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死の森。剣を装備する。

都代視点でお送りいたします。

 藤田海翔さんは、ロングソードを担いでいました。

 シャツは日本のものっぽかったけど、デニムのやつ。ところどころ汚れている。下はジーンズ。でも、その上からスチールの板を加工した防具を付けていた。スチール板の防具は両腕、両膝、肩と胴。動きを妨げないように工夫されている。

 びっくりしたのは、その防具が使いこまれているように見えたことだ。

「あの、カイトさんですよね?」

「ああ、藤田海翔です。レナータから話は聞いている。パーティーメンバーとして前衛の剣士を務めることになる。これからよろしく。都代だったね?僕は年上だけど、今日からカイトと呼んでくれていいよ。戦闘中にさん付けは命に係わるからな」

「あ、うん、はい」

 え?あれ?

「あの、カイトさ・・・カイトは普通の高校生だったと思うんですけど・・・」

「ああ、その件は私から説明しよう」

 レナータが遮って話を始める。レナータはこの2週間のうち、最初の1週間をナタリーの世界で武器の調達に時間を使った。そして、後半の1週間でカイトを剣士として鍛えた。「1週間じゃたいしたことは出来ないでしょ?」

「いえ、問題ないですわ。日本と時間軸がずれてしまった世界へ行っていましたから」

「ふえ?どういうこと?」

「向こうでの10日間は日本で1日くらいしか経過しないんです」

「え?やっぱあるんだ、時間軸の違う世界・・・」

「ええ。そこで私が剣の扱い方を教え、出てくる魔物を相手に戦ってもらいました」

 うわ、さらっとやばいこと言ったよ。剣士でしょ?普通に接近戦でしょ?危険過ぎ。

「レナータ、その世界で実戦訓練をしていたってことだね?もしも可能なら、私達もそこで連携練習をしたほうがいいのでは?」

 ナタリーが提案をした。レナータが首を振る。

「残念ながら、それは出来ないのです。なぜなら、その世界に魔法はありません。純粋に剣の世界ですから。だからこそ、日本の組織からも放っておかれていました。今回は、それをうまく活用できたのですけど」

「つまり、魔法は使えない世界だと?」

「ええ。私も試してみたのですけど、魔法は一切発動しませんでした。剣で戦うしかない世界です。カイトはその世界で70日間、生き延びましたわ。頼りにしてくれていいくらいには強くなっていますわ」

「へえ・・・」

 たしかに、2週間前に見た時よりもたくましくなっている。筋肉もついたように見えるし、何より表情が引き締まっている。

「あ、そうだ。レナータ、頼まれていた剣、持ってきたよ」

「ありがとう、ナタリー」

 そういって何もない空間からナタリーが剣を抜き出した。


 長!


「長い上にデカいね」

「グレートソードです。全長2メートルあります。重さは4キロくらい。レナータ、本当にこれを使うんですか?」

「私じゃないわ。カイトが使うの。70日間でカイトはレベル70に到達したから。最大級に重い剣でも振れるはず。リーチは長い方が有利だし」

「レベル?70?」

「ええ、剣しかない世界だけど、レベル制だったの。レベルが上がると極端に打撃力、防御力が上がる世界なの。私も、いちおう頑張ってみたけど、もともとの体が貧弱過ぎて30までしかレベルは上がらなかったわ。私は最初に作ってもらった、このスキアヴォーナのままでいいわ」

 その重たそうな剣はカイトに手渡された。両手でプルプルしながら持ち上げていたナタリーから、カイトは片手でひょいっと受け取ると鞘から抜き出した。

 ブレードは幅広い。まさにファンタジーの大剣といった感じだ。両刃の頑丈そうな剣だ。両手で扱うことを前提にしているため、柄の部分も長くて50センチくらいある。

 カイトは剣を確かめると背中に背負う感じで装備した。

「都代にはこのショートソードを渡しておきますね。ショートソードというか、長めのダガーという感じですけど。最終手段の防衛用です」

「うわ・・・すご・・・」

「私もお揃いの短剣ですよ」

 ナタリーも刃渡り40センチくらいの剣を腰に装備した。真似て私も装備する。思ったよりも重い。腰にずっしりくる。ナタリーの剣の鞘や柄は薄黄色の糸で飾りが入っていた。私のは黒っぽい糸で刺繍みたいな飾りが入っていた。

「それと防具です。軽さ重視で革を使っています。これはブラックムーンベアの革で作ったグローブとスカートです。スカートといってもお腹から膝あたりまでをカバーする防具ですけどね」

 うん、スカートというより前掛けだね。エプロン状の形。胸の下から膝上くらいまで。それから肩当ては金属製。薄い鉄板を加工したもの。

「もしもダメージを受けた場合は、私がヒールを使います。レナータや都代は攻撃力に優れていますけど、私の魔法は聖属性特化ですから、レイス系にしか効果がありません。通常戦闘中は支援に回ります」

「うん、わかった。マウリツィオ師匠、最初はサポートお願いします」

「もちろんですよ、都代ちゃん」


 役割は決まった。

 前衛、カイト。剣士。グレートソードによる攻撃で魔物を倒す。出来なければ足止めに徹することで魔法攻撃の余裕を作る。

 前衛、兼、魔法攻撃、レナータ。カイトが足止めした魔物を魔法攻撃で殲滅する。

 後衛、回復担当、ナタリー。

 後衛、魔法攻撃、私、都代。マウリツィオ師匠と一緒に行動し、師匠は後ろからの攻撃に警戒する。それと緊急事態の時は、師匠が私の体をコントロールして魔法攻撃で魔物を殲滅する。


 装備を点検し、フォーメーションの確認をした。

 緊張してきた。

 これから異世界の魔物の森へ転移するんだ。

 転移の部屋を一歩出たら、そこは死の森なのだ。


「では、これからカンパニア王国の北に広がる死の森へ転移する。冷静に対処すれば、決して遅れを取ることは無い。最初の村まで15キロだ。そこまでが最大の難所だ。みんな頑張って欲しい」

「うん、私は頑張るよ」

「ええ、私も頑張ります」

「オレも頑張って梨音を助け出す!」

「このマウリツィオ、最大のサポートをしていく。周辺の警戒は任せてください」


 出発の準備はすべて整った。

 レナータを先頭に山の中へ。15分ほど歩いた気がする。


 そして、その異世界通路はそこにあった。


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