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スマジの野望

 前もって計画を練るか、それとも行き当たりバッタリか。

 これは人によって、考え方が変わると思う。


 例えば買い物に行くとしよう。

 前日に何処で何を買うか決めてから、行く順番や時間を計算していく。

 何時に家を出てこの電車に乗り、店まで歩いて到着するまでの時間など、そういう事まで細かく決めていく人も居るだろう。

 そういう人は欲しい物を最初から調べておいて、迷う事無く買うんだろうね。

 それに対して行き当たりバッタリの人は、なんとなく欲しくなったから買う人だと思う。

 どんな物か気になるから店に行って、見て気に入ったら買うんじゃないかな。

 知り合いにもそういう人居たけど、夜に話してたら気になったと言って、車に乗り込んで閉店間際の店に行ったらしい。


 前者であれば計画的に物事を運ぶのが上手い人だと思うし、後者は行動力に長けていて突発的な出来事にも柔軟に対応出来そうな気もする。

 人を率いる立場にある者は、どっちの方が正しいんだろう?

 前者の方が団体行動には優れていそうだけど、人数が多いからこそ何か起こった時の対応が難しそうでもある。

 後者は逆に、トラブルがあってもすぐに解決出来そうな気がするけど、付いてこれる人が限られそうで団体行動には向かない気もする。

 どっちが正しいとか僕には分からないけど、どっちにも長所短所があるし、僕はどっちにも付いていきたくないなと思っている。

 そんな僕も本来は、人を率いるのに向いている人間じゃあ無いんだよね。







 ホノヒサの中でオケツは、嘲笑する人物だった。

 騎士王なのに振り回されて、帝には頭が上がらない。

 スマジの未来を託したハッシマーに、オケツなんかが到底勝てるとは思えなかった。

 しかし現実は、ハッシマーの敗北で終わった。

 何故オケツが勝てたのか、ホノヒサも知らない。

 騎士王になった今でも、オケツは騎士王らしからぬ扱いである。

 そんな人物に負けたハッシマーが、ホノヒサは不憫に思えた。

 そして威厳も何も無いオケツに、怒りすら感じていた。



「オジキ殿なら絶対に負けません」


「ハッシマー殿を倒した人物だぞ?」


「どうせ傍らで、魔王が手を貸したのでしょう」


「そうか!そんな魔王も今はオーサコに居る。オケツを、そして帝を倒すなら今なのだな!?」


「そうですとも」


 スマジの心に、自信が湧き上がってくる。

 オケツは大した事の無い人物。

 ホノヒサの言葉を信じたスマジは、船へと乗り込んだ。



「最後に確認をしておきたい」


「何です?」


「この船をジャイアントが襲う可能性は無いのか?」


 不安を取り除きたいスマジは、最後の懸念をホノヒサへとぶつける。

 するとホノヒサは、軽く笑い始めた。



「ハハハ!その心配は無いですよ。絶対にね」


「どうしてそう言い切れる?」


「簡単な事です。ジャイアントは泳げませんから。地底で暮らしている彼等に、水の中を泳ぐという考えはありません」


「なるほど。それを聞いて安心したぞ」


「御所へ入ったら、すぐに帝を狙って下さい。手こずっていると、オケツが動き始めます」


「承知した。では行ってくる!」







 ホノヒサが用意したモールマンは、二十体。

 船は五艘用意されていて、モールマンは前後に二体ずつ座り、オールで漕ぐようだった。

 それに対して騎士は、スマジを含めて四十人。

 八人ずつ船に乗り込んでいる。



「まもなく到着です」


 モールマンの一体は言葉が話せ、スマジの乗り込む船に同乗していた。

 その言葉を聞いたスマジは分かったと一言伝えると、目を閉じて瞑想を始める。



「・・・よし!敵は御所にあり!」


 目を開けたスマジは、太刀を強く握る。

 それに同調する騎士達。

 モールマンにも彼等の異様な熱気が伝わり、オールを漕ぐスピードが上がっていく。


 そんな時だった。



「うわっ!」


 何かが騎士の頭にぶつかった。

