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スマジ散る

 そういえば、気になった事がある。

 モールマンの手についてだ。


 モールマンは食べた相手の力を、取り込む事が出来る。

 それが絶対というわけじゃないのは知っている。

 ジャイアントを食べたら筋力が大幅に上がったり、ワイバーンを食べれば翼が生えたりする。

 じゃあ腕の先が爪ではなく手になった奴等って、何をどう考えて手に変えたんだろうか?

 ヒト族を食べて太刀を持てるようにする為?

 でもそれって、爪の方が強い気がする。

 正直なところ、僕はその意味があまり分からなかった。

 でも今回の地下水脈で、モールマンが漕ぎ手になったと聞いて、なるほどと思ってしまったんだよね。


 ぶっちゃけモールマンって、ある意味自分が希望する方向へと進化出来るよね。

 それってさ、色々な場面で役に立つ気がする。

 例えば畑を耕す時、自分の足を効率的に進化させられそうだし。

 力が強ければ、トラクター要らずだ。

 元に戻る事は難しそうだけど、これで生きていくと決めれば、食べる事には困らなそうな気がする。

 なんとなくだけど、僕の中でモールマンの見る目が変わった話だった。








 一益の嘆きに反応したモールマン。

 奴は太田と柴田という名前を聞いて、とても大きな反応を示した。



「何が気になるのだ?」


「私は力を持って進化した。ならばこの力、どのくらい強いのか知りたいのです。そして私は、一番の力持ちだという事を証明したい」


 人のような疑問を持ったモールマンに、一益は目を丸くする。

 会話をしていたものの、まさか自分達と同じような夢を持っているとは思わなかったからだ。

 それを聞いた一益は、おもいきって話を切り出した。



「・・・提案がある」


「提案?」


「お前のその話、叶えられんでもない」


「何ですって!?」


 思わず声が大きくなるモールマン。

 その辺りも人と同じだと、一益は苦笑する。



「フフ。だがここでどちらが死んでも、その夢は果たされないな。太田殿と柴田殿の仲介役に立てるワシが死ねば、お前はいつ会えるかも分からない人物を探す事になる。しかもモールマンの王の命令次第で、探す事すら出来ないかもな」


「ムゥ、一理ありますね」


「そして言わずもがな、お前が死ねばその夢は完全に潰える」


 モールマンは興味があるのか、吹き飛ばしたはずの一益の話を興味津々で聞いている。

 周りでは戦闘が継続しているのに、この二人だけは別の場所に居るようだった。



「・・・提案とは?」


「どうだろう?こちら側に来ないか?」


「何を言っているのです?」


「お前、いや貴殿の話を聞く限り、貴殿には理性がある。ワシが知っているモールマンは、食べる為にワシ等を襲っていた。だが貴殿は、食べる事よりも太田殿と柴田殿に会いたいという話をしている」


