放課後は魔法の研究を
翌日。火曜日。
上履きはちゃんとあった。少し緊張していた梨音だったけれど、ほっとして教室へ向かった。
教室では、塩崎と仲間達が梨音に気付いて目を逸らした。
絡んでこないならそれでいいや、と梨音も気にしないことにした。
放課後、梨音は学校の図書室に向かう。
今の梨音にとって図書室は興味深い場所だ。片っ端から読んでいきたいけれど、まずは基礎知識。科学系の教養本を手に取るとパラパラとめくる。
レナータとしての経験上、面白くて為になるものというのは、きちんと出典が明らかにされていて客観的な見方が出来る筆者が書いていること。自分の経験を中心にしたものは教養としてはあまり役に立たないことが多い、ということ。
レナータの読んだ本の中にも、冒険者の体験談のようなものがあったのだけど、読み物としてはともかく、
「~と聞いたことがある」
「実際に行って見てきたけれど、体験したわけではない」
「体験した人の意見を聞いた」
とかって書いてあるばかりで、まともに信じていたら命がいくつあっても足りない感じがした。
魔法の本も、研究者が自分の研究について書いたものは役に立ったけれど、広く浅い知識を集めたものは、書いている本人がいまいち素人っぽくて、うさん臭かった。
何冊か手に取って梨音は、本の筆者欄を先にみることにした。
そこに教授、とか研究者と書いてある人の本を中心に何冊かを持って椅子に座った。
6月の薄曇りの空。
図書室で何冊かを借りて家に帰る。
マウリツィオは校門を出たところで姿を現した。
昨晩、遠隔会話についてマウリツィオと話