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梨音と魔法と設定と

藤田海翔視点です。

 離れた所から梨音を眺めていた。

 今日の服装は白のシャツに水色のスカート。スカートの丈は長めだ。全体的な色合いは子供っぽいかわいいものだけれど、フリルのせいなのかな、どことなく上品に見えた。

 広報館の展示物を見る梨音は真剣な眼差しをしている。

 何かを確認するかのように原子力発電所の施設模型を指さし確認した。


 梨音はこんなにも何かに集中出来る性格だったかな?


 この2週間くらいで、何度か会う機会があったけれど、その前の1年くらいは時々しか会っていない。会っても一言二言話すくらい。

 たぶん梨音も1年でいろいろ変化があったんだ、と思う。


 以前は・・・1年以上前の頃は、梨音と会えば学校でいじめられていることとか、父親と打ち解けられないこととか、母親が勉強しろとばかり言うこととか・・・そんな相談を聞かされた。

 僕に頼ってこないのは少し寂しいけれど・・・。

 

 それよりも気になるのは言葉遣いだ。

 以前の梨音は、言葉足らずで舌足らずなしゃべり方をする女の子だった。


 それが・・・。なんだろうか?おかしなくらい丁寧な話し方になった。


 以前から梨音は「キャラ」を作ることがあった。

 自分の中で、自分の設定を作り、その役柄を演じ続けるという「設定ごっこ」だ。


 学校ではあまりやらなかったようだけれど、僕と二人の時は、時々やっていたこと。

 どういう設定だったかというと、大抵は魔術師や冒険者だった。


 だから、今回のこれも、きっと設定ごっこなんだろうな。

 しゃべり方からすると、上流貴族的な何か?それとも、大魔法士とかで身分が高い系?


 こういう時の梨音は、キャラについて根掘り葉掘り聞かれるのを嫌う。

 聞かれるとしても、キャラ設定を尊重して「あなた様のお名前をお聞かせください」的な言い方をしないと怒られる。

 一度、聞いておくか。

 設定ごっこに乗ってやらないと、梨音は機嫌悪くなるからな。


 そう思っていたら、展示物を見終わったようでこちらに近づいてきた。

「大変わかりやすい解説でした。連れてきてくれてありがとう、カイ兄様」

「真剣に見ていたね、梨音。楽しんでもらえて何より。そこの自販機コーナーで休憩しようか?」

「はい」


 自販機で梨音の飲み物を買ってあげた。

 一度は梨音も遠慮したけれど、バイトでお金はあるから、と好きな飲み物を聞き出した。

 梨音ってコーラ好きだったっけ?

 それから、並んでベンチに腰を掛けた。


「ところで梨音。どうやら最近の君は、何か変わってしまったようだね?」

 はっとした顔で梨音が僕を見た。

 どうやら設定ごっこの第一段階はクリアしたようだ。

「カイ兄様・・・どうしてわかってしまったのでしょう・・・?」

「僕も梨音とは長い付き合いだからね。そう、今の梨音は以前と違う。特にその話し方。そして風属性の魔法。梨音、何か隠していることがあるのではないかい?」

 ここへ来る途中の件も、きっと設定だからだろう。必死でペダルを漕いでいるのに「魔法です」とか言って平気そうな振りをしていた。

梨音は本気なのだ。

この設定は、きっと何か意味があるのだ。

「カイ兄様・・・ご存知でしたか・・・それならば致し方ありません。ですが、ここは人目もありますので、少し場所を移しましょう。本当のことをお話いたします」


 やっぱり新しい設定ごっこだったようだ。

 もったいぶって場所まで変えようと言っている。これは機嫌がいい。

 

 さあ、梨音の設定とやらを聞こうじゃないか。

 この幼馴染で、痛い性格の、美少女の妄想を。

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