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魔法で感電

 梨音は部屋の隅まで下がり様子を見ていていた。

 位置関係として、入り口の方に筋肉とひょろいのがいるので逃げ道は塞がれた形だ。だからこそ、ひょろい方も梨音に注意を払わない。

 もちろん、魔法で感電しているとは思いもしない。


 梨音は先週、感電についても本で読んでいた。

 人間は50ミリアンペアを超える電流が流れると死ぬ可能性がある。

 ちなみに「電圧」ではない。おそらく、梨音の魔法によるサンダースタンは家庭用コンセントに来ている電気、100Vの電気・・・を集めているはずだ。

 それを直接体内へ送り込んでいる。


 実際にはコンセントに来ている電気を梨音が転送して筋肉男の体内に送り込んでいるので、言ってみれば筋肉男は体内にコンセントのホット側だけをぶっ刺されているのと同じ状態である。


 筋肉男は痙攣して動けない症状であるため、おそらく20ミリアンペア以上の電流が流れているはずだ。

 アパートの2階であることを考えると、100V程度の電圧、ということはなさそうだ。おそらく梨音の魔法は圧縮しようとすると電圧も上がるらしい。


 とにかく・・・

 梨音は様子を見ていた。

 梨音自身も部屋に閉じ込められ乱暴されそうになっているという状況なのだけど。

 あがあが、とまともに話せない男。痙攣して動くことも出来ない。


 あ、これ死んじゃうかもしれない。


 梨音はサンダースタンを止めた。

 筋肉男は痙攣をやめると白目を剝いて膝から崩れ落ちた。

 どうやら気を失ったようだ。

「ああ?どうなってるんだ?」

 ひょろい方は床に倒れた筋肉男と梨音を見比べながらわけがわからないという顔をしていた。

「ちょっと電気を流して差し上げただけですわ」

「はあ?何言ってる?意味わかんねえ」

「そうですか?」

 梨音は不敵な笑みを浮かべた。

 わざとである。

 ひょろい方は気味が悪そうに梨音を見返す。

 梨音は、左手でパチンと指を慣らす・・・つもりで変なペチャっという音を鳴らした。


 その瞬間、ひょろい方の持っていたカメラが「バン!」と破裂音を出して煙を上げる。

「ひっ!」

 カメラを慌てて投げ出し、床に尻餅をついた。

 今度は部品が飛ぶような衝撃はなく、煙も一瞬で止まる。


「ふふ・・・」

 わざと笑みをこぼし、梨音は続ける。

「これでカメラも無くなりましたし、そちらの方も倒れていますので、私は帰りますね?」

 そのまま部屋のドアを開ける。

 廊下は照明のガラス片が散らばってキラキラして見える。

「ブラスト!」

 廊下の床を一陣の強力な風が通り抜けた。

 梨音は奇麗になった廊下を悠々と歩いて玄関にたどり着く。

 いちおう自分の靴の中にガラス片が無いことを確認して靴を履くとドアを開けて外に出た。

 部屋の中の男達は、追ってくることは無かった。


 塩崎の姿も部屋の中には無かった。


 アパートの外に出ても、ギャル達4人はいなかった。

 梨音は何をされそうになっていたのかを、正確には理解はしていなかったが、おおよその意味はわかった。

 これは子供のイタズラでは済まないわね。


 きっちりと落とし前をつけさせていただくわ。

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