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日曜日、午前

 きっちり落とし前をつける、と思ったものの、わざわざ探しに行くのも手間だ。

 どうせ明日には学校に来るのだろう。その時に問い詰めればよい。


 差し当たっては、まだ午前中の日曜日。

 有効に時間を使いましょう。


 マウリツィオは都代に会いに行くと言っていた。

 なんだかんだ言ってもマウリツィオは弟子に甘いな、と梨音は考える。

 レナータがソーラの町で出会ったシーザリオもマウリツィオの弟子だった。マウリツィオ亡き後も師と仰がれるだけのことは弟子にしてきたのだろう。ダンジョンを使って安全に稼ぐ方法を弟子たちに遺したわけだし。


 あ、シーザリオの師であるマウリツィオは、こっちの世界の人格だったか・・・。


 こっちのマウリツィオは、単純に少女が好きなだけかもしれない・・・。


 裏道を歩きながら梨音は今日一日、何をして過ごすかを思案していた。

 たぶん、少し慣れてきて油断していたのだろう。周囲のことに気をつかうことが少し疎かになっていた。

 それにこちらの世界は平和だった。

 もちろん、因果の修正が起きる可能性を完全に忘れてしまったわけではない。転生してきた日にマウリツィオに言われたことを忘れていたわけではなかったが、その後、あからさまな事故は発生していなかった。梨音の意識とレナータの意識がうまく分けられるようになった頃には、こちらの交通にも慣れてきた。

 そういったことに慣れてしまえば、こちらの世界は笑ってしまうほど安全で平和だった。


 まあ、確かに同級生からいじめを受けたり、危ないアパートの部屋に監禁されそうになったりはしたけれど、結果的には難なくクリアしてしまった。


 「魔塞ぎの縄」とか「魔法無効化結界」とかを使われたらやっかいだけど。こちらの世界には魔法さえまともに存在していないくらいだから、魔法を無効化するアイテムなんてものは存在していないだろう。


 ならば梨音が油断するのも仕方がないことかもしれない。

 これまでレナータは、国境の町で暮らしてきた。隣国からの侵略が度々発生していたわけではないが、皆無でもない。

 加えて盗賊の盗伐、町の治安維持。レナータに敵対するものも少くはなかった。

 それから比べれば・・・。


 そんなわけで梨音は無防備だった。


 もう少し周囲に気を張っていれば、あるいはそれに気付けたのかもしれない。


 梨音は尾行されていた。


 先週、魔法の発動から「エンチャンター」を探している団体に梨音は接触しそうになった。マウリツィオの機転で接触はしなかったが・・・

 彼らの目下の目的は、エンチャンター=魔法使いの発見と確保だった。

 マウリツィオによれば、彼らは魔法使いと思われる者=異世界からの転生者を強引に連れ去っていくとのことだ。

 そして、連れ去られた者を再び見ることは無かったとマウリツィオは言った。


 路肩に停められた黒いバンの中、実働部隊リーダーの高倉はネクタイ姿の男に確認をする。あの娘で間違いはないか?と。

 ネクタイ姿の男はよく見ようとしたのか、何かを考えていたのかしばらく黙ったままだった。数秒の間の後、ああ、そうだ、と答えた。

 ネクタイの男は「主任」と呼ばれていた。

 「主任」の仕事は実働部隊、研究チーム、実験チームの取りまとめだった。

 この1、2週間はほとんど家にも帰ってはいない。それだけ今回の件は重要な案件なのだ。転生時に起きる魔法の痕跡の規模は過去のデータと比較しても突出して大きなものだった。

 その数値は、転生が人為的に行われたことを示していた。

 そして団体の真の目的の一つも、人為的な転生であった。

 そのためには、転生者を見つけ出し、確保しなければならない。


 そうなのだが・・・


 まさか、それが倉本梨音だとは・・・


 なんの巡り合わせなんだろうな、と倉本雅臣は大きなため息をついた。

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