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新しいタツザマ

 僕、魔王です。

 魔王なんです。

 そんな魔王である僕は、物語なら主人公もしくは悪の親玉なわけですよ。

 そんな僕を無視して話を進めるのは、アリなんですかね?


 拗ねてないですよ。

 僕を拗ねさせたら、大したもんですよ。

 ただね、人の背中、違うな。

 ドラゴンの背中で勝手に話が盛り上がって、知らない間に話が進むのは、どうかと思うんです。

 蒼い炎?

 空を飛ぶ?

 なにそれ、どういう事?

 僕、蚊帳の外なんですけど。

 なんか背中で勝手に盛り上がっちゃってさあ。

 僕なんか背中越しに話し掛けても、誰も答えてくれやしなかったのに。


 ふざけんなっつーの!

 もしあのタイミングで、僕が元の姿に戻ったらどうなってたと思う?

 キミ等、幼児の背中を踏みつけるロクデナシだよ?

 日本だったら、幼児虐待で捕まっちゃうからね?

 だけど僕は空気が読める男。

 シリアスなシーンだから、何も言わずに話を進めてあげたさ。

 だからこそ、タツザマは空を飛べたんだよ。

 そう、だから全ては僕のおかげなのです。

 分かる?

 僕の貢献度が、物凄く高い事はお分かりいただけただろう。

 だから敢えて言わせてもらう。

 誰からも返事が来ないって、寂しいんだよおぉぉぉ!!








 これだけ言っても、返事が来ない。

 僕、本気で泣いても良いですか?



「しかし魔王様、いつになったら飛ぶでござるか?」


「何も言ってくれないし、言葉が通じなくなってるのかな?」


「しかし、リュミエール殿達は会話が出来るでござる」


「そうですよね。何でだろう?」


 なぬ?

 僕の言葉が通じてない?

 さっきから何度も話し掛けてるだろうが!



「ギャーギャー言ってるのは分かるんですけど、怒ってるんですかね」


「秀吉殿は、魔物や動物と会話が出来る魔法とか、知らないでござるか?」


「そのような魔法、あったら覚えてみたいですなぁ」


 な、なんだってえぇぇぇ!!

 僕の言葉、最初から何も通じてなかったのか!

 でも、最初は会話として成り立っていたような?



 ・・・違う!

 僕の言葉を抜いても、成り立ってたんだ!

 アレ?

 そうなると僕、ドラゴンになってからは、タダの大きな足場になっただけなんじゃ・・・。



「こうなったら、拙者達も急いで城を駆け上がった方が良さそうでござるな」


「ですね。タツザマさんの登場で、モールマン達も混乱してるみたいですし」


「魔王様に飛ぶ気配は全くありません。急ぎましょう」


 三人は僕の背中から降りると、急いで城の中に入っていった。

 ・・・僕、何の為にこの姿になったんだろう?








 軽い。

 本当に軽い。

 拙者の願いが通じたのか?

 それとも蒼虎の真の力は、これだったのか?

 真実は分からないが、今は空を駆けるのみ!



「ムノスゲ様!?」


「皆、ムノスゲ様が来られたぞ!」


 城の方から、皆の応援が聞こえる。

 避難していた者達の声もある。

 これは何よりも力になる。



「参る!」


 四方に分かれたモールマンだが、それは悪手だったな。

 最寄りのモールマンがタツザマの太刀を首筋に突かれ、そのまま落下していく。



「やった!倒しましたよ」


「残りは今の攻撃を見て逃げたようですが」


 戦友達の声も聞こえる。

 思っていたより、自分が冷静な事に気付いた。



「しかし、思っていたより遅いでござるな」


「そうですか?十分速いと思いますけど」


「タツザマ殿の速さは、あんなものではないでござる。何が違うのでござろう?」


 慶次殿の言葉は、自分で痛感しているところ。

 空を飛べるだけでも凄いのだが、モールマンの方がはるかに速い。

 最初の一匹は甘く見られていたから、逃げずに待ち構えていたが。

 警戒して距離を取られ、追えないのでは意味が無い。



「何故だろう?」


「何がです?」


「彼は何故、空を登ろうとするのでしょうか」


「登る?」


「彼は飛んでいるのでしょう?階段のように登るのではなく、空を走れば良いのではないか?」


 それだ!