「・・・そうですね」


「そこでだ!理性で食欲を抑えられるなら、自分の夢に生きるのも良いのではないか?」


「・・・」


 一益の話を聞いたモールマンは、急に黙りこくってしまった。

 一益は急に攻撃をされないかとその様子を窺うが、彼にそのような反応は無い。



 モールマンは自分で自分の言った事に、驚いていた。

 元々は数が急激に増え、食べ物を求めてジャイアントと争っていた。

 それなのに自分は、力がある者と会ってみたいという話をしたのだ。

 昔の自分なら、有無を言わずに食べる事を優先していたのに。

 そんな自分の変化に、戸惑いを感じていた。



「何か迷っているのか?」


「え?まあ・・・そうですね」


 断られると思っていた。

 迷っているという予想外の反応に、一益は驚きつつ彼の話を聞く。



「仲間を裏切れないか?それとも王が怖いか?」


「仲間、という概念はあまり無いですね。数が増え過ぎて、共食いをするような間柄ですし。王は・・・確かに怖いな」


「ならば、その王を倒すと言ったら?」


「申し訳ないが、貴方の力では無理だ」


 少しムッとする一益。

 実はまだタコガマ戦で使ったような力を隠しているが、あの力を地底で使えば、崩落する可能性は高い。

 彼はそれを考慮して、力をセーブして戦っていた。



「ワシが倒せるかどうか置いといて。ハッキリ言おう、ワシより強い連中はゴロゴロ居るぞ」


「しかし」


「魔王様は特に凄い。もうその強さは異次元だ」


 魔王は強い。

 確かに強いが、異次元というほどではない。

 一益は頭の中で少しそんな事を考えつつ、口も八丁に答える。



「・・・本当に会えますか?」


「会える!ワシは上野国領主、滝川一益だ。嘘は言わん」


「ならば手伝う事はしませんが、私はここで手を引きます。貴方の話に賭けてみたいと思います」


「よし!ワシに任せろ。ワシは絶対に嘘は言わんからな」


 ほんの少し前の魔王の話など、すっかり頭に無い一益。

 彼は手強い敵を、倒す事無く無力化する事に成功したのだった。








「ぐぬぬ!避ける事だけは一流だな」


「そうでもないですよ」


 スマジの言葉に、オケツは軽口で答える。

 しかし実際はそこまで簡単な事ではなく、少しでも気を抜くと腕ごと太刀をへし折られそうな豪剣だった。


 そしてスマジの方も、オケツの強さには驚嘆していた。

 ホノヒサの話は話半分だったとしても、もっと弱いと思っていた。

 それが実際には、自分の剣を受け流している。

 太刀ごと身体をぶった斬る豪剣が、柳を相手にしているかのような感覚であった。



「騎士王、まだ終わらんのか?」


「へ?」


 不意に一益から話し掛けられ、横を見るオケツ。

 それを見逃さないスマジは、足に力を込め、オケツを斬れる間合いへと入った。



「チェエェェストォォォ!!!」


「あっ!」


 オケツが斬られる。

 一益は自分のせいでオケツが殺されると、思わず声を上げた。

 斬られると思った刹那、一益はオケツが何かを呟いたのを見る。



「放電」


 その瞬間、スマジも一益もオケツを見失った。



「ど、何処に消えた!?」


 スマジが周りを見回し、一益周辺に居ないのなら飛んだのかと上を見る。

 しかし何処にも姿は見当たらない。



「何処だ!何処に消えた!逃げたのか!?」


「人聞きの悪い。時間もあまり無いのでね。すいませんが、終わりです」


 背後から聞こえたオケツの声。

 スマジは振り返りざま、太刀を振り切る。

 その太刀が空を切ると、スマジは顔を上げて再び周りを見回した。



「あ・・・」


 一益は見ていた。

 顔を上げて周りを見ているスマジの懐には、超前傾姿勢で今にも太刀を抜こうとしていたオケツの姿を。

 スマジも遅れて目の前に居る事に気付くが、時すでに遅し。



「雷光一閃」


 振り抜いた太刀が、スマジの身体を半分にする。



「ぬがあぁぁぁ!!」


 斬られた後に遅れてやってくる電気。

 脳へ直接痛みを与え、スマジは誰もが身を竦ませるような叫び声を上げた。



「み、見事」


「ありがとうございます」


 太刀を鞘へ納めるオケツに、一益は心の底から本音で称賛する。

 情けないと思っていた男が、ここまで凄かったとは。

 騎士王という昼行灯に、騙されてはいけないと心に刻んだ。



「ぬ、ぬかったわ。こ、こんなに強いとは思わなかった」


「ハァ、仮にも騎士王と呼ばれてますので。そこまで弱いと思われていたのなら、少し心外です」


「その態度に騙されたわ。・・・スマジは滅亡か?」


「それが貴方のした選択です」


 オケツの言葉が頭に響く。

 スマジはバケモノの言葉を鵜呑みにして、取り返しのつかない事をしてしまったと、死ぬ間際になって後悔するのだった。