 船の上でバランスを崩した騎士は、落ちそうになったところを慌てて船にしがみつく。



「何だ!?」


「て、敵です!」


「て、敵だとぉ!?ジャイアントは泳げないんじゃなかったのか!?」


 スマジの怒りがモールマンにぶつけられる。

 だがモールマンも、背中を向けてオールを漕いでいる。

 暗闇の中でも、モールマンにはぶつけられたモノが何か、それは確認出来ていた。



「ジャイアントでは無いと思います」


「何だと?」


「ぶむけられたのは、おそらく水の塊か何かです。粘着性のある物でも無さそうですし、毒物でも無さそうです」


 臭いに敏感なモールマン達には、刺激臭やそういった類の臭いは感じなかった。

 だからぶつけられたのは、ただの水の塊だと判断したのだ。



「ジャイアントではないなら、騎士達が水の中で待ち受けていたというのか!?」


「それは分かりません。しかし、オオゥ!?」


 船が大きく揺らいだ。

 モールマンは騎士達が暴れていないのを確認すると、それはやはり人為的に起こされたものだと断定する。



「誰かが水の中から攻撃してきています!」


「だから、それが誰かと聞いとるんじゃ!」


「そんなの知らない!」


 スマジによるあまりの高圧的な態度に、モールマンがキレた。

 モールマンも知らない連中なのだ。

 答えようが無いのに不満をぶつけてくるスマジに対し、モールマンの怒りは限界に達した。



「だったらアンタが自分で調べろ!」


 隠密行動の為、光を照らさらなかったモールマンなのだが、怒りを露わにした彼は後の事など知らないと大きな光で船の上を照らした。



「な、何じゃあ!?」


「アンタ達も知らない連中を、私達が知るわけ無いだろう!これだけの明かりを照らしてしまったんだ。敵に船の数だけでなく、乗っている人数もバレたからな」


「くっ!仕方ない。知らされる前に奴等を殺す。だが船に乗ったままでは無理だ。何処かに上陸したい」


「そんな事を言われても・・・」


 彼等の目的地は、御所内である。

 それは水脈を流れ、ある地点から地上へモールマンが掘削をしていくという作戦だった。

 モールマンも上陸出来る場所など知らされているわけでもなければ、知っているはずもなかった。



「だったらアンタ等を、ワシ達が地上へ運んでやろう」


「だ、誰だ!?」


「ハッハッハ!今は名も無きジジイだ。そ〜れ!」


 水の中から顔を出した老人。

 彼が掛け声を出すと、全ての船は途端に、何処かへ放り投げられてしまった。

 すると水脈の上の方に、スマジは大きな洞窟があるのを発見する。

 船はそこへ乗り上げると、水の中から謎の老人が率いる何かが、一緒に上がってきた。



「モールマン、もうここまでされたのだ。ワシ達も戦う。光をくれ」


 スマジの要望に応えるモールマン。

 洞窟内に明かりが照らされると、そこに現れた人物もようやくスマジ達の目に入った。



 彼はアロハシャツに短パン姿で、頭には帽子が被せられていた。

 周りの男衆はふんどし姿で、頭頂部には皿のような物が乗せられている。



「か、河童か!?」








 その容姿から、河童だと推測するとスマジ。

 すると老人の方も、少しだけ驚いた顔を見せる。



「ほう!?ケルメン騎士王国だったかな?封鎖された国で、ワシ等の事を知ってる人物が居たとはのう」


「は、話くらいは聞いている。実際に見たのは初めてだがな」


 スマジの領地は騎士王国でも、最西端に近い場所にある。

 その為国外とも少しは繋がりがあり、魔族に関しての情報も入ってきていた。



「魔族が何故、こんな所に居るのだ!?」


「それはオヌシ等が、身をもって体感したじゃろうが」


 老人は暗に、足止めをする為だと言った。



「クソッ!どうして地下水脈を使うと、分かっていたんだ?」


「分かってはいないじゃろうな。ただワシ等に助力を求めてきた人物は、魔王様の頭脳そのもの。オヌシ等がちょっと頭を使ったくらいで、裏がかけるような人物じゃない。が、問題もあるがの」