 秀吉のアドバイスが、彼の中で衝撃が走る。

 階段を登るように上昇していたのを止め、彼は前傾姿勢を取り、空へと走り出した。



「は、速い!」


 自分の足ながら、思わず声に出てしまった。

 油断していたモールマンの一体の首を、綺麗に刎ねる。

 足場が無いはずなのに、地面に居るのと同じ感覚で力が入る。

 これなら!



「凄い。もう自分の力を把握してます」


「流石はタツザマ殿でござるな」


「やれば出来るんじゃないですか」


 少し辛辣な言葉も聞こえたような気もするが、それも信頼されての事と受け取っておこう。



 残った二体は拙者の力を認めたのか、城から拙者へと完全に目標を切り替えた。

 これで住民への被害は無くなったな。

 奴等は左右に分かれ、炎で牽制しつつ攻撃の隙を窺っているようだ。

 だが今の拙者なら、それを避ける事も造作ではない。



「ツエェェイ!!」


 抜刀術はあまり得意ではないのだが、胴を斬るのにオケツ殿を参考とさせてもらった。

 あの方も騎士王らしからぬ所が多々あるが、強さだけは本物だ。

 まさか胴から半分に斬られると思わなかったのか、最後の一体は逃亡を謀っていたようだ。

 しかし、今の拙者の速さなら問題無い。


 と思ったのだが、やはり地上とは違うな。

 左右に逃げるだけなら容易いのだが、上昇下降を繰り返しながら逃げ回るモールマンに、どうしても追いつく事が出来ない。



「仕方ないですね。貸しですよ」


 突然、地面から炎の柱が立った。

 誰かの援護が入ったらしい。

 それを避けるのに、上昇しか手立てが無くなったモールマン。

 となれば、拙者はその行く手を先回りするだけ。



「ハア!」


 拙者に飛び込んでくるモールマンを袈裟斬りにすると、城からの歓声が大きくなった。



「やったな!」


「ハイ!拙者も空を飛ぶ事が・・・え?誰?」








 ぐぬぬぬ!

 駄目だ。

 もう無理。

 どうやっても、背中の翼を動かせない。

 こんなん、どうやって動かすのよ。



【あのさ、ちょっと良い?】


 何よ。



【背中にあるんだから、背中の肩甲骨辺りを動かす感じじゃないか?】


 肩甲骨?

 どうやって動かすのよ。

 肩を回すイメージとかかな?



【違うよ。こう、力を込めてグイッと】


 そんな説明で分かるか!

 そもそも人間に、翼なんか無いんだよ。

 どうすれば良いか、分かるわけないじゃん。



【そりゃまあ、そうだけど。だったらよ、背中じゃなくて腕を動かせば良くない?】


 腕?

 さっきから何度もやってるけど。



【違うよ。ドラゴンは背中に翼がある。でもワイバーンなら、腕を動かすだけで飛べそうじゃないか?】


 おぉ!

 その通りだ!

 それなら間違いなく、僕でも出来る。

 となると、背中の連中邪魔!



「おっと!」


「アレ?小さくなっていくよ」


 無言でワイバーンへと変身していくと、背中の三人は姿形が変わる事に気付き、飛び降りている。


 目線の高さが大きく変わり、首を回して両腕を確認。

 うん、これなら飛べそうだ。

 僕は両腕を、バサバサと羽ばたかせた。



「飛べた!飛べたぞ!フハハハ!」


 段々と地上が遠くなっていく。

 ハクト達が僕を見上げて、ちょっと驚いた顔をしているが、散々無視してくれた連中だ。

 どうせ僕の声なんか分からないだろうし、ここぞとばかりに言ってやる。



「バーカ!バーカ!トカゲだ何だと、色々言いたい放題言いやがって。特に秀吉、お前なんか絶対乗せてやらんからな!このチビネズミが!魔法がちょっと使えるからって、調子に乗るんじゃないぞ!」


「マオくん、何言ってるの?」


「喧嘩を売ってるでござるか?」


 あ、あれぇ?

 何で通じてるの?

 ドラゴンだと通じないのに、ワイバーンは通じるの?

 意味が分からない。



「あのワイバーン、落としましょうか」


「ちょっと待って下さい!アレ、敵じゃないですよ」


「いや、敵でしょう。どう見ても」


「根に持ってるでござるな」


 いかん!