「何か言い残す言葉は?」


 オケツはハッシマーの時と違い、憎い相手というわけではない。

 スマジに対しては、最低限の礼儀と慈悲の心があった。



「・・・ヌシ等に教えておく。モールマンの王とは、スマジ・ホノヒサの事だ」


「・・・は?」


 突拍子も無い言葉が、オケツを間の抜けた顔にさせる。

 スマジはお構いなしに、言葉を続けた。



「ホノヒサを食べたモールマンの中で、奴の意識は残っている。こ、今回の件も、奴が企んだ事だ」


「どうしてそれを私達に?」


「い、今更遅いが、悟ったわ。奴はもう、スマジの事など見限っている。奴の心は、もうバケモノと変わらん」


 血を吐きながら喋り続けるスマジだったが、いよいよ限界が来たようだ。

 それを見ていたオケツは、再びスマジの前へと立った。



「素晴らしい話をありがとうございました。安らかにお眠り下さい」


「フッ!ボブハガーとは全く違うタイプの騎士王よの。だが、助かる・・・」


 オケツは苦しむスマジの首を、雷が落ちるが如き速さで落とした。

 その首を丁寧に彼の身体に乗せると、大きな声で叫ぶ。



「スマジ領主、スマジ・ノシピコ!騎士王オケツ・キチミテが討ち取ったり!」







「強いですね」


「いやまったく」


 モールマンから話し掛けられた一益は、思わず言葉を返してしまう。



「貴方が相手で良かったようです」


「それは暗に、ワシが奴より弱いと言っているのか?」


「彼が先程のような提案をしてくれたかとは、思えませんので。決して弱いとは思っていませんよ」


「ま、素直にそう受け取っておこう」



 弱肉強食の魔族の中で、オケツとの戦いをスマジと自分を置き換えてみた。

 この地底の中で、彼に勝つビジョンが浮かばない。

 外であればやりようもあるかと思ったが、それでも少し分が悪いかなと、彼は判断した。



「騎士王!なかなかやりますな!」


「イッタ!滝川殿、強く叩き過ぎですよ」


 背中をバン!という音がするくらいに強く叩く一益。

 鎧越しなのに痛みを感じるとは、どれだけ強いんだとオケツは不満に思った。


 だが、それよりも不満なのはスマジの騎士達が未だに抵抗を続けているという点だ。



「勝敗は決したのに、何故彼等は戦いをやめないのでしょう?」


「聞いてみたらどうだ?」


 一益の言葉に、オケツは少し考えてから叫んだ。



「スマジは死んだ!抵抗をやめて、投降するが良い!」


 地底に響くオケツの声。

 だが彼等からの返答は、想定外の事だった。



「スマジ騎士に後退の文字は無い!」


「たった一人になろうが、スマジの騎士は戦い続ける!」


 主人の意志は継ぐと言わんばかりに、彼等はオケツの言葉を受け入れない。

 むしろスマジが死んだ事によって、その強さが増したようにも感じられた。



「スマジ騎士か。惜しい人材だな」


「えぇ、本当に。彼等が味方だったならと、心底思いますよ」


 スマジの意地を最期まで見せる。

 彼等は本当に、一人になっても抵抗を続けていた。




「モールマンはどうなんだ?」


「駄目ですね。もう最後の一体が斬られるところです」


 淡々と話すモールマン。

 自分の同種がやられているというのに、その言葉には何の感情も無い。



「良かったのか?」


「えぇ、彼等は命令通りにしか動けないですから」


 しかしモールマンは、自分の言葉に疑問を持った。

 何故自分は、命令を無視して動けるのだろうかと。

 そして彼は、ある結論に達した。



「滝川殿」


「どうした?」


「地上や空で戦っている方々と、連絡は取れるんでしょうか?」


 急な質問に少し戸惑う一益。

 彼には魔王から渡された携帯があるが、それをおいそれと見せるわけにはいかなかった。



「どうしてだ?」


「推測の域は出ませんが、もしかしたら私のようなモールマンも、中には居るのではと思ったのです」


「貴殿のようなモールマン?」


「自由意思を持つモールマンの事です。私のように王の命令ではなく、自分の意思で動くモールマンが、他にも居るんじゃないかと思ったのですよ」


 一益はその話を聞いて、少し考えた。

 これは自分が一人で判断して良い話ではないと思った彼は、ある行動に出る。



「ちょっとお待ちを」


 一人離れた場所へ移動する一益。

 すると懐から、携帯電話を徐に取り出した。







「あ、もしもし。ワシです。え?ワシじゃ分からない?上野国領主の滝川一益です。ちょっとモールマンの事で、魔王様に相談したい事がありまして。あ、ハイ。では連絡待ってます」

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