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魔法で部屋を破壊するのは止めておきます

(今回は梨音視点です)

 都代ちゃんとマウリツィオに全力で止められた。

 ちょっと懲らしめようと思っただけなのに。


 けれど、それで少し冷静になりました。


「やっぱり部屋の外から不意打ちで何かするのはよくないわね。全滅させるならともかく物を壊したりする程度では、ただの嫌がらせでしかありませんもの」

「そうだよ、梨音ちゃん。それに襲われそうになった仕返しは充分したでしょ?これ以上はやり過ぎだよ」

「ですが、この先もこういう方たちは悪さをします。抹殺してしまったほうが良くはありませんか?」

「いやいや、駄目だよ。この程度のことで抹殺とかしてたら殺人兵器みたいに殺し続けなきゃいけなくなるよ。というか、あそこにいた全員が本当に悪い人たちかどうかもわからないじゃない」

 ま、まあ確かに。都代ちゃん、ちゃんと考えているんだね。

「梨音ちゃん、約束して。これからは、むやみに魔法で解決しようとしないでね。かかる火の粉を払うのはいいけど、倍返しで相手に火の粉をシャベルで投げつけるみたいなことはしないように」

 う、うん。

「返事は?」

「は、はい・・・」

 都代ちゃんがほっとしたような顔をしています。冷静になってみると、確かに私は理不尽な行動をしようとしていました。反省します。

「わかればよろしい」

 そこで都代ちゃんが話を変えてきました。

「それよりもさ、ちょっとお願いがあるんだけど」

「なんですか?」

 先ほどから歩きながら話しています。現場のマンションから大通りの方へ歩いています。家への帰り道ですね。

「しばらくマウリツィオ師匠を借りてもいいかな。魔法を教えて欲しいのだけど」

「ああ、そんなことですか。構いません」

「ありがとう!最初の火魔法、だいぶ安定するようなったんだよ。師匠は教え上手だねえ」

 そう言うと都代ちゃんはマウリツィオを抱き上げました。マウリツィオの顔がにやついているように見えます。猫なのでわかりにくいですが・・・

「都代ちゃん、じゃあマウリツィオをよろしくね。しばらく預けとく。マウリツィオもいい子で、ね?」

「レナータ様。このマウリツィオ、都代様に手取り足取り教えて差し上げる所存・・・」


 都代と途中で別れて家へ帰ります。

 マウリツィオはもちろん都代についていきました。

 なんとなく少し不安だったけど・・・。

 まあ、大丈夫でしょう。猫だし。

 

「ただいま」

 玄関を開けて、そう言ってみます。梨音の習慣だったようなので、私もそうしています。

 けれど、大抵、誰もいないんですけどね。

「おかえり、梨音」

 おや?何方かいらっしゃいましたか。男性の声がしましたよ。

 靴を脱いで見上げると、そこに男性が一人、立っていました。部屋着に着替えた中年の男性。とはいえ、髪は黒々としていますし、腹も出てはいません。

 はて、この方は誰でしょう。

 梨音の記憶を探ってみましょう。


「あ、お父様・・・」

「おとう・・・さま?」

 聞き返されてしまいましたが、この方は倉本雅臣様。梨音の父親です。丁寧に接しておきましょう。

「本日はお早いお帰りですね?」

「う、うむ・・・。梨音・・・だよな?」

「はい梨音ですわ。娘の顔をお忘れですか?」

 そこでにっこりと微笑んでみる。ついでにカーテシーで挨拶しておく。片手でスカートを軽くつまんで簡単に、よ。家族間の軽い感じで。

「いや、しばらく会えずにいたからね。急に大人っぽくなった、ような気がしてね」

「そうですか?私は以前からこうでしたわ」

 もう、元の梨音らしい感じでいくのは諦めていますの。どうやら、いろいろな設定で奇抜な行動をされることも多かったようですから、これはこれで「設定」という感じで受け取ってもらえるのではないか、と思っていますわ。


 でもなんでしょうか。この方、私のことをじっと見つめていますわ。まるで赤の他人を見るような不信感のある目で・・・

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