 あの静かな口調は怒っている証拠。

 さて、空へと逃げ・・・タツザマの援護をするとしようかな。

 丁度良く、タツザマも最後の一体を追うのに苦戦してるみたいだし。



「仕方ないですね。貸しですよ」


「ぬおおぉぉぉ!!?」


 僕の真下から、炎の柱が立ち上がった!

 今の避けてなかったら、僕は直撃だったぞ。

 アイツ、狙ったな!?



「木下殿、援護感謝する!」


 ん?

 僕を狙ったんじゃなく、タツザマの援護だった?

 いやいや、だったらそのライン上に居る僕へ、まずは声を掛けるべきではないか?

 しかし、モールマンを牽制する援護を果たしたのは否めない。

 奴は貸しだと言っていた。

 それは僕に対してなのか、それともタツザマに対してなのか。

 どちらなのか分からないが、本人にそれを聞くのは負けた気がして嫌だ。


 ま、別に良いか。

 今はタツザマを労う事が先だろう。



「やったな!」


「え?誰?」








 タツザマ領の危機は去った。

 あの水攻めの効果は大きかったのか、穴から新たなモールマンが出てくる様子は無い。

 念の為僕達も一日様子を見たが、やはり何も起きなかった。



「皆、助かった。皆が居なければ、拙者達は全滅をしていたかもしれない。被害が無いとは言わないが、大方の民は助けられたと思う」


「街の被害は大きいけどね。でも復興は、任せても出来そうだし。皆で協力して頑張って」


「魔王様達も」


 後から確認をしてみると、住民のほとんどが避難出来ていたという。

 男手が足りないとかそういった事態に困る事は無いようなので、時間さえあれば復興は出来そうだ。



「この後は、このまま御所へ?」


「まずはタツザマの主、ヌオチョモという者を訪ねてみようと思ってるけど」


「ヌオチョモ様か。会えるかな?」


「簡単には会えないの?」


「性格が合わない可能性もあるかと」


「性格?」


 乱暴とか陰湿とか、そんな感じかな。

 乱暴ならタツザマよりは弱そうだし、逆に文句言えなさそう。

 そうなると陰湿?



「どんな人なの?」


「一言で言えば、騎士というよりも商売人ですな」


「商売人!?」


 なかなか思いがけない言葉が出てきた。

 そうなると、ヌオチョモ陰湿説も無くなる。

 商売人が陰湿だと、客なんか来ないからね。



「変わった人なんだな」


「そうですね。騎士としては変わってます。しかし、領主としては優秀ですよ」


 商売人というなら、他の騎士よりも領地経営を推進してそうだし。

 攻め込まれないなら、領主として優秀と言っても良いんだろう。



「馬で駆ければ、一日で着きます」


「それはタツザマの騎馬隊?それとも一般的な馬?」


「あ〜、そうなると二日か三日は、見ておいた方が良いですね」


 それでも、そこまで遠くは無いかな。

 トライクなら一日で着くって事だろう。



「スマジの領内で保護した人達は、拙者が責任を持って預かります。復興にはどれだけ人の手があっても、足りませんから」


「そうだね。スマジの人間だからと、無理な仕事をさせないようにね」


「同じモールマンの被害者ですから。そこは心得てます」


 だったら問題無い。

 僕達は御所へ急ぐ身だし、そろそろ出発しよう。



「待って!私達は?」


 呼び止められる声に振り向くと、マルとタマが来ていた。

 走ってきたのか、息切れをしている。



「安全になったタツザマ領に居た方が、良いんじゃない?」


「やだ!もう帰る場所も無いし、一緒に行く!」


「御所は危険かもしれないぞ?」


「皆と一緒の方が安全だと思う」


 う、それは一理ある。

 タマめ、なかなか上手い事を言う。



「マオくん、良いんじゃない?」


「トラックもあるでござる。トライクよりは遅いが、皆で行けなくはないでござるよ」


 うーむ、ハクトと慶次は賛成か。

 太田と秀吉の顔を見ると、どっちでも良いって感じだし。







「だったらトラックで行くか。ヌオチョモが商売人なら、領地も発展してそうだし。気に入ったなら、ヌオチョモ領で降りれば良いんだ」

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