 河童の人数は騎士達と同じ、四十人。

 しかし彼等は、騎士達を圧倒する程の戦力を有していない。

 それに加えて、ここは洞窟の中である。

 水の中から上がった河童達は、尚更優位を失っていた。



「モールマンよ、ここは協力して、ワシ等の存在を知らされる前に奴等を屠るぞ」


「分かっています」


 太刀を抜くスマジ達一向。

 そしてモールマンもオールを捨て、戦闘態勢に移行する。



 ホノヒサが用意したモールマンは、上半身が大きくパンプアップしていた。

 オールを漕ぐという作業に特化している為、上半身の筋肉は異常に発達していたのだ。



「死になさい」


 モールマンが爪を振り下ろすと、河童の若い男はそれを首をすくめて避けた。

 すると背後の岩壁が、大きく抉り取られる。



「ば、バケモノか!」


「ふむ、スマジ殿、彼等なら倒せますね」


 河童の反応を見たモールマンは、その戦闘力が高くない事に気付く。

 その言葉に、俄然勢いづくスマジ勢。



「斬り殺せ!」


 スマジの合図で、一斉に立ち向かう騎士達。

 しかし、そこに小鎚が飛んできて邪魔をする。



「いかんなあ、年寄りをイジメるとは」


「何者だ!?」


 洞窟の奥から出てきたのは、大きな鎚を担いだ男だった。

 空いている左手で、小鎚をクルクルと回している。



「ワシか?ワシは上野国の領主、滝川一益。見ての通りのドワーフだ」


「ドワーフ!?しかも領主クラスだと!?」


「穴ん中は陰気で好きじゃないが、これも魔王様の命令だ。しかし、本当にこんな所からやって来るとはのう」


「本当になぁ。あの官兵衛という男、何処まで読んでいるのやら」


「お菓子ばっかり食ってるように見えたんだがなぁ」


 二人でしみじみと頷く、河童の老人とドワーフのおっさん。

 そして最後に、後ろから本命の男が登場してきた。



「すいませんねぇ。私達の為に、こんな暗い所まで来ていただいて」


「そ、そのふざけた声は!オケツ!」


 明かりを持った騎士達に案内されてきたのは、このケルメン騎士王国において、騎士王と呼ばれる男だった。



「スマジ殿ですか。本当に謀叛を起こしたんですね。私はてっきり、モールマンに脅されて無理矢理だと思っていたんですけど。さっきの言葉からすると、言い訳のしようがないですね」


「ハッ!若造が、ワシに説教なんて百年早いわ」


「お前等、百年も生きられんだろうが」


「滝川殿の言う通りだ」


「うるさいな!言葉の綾だろうが」


 見た目は中年より上に見えるスマジだが、年齢的には河童の老人とドワーフのおっさんよりはかなり下である。

 そんな二人に突っ込まれて、イライラが募るスマジ。

 オケツはそれを見て、スマジにはスルースキルが無いと判断する。



「スマジ殿、ここは騎士王として、キッパリと言わせてもらいます。貴方は帝に謀叛を企てたとして、成敗させてもらいます」


「若造のくせに生意気な。お前と帝を倒して、ワシがこの国の王となってやろうぞ」


「なんだ、スマジ殿は王になりたいのか。へぇ、ふーん」


 小馬鹿にするように言うオケツ。

 彼は騎士王など面倒だし、帝も辞めたいと常々言っている事から、彼のように望む人間が理解出来なかった。



「馬鹿にしているのか?」


「そんな事ないですよ。馬鹿にした事なんか、一度も無いですよ」


「それが馬鹿にしとると言うとるんじゃ!モールマン、やるぞ!」


 スマジ騎士とモールマンは、前進を始める。

 すると河童達は後退していき、代わりにドワーフと御所に仕える騎士隊が前へと出てきた。








「彼とモールマンの王を倒せば、この戦いはようやく終わりを迎えます。皆さん、頑張りましょう!」

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