午後の魔法
混乱する都代に、順を追って説明するマウリツィオ。
補足するように転生した経緯を語る梨音。
そして何より・・・魔法を使えるようになって、猫としゃべっているという現実の状況が・・・都代を納得させることになった。
そして納得した瞬間、都代は涙を流して喜んだ。
「マジヤバい!親友が魔法少女だった件!魔法少女と黒猫!異世界の令嬢!しかも、私に魔法を授けてくれるとか、やばすぎ!やばいやばい!」
梨音が不思議そうな顔で尋ねる。
「そんなにヤバいですか?困ったことですか?」
「いやいや、違うよ。めっちゃ嬉しいよ。ていうか、レナータ様だったね。年上の!これから師匠って呼んでもいい?レナータ様!」
「いえ、梨音って呼んでください。今はレナータというわけでもないのです。半分が梨音、半分がレナータ。それに体は梨音ですから。私は倉本梨音。それで良いのです」
「そっか、梨音がそう言うなら・・・けど、師匠はいいよね?ね?」
「えと・・・マウリツィオぉ・・・」
困った顔でマウリツィオに顔を向ける。
「良いではないですか?レナータ様が魔法をご伝授されるなら、師匠でしょう?」
「いや、しかし、こちらの世界では同い年の・・・。あ、そうだ。都代ちゃん、マウリツィオを師匠って呼べばいいよ。ほら、マウリツィオは大魔法士だし!」
「マウリツィオ師匠?」
黒猫に惚けたような目を向ける都代。
「はうぅ!そのような目で・・・ま、マウリツィオを見ないで・・・いや、見てくれて良いぞ、弟子よ」
「はい!師匠!」
両手で抱き上げて胸に抱く都代。恍惚の表情で抱かれているマウリツィオ。
「・・・良かったね、マウリツィオ・・・」
梨音は、少しマウリツィオのことがわかったような気がした。こいつ、かなり普通のオッサン要素混じっているんじゃないだろうか・・・。
「まあ、いいか、猫だし。何も出来ないだろうし」
午後からも都代は魔法の練習を続けた。
都代の魔法練習のアドバイスはマウリツィオに任せ、梨音は自転車のバスケットから布に巻いた剣を取り出す。
「カイ兄様に頂いた剣ですわ・・・だよ?」
誰も聞いていないのに言い直す梨音。
「て・・・軽いとは思っていましたが・・・これはオモチャではありませんか?・・・じゃないない?」
誤植ではない。梨音の語尾がおかしくなっただけ。
鞘から抜いた剣を振ってみる。
軽い!軽すぎる。
当たり前だ。プラスチック製のオモチャだからね。
梨音が辺りを見回す。
古びた木の杭があった。
「エアリアルエッジ!」
風魔法を唱えながら梨音がオモチャの剣を杭を目掛けて振り下ろす。
ズシャ!
真っ二つになる木の杭。
「剣が何であれ、切れ味に変化はない・・・か」
剣に風魔法を纏わせ対象をぶった切る上級魔法、エアリアルエッジ。
「でも、剣を振っている実感もないくらい軽いですね・・・コントロールが狂いそうです。ふーむ。これは再度検討ですか」
2時間ほど砂浜で過ごし、梨音たちは再び自転車で移動した。
梨音は上機嫌だった。
自転車は思っていたより楽しい乗り物だった。夏前の少し蒸し暑さを、気持ちの良い涼しさに変えてくれる。
かなり気持ちいい。
コンビニに寄って冷たい飲み物を買う。
梨音はコーラを、都代は紅茶のペットボトルを買った。
「ぷは!コーラはおいしいですね。魔法で冷やしたエールよりも!」
「エール?」
「ええ、向こうの世界では19歳は大人ですから。あ、エールはこちらの世界ではビールというらしいですね?」
「梨音ちゃん、ビール飲んだことあるの?」
「レナータが、ですよ。こちらの世界のビールはラガーが多いですけどね。エールは鍛錬の後に飲むと旨いのです・・・のよ?」
「そうなんだー。私のお父さんも仕事から帰ってきた後のビールはうまい、とか言ってたわ。なんか面白いね」
「今はコーラが最高です。シュワシュワして後味さっぱり。たまりませんわ」
「そっか。でも他の飲み物もおいしいのあるよ。梨音ちゃんが炭酸系好きなら、次はおすすめを教えてあげるね」
「コーラよりもおいしい飲み物ですか!それは楽しみです」




