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落城?陥落?

 もしも自分の思いのままに、大きさが変えられるなら。

 大きい方が良いですか?

 平均が良いですか?


 多分、小さい方が良いって人は居ないと思うんだよね。

 女性なら分からないけど、男の人で自ら低身長が良いですって人は聞いた事が無い。

 もしかしたら、競馬の騎手や競艇選手を目指しているなら、それは違うかもしれないけど。

 でも子供の頃から、背が低いままで居てくれ!と思う人は少ないんじゃないかな?

 そう考えると、やっぱり平均か高身長ってなると思うんだよね。

 だけど大きい人って、それはそれで不便だと聞く。

 日本の場合、電車に乗り込む時や扉で屈む人も居るって聞くし。

 じゃあ平均くらいが丁度良いのか?

 多分丁度良いのは、やっぱり平均なんだろう。

 でもさ、自分で選べると言ったら、高身長を選ばない?

 そっちの方がモテるとか思うし。

 まあね、僕も分かってるのよ。

 モテるとかモテないとか、身長だけじゃないってね。

 じゃないとさ、僕達は平均よりちょい高かったのに、モテなかったわけで。


 身長だけが全てじゃない。

 背が低くても凄いスポーツ選手も居るし、背が高くてもデクの棒と揶揄される人も居る。

 それに僕はこうも思う。

 自分の想像した通りに身長が伸ばせてしまったら、それで上手くいかなくても言い訳出来なくない?

 そう考えると、やっぱり今までの自分で良かったなって思うのは、自分に逃げ道を作ってるんでしょうかね。







 地震の正体は、地底から出てきたジェラルディンだった。

 どうやら彼女は、モールマンの策略に気付いて、引き返してきたみたいだ。

 ただ、これだけは言いたい。

 出る場所は考えろ!



「兄さん、外に逃げるよ!」


「どうやって!?」


「飛んでに決まってるでしょ」


「あ、なるほど」


 兄は新たな魂の欠片で、空が飛べる。

 そしてトキドも、ケモノの力を解放すれば同様に飛べるのだ。

 二人飛べる人間が居れば、頑張れば十何人くらいは地面に下ろせるだろう。

 ・・・多分。



「トキド、行くぞ」


「わ、分かった!紅虎ぁ!」


 大きな炎がトキドを包む。

 正直な話、暑い。

 これ、ネット燃えないよな?



「網が燃えないうちに、早く外に出よう」


 やっぱり燃えるんかい!



「フハハハ!なんだ、このよりどりみどりな連中は?私を楽しませてくれる為に、揃えたって言うのかい?」


 下ではジェラルディンが、見当違いな事を言っている。

 どうやらモールマン達が慌てて下の階に降りていったのは、ジェラルディンが来る事を察知しての事だったらしい。



「今のうちだ。今ならモールマンも、こっちに目が向いていない」


「行くぞ」


 兄とトキドは、壁を蹴飛ばして大きな穴を空けた。

 そのまま外へ飛び出していくと、予想以上に速いスピードで落下していく。



「おい!それじゃ危ないだろ!」


「ち、違っ!重くてスピードが落ちないんだよ!」


 トキドが言い訳をしているが、兄はそんな事も言えない状況だ。

 空を飛ぶという事には慣れても、その耐荷重とでもいうのか?

