタシ、自分より弱い男の配下になる気は無いの」


「なるほど。ならば俺様の強さを示せば、良いのだな?」


「んー、どっちにしろ無理ね。生理的に受けつけないもの」


 ベティは当たり前のように毒を吐くと、モールマンの機嫌はみるみる激変。



「ふざけるなよ!ならば貴様、俺様に食われて力の一部となれ!俺様が空を飛べれば、無敵だ!」


「無敵ですって?アナタ、笑いの資質はあるようね」


「馬鹿にするな!」


 左爪を向けて、炎を放射してくるモールマン。

 今度は先程よりも範囲が広く、扇状へ放射されている。



「どうだ?避けられまい」


「別に避けられなくもないけど、そろそろ本当の事を教えてあげるわ」


 ベティは避ける素振りも見せず、腰に差した双剣の一本を取り出した。

 同じく左手に持った剣をモールマンへと向けると、ポーズを決め始める。



「ベティィィリフレッシュウォオォタアァァ!!」


「な、何?」


 モールマンがベティの言葉に戸惑っていると、それよりも驚愕の光景を目にする事になる。

 ベティの左手に持った短剣から水が吹き出し、自分の放射した炎を消化してしまったのだ。

 唖然とするモールマンに対して、彼はこう言った。



「得意げに話してたから言いづらかったけど、アタシも同じ事出来るのよね」








「ななななんだとおぉぉ!?」


 モールマンが驚きのあまり、後ろに二、三歩下がると、すぐに我に返った。

 今度は炎が消火されるなら、水の勢いで叩き落とす。

 そう考え、彼は右腕を向けた。



「だから無駄なのよ。ベティィィバアァァニングファイヤアァァ!!」


 もう一本の双剣を右手で抜くと、再びモールマンに向けて叫ぶベティ。

 今度は炎が吹き上がり、モールマンの水と相殺。

 二度の蒸気で辺りの湿度は、大きく上がった。



「ば、馬鹿なあぁぁ!!」


「アナタが相手で、ホントに良かったわ。この双剣の力を試すのに、持ってこいの相手なんだもの」



 ベティの双剣には、それぞれクリスタルが装着されていた。

 その中に入っている魔法、それが火属性と水属性の魔法だった。



「さっきも言ったけど、アタシは紫が好きなの。知ってる?火属性の魔法を封じると赤に。水属性の魔法を封じると、青くなるのよ」


 本来はそれを敵に見られると、クリスタルの中身が何の属性なのかバレてしまう。

 故にコバ達は、色が分からないようにカバーを付けていた。

 しかしベティは、それを美しくないと外し、綺麗な赤と青が見れるようにしている。



「見て、こうやって重ねると、紫色になるの。そして紫色でも、薄かったり濃かったりする」


 ベティは両手に持った双剣を、二本ともモールマンへと向けた。



「アナタには紫色への愛が足りないわ」


「あ、愛?」


「こうすると、どうなるか分かる?」


 右手の赤い双剣と左手の青い双剣のクリスタルが、両方とも光った。

 しかし赤のクリスタルの方が、光が強い。

 すると辺りは、水蒸気が大量に発生し始めた。



「水を大きな熱で気化させると、こうやって辺りは水蒸気に包まれる。そうなるとアタシの場合、とても有利になるのよ」


 瞬時にモールマンの背後に回り込み、耳元で囁くベティ。

 その声に驚き背後に肘打ちをしたモールマンだったが、そこには既に影も形も無かった。



「こういうのもあるのよ」


 再びクリスタルが両方とも光ったが、今度は青い方の光が強い。

 すると左手の短剣から、モールマンに向かって熱湯が浴びせられる。



「アツツッ!」


「同じ属性でも、出力を変えるだけで効果が変わるの。赤が強い時と青が強い時で、同じ紫色でも色合いも変わるのよ」


「そ、それがどうした!?」


「だから言ってるでしょ。紫色への愛が足りないと。じゃあ両方とも最大火力で放ったら、どうなるのかしらね?」


 ベティはこんな事をモールマンに聞いたが、実はベティも詳しくは知らない。

 そこまでこの双剣を、試していないからだ。

 彼が同じような能力を持つモールマンが丁度良いと言ったのは、試すのに丁度良い相手だという意味が強かった。


 しかしモールマンの方は、そんなベティの考えなど知らない。

 想像もつかない事になると思ったモールマンは、パニックになり突然逃げ出してしまった。



「こ、こんな化け物と付き合っていられるか!お前の仲間を食らってから、今度こそお前を倒してやる!」


 捨てゼリフを吐くと、モールマンは土の中へ潜ってしまった。

 それを見たベティは、ため息を吐きながら一人呟く。








「馬鹿ねぇ。仲間を食らうって言ってる時点で、行き先が限られるじゃないの。先回りして待っててって、告白してるのかしら?ハア・・・こんな奴が相手なんて、しょうもな」

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