 重い物を持って飛べるかまでは、詳しく調べていなかった。

 だから必死に空を飛ぼうと、顔を真っ赤にしながら網を引っ張っていた。



「ま、マオくん、このままじゃあ網の中で皆が・・・」


 ヤバイな。

 網の中で騎士達の身体が、ごちゃ混ぜになりながら砕けるだろう。

 肉団子みたいになるかも・・・。

 想像しただけで、吐き気がしてきた。



「そんな事は許されなーい!」


 流石にそんな死に方は、騎士達も嫌だろうし。

 僕も手伝わないと。



「マオくん!?」


「先に下に行く。ハクトは頑張って降りてきてくれ」


 僕は兄が空けた大きな穴から、下へ飛び降りた。



「あいきゃんふらーい!とはいかないのは、知ってるんだよおぉぉぉ!!」


「お、おい!」


 トキドの声が通り過ぎていった。

 その瞬間、僕の目の前は地面である。

 ズドン!という音が、自分の耳に入った。



「だ、大丈夫かぁ!?って、立ち上がれるのかよ!」


 僕は何も無かったかのように、立ち上がった。

 当たり前である。

 だって僕の身体は、ミスリル製なのだ。

 ちょっとやそっとじゃ壊れないのだ。



「風魔法で下から支えるから、ゆっくりと下ろすんだ」


「た、助かる!」


 兄達はゆっくりと降りてくると、騎士達が入った網が無事に地面へと着地する。



「つ、疲れたぁ!戦うより気を遣ったぞ」


「俺も同じ気持ちだな。ノーヒットノーランの最中より、気を遣った気がする」


 二人とも即座に地面へと倒れ込む。



「マオくん、大丈夫だった?」


「早いな!」


 ハクトはロープを使って、壁伝いに降りてきたのだが、思った以上に早くて驚いてしまった。



 僕とハクトはすぐに網を解くと、騎士達も気を張っていたのか、皆ため息を吐きながら中から出てきた。



「皆、トキドとハクトに従って、戦場の方に向かうんだ。ウケフジ達と合流しろ」


「魔王様達は?」


「ジェラルディンの援護に回るよ」


「分かった」


 トキドも戦うと渋るかと思ったが、どうやら特殊な個体は通常の戦い方とは異なる。

 それが嫌なのか負傷者達を率いる事を、すぐに了承していた。



「マオくんも気を付けて」


「そっちもな」


 トキドとハクトは、オナキギャワ達を引き連れて城から離れていった。







 僕達が残った理由は、いくつかある。

 実はさっきから、ジェラルディンの高笑いが聞こえなくなったのだ。

 それはどういう意味なのか?

 余裕があれば、フハハハ!とか言ってそうなのだが。

 それが無いとなると、余程苦戦しているのか、もしくは更に押されていてやられているのではと勘繰ってしまった。



「兄さん」


「分かってる。ジェラルディンの声がしないんだろう?」


「うん、だから助けに・・・」


 その瞬間だった。

 城が僕達の前から無くなった。

 正確には、城が倒壊したのだ。



「ゲホゲホ!し、城が崩れた!?」


「中はどうなったんだろう!?」


 空高く舞う土煙に、兄は目と口をやられている。

 流石に身体強化をしても、こうなってはジェラルディンの安否の確認は出来ない。

 でも、土煙なら僕がなんとか出来る。



「お前、魔法で土煙を飛ばしたのか?」


「そうだよ。これなら確認出来るでしょ?」


 風魔法で舞い上がった土煙をどうにかしてしまえば、兄の目なら確認出来る。



「どう?」


「・・・これは・・・」


 この反応は、どういう意味だ?

 やられているとも言えないが、勝っているような反応でもない。



「兄さん?」


「ハッキリ言えば、どっちが勝ってるかは判断出来ない。何故なら、お互いに食い合っているからだ」


「・・・どういう意味?」


「モールマンはジェラルディンに対して、多数で挑んでいる。色々な特殊個体が集まってるみたいで、ジェラルディンも手玉に取られているみたいだな」


「お互いに食い合ってるっていうのは?」


「今、俺の目にはジェラルディンの口元にモールマンの足が見えている。多数居たうちの一体だろう。だけど、その代わりにジェラルディンも、モールマンに食いつかれているんだ」


 それはやられてるとは言わないのだろうか?

 多数居るうちの一体を食べるのと、大勢に噛みつかれるのでは、内容が違う気がする。



「ジェラルディンの外殻は硬い。ほとんどのモールマンに噛みつかれても、やられはしないはず。だけど、そのうちの数体の噛みついている箇所には、外殻にヒビが入っているようにも見えるぞ」


「助けないと駄目じゃないか!」


 僕は城があった場所へと向かおうとすると、兄が引き留めてきた。



「どうして?」


「二人で行くぞ。アレはお前だけ行ってもやられる。バッグに入れ」


「分かった」


「マズイ!噛みつかれた腕に、ヒビが入った!」


 兄が言うには、複数体に左腕を噛まれていたのだが、段々とヒビが大きくなっているという。

 このままだと、食い千切られるのは目に見えている。



「しかし、どうやって助ける?」


「ジェラルディンをモールマンから離さないと駄目だね。僕に考えがある」


 僕は兄の耳元で、その考えを伝えた。








 兄はまず、適当に作り出した大きな岩を、ジェラルディン達に向かって投げた。



「何だ?新たな敵か!?」


 ジェラルディンが左腕に食いついたモールマンを引き剥がそうとしていると、その大きな岩に気付く。

 その場から動こうとするが、足が思うように動かない。



「ぬうぅ!」


 岩が地面に落ちると、倒壊した城の破片がバラバラと舞い上がる。

 土煙が再び辺りを覆い、ジェラルディンにとってはまた不利な状況となった。



「クソが!貴様等、許さ・・・何だ?」


 ジェラルディンは異変に気付いた。

 まず、左腕に居たモールマンか全て居なくなった事。

 そして、代わりに自分が何故か持ち上げられた事。



「今だ!」


「だありゃあぁぁ!!」


「何をする!?」


 ジェラルディンは、外に向かって投げつけられた。

 両腕で頭をカバーすると、そのままゴロゴロと転がっていく。

 自分を投げた相手は、今までのモールマンと違う。

 相手を見てやろうと土煙の方を見ると、空の上に何かが突き抜けた。



「アレは・・・」


 小さな何かに気付いたジェラルディンだが、ジャイアントの視力ではハッキリとは確認出来ない。



「土煙を抜けたぞ」


「爆発しろ」


 その小さい者から、炎が土煙に向かって放たれる。

 すると土煙が、爆炎に包まれた。



「なっ!何だと!?」


 モールマンに攻撃をした。

 その者は敵ではないのかと、混乱するジェラルディン。



「兄さん、まだだよ。ここから更に、凍らせるから」


 冷気の風が、一気に辺りを包んでいく。

 炎はその冷気によって鎮火された。



「さ、寒い・・・」


「おい、冷気は下に溜まるんじゃなかったのか!?寒いぞ!」


「これだけの冷気なんだ。空だって寒くなるよ」


「ぶえっくし!」


 何やら騒いでいるが、一人ではない?

 ジェラルディンはその攻撃が、自分に対してではない事を自覚した。



「ほら、着地して」


 空から降りていくその者は、無造作はモールマンへ近付いていく。

 しかしモールマンからの反撃は無い。



「な、何故だ!?」


「どうして動かないんだ?」


 自分と同じ疑問を持っているのか、誰かに対して質問している。



「コイツ等は特殊な個体は多分、何かしらの金属成分を含んでると思ったんだ。金属って熱してから急速に冷やすと、ヒビ割れとかするって知ってる?」


「知らない」


 私も知らない。

 誰だか知らないが、凄い知識を持っているな。



「だからね、身体を覆っている岩が実は岩ではなく、金属だったら?急速に冷えると、脆くなると思うんだよね。だから兄さん、ここからは全力でやっちゃって下さい!」


「なるほど?よく分からんが、ぶった斬れば良いんだな?了解だ!」


 目の前のモールマンに対して無造作に近付くと、モールマンからの抵抗も無く簡単に袈裟斬りにした。

 自分が苦戦した相手に、全く歯牙にも掛けないで斬ったのを見て、ジェラルディンは目を丸くする。



「はい次」


「ほいほい」


 モールマンに小走りで近付いていっては、続々と斬っていく。

 彼女はそれを見て、笑いが込み上げてきた。



「アッハッハッハ!完敗だ。こんな奴が居るとはね」


 モールマンを全部斬り倒すと、その者はこっちに近付いてくるのが見えた。

 そして自分も手に掛けられるのだと覚悟を決めていると、その姿に見覚えがある事に気付く。



「お、お前は、確か地上の魔王!?」







「ぶん投げちゃってごめんね〜。ジェラルディンをモールマンから引き離すには、視界を奪ってから腕に噛みついたモールマンに不意打ちするのがベストだと思ったんだよね。って弟が言ってた。だから投げられた事に対する文句は、弟によろしく!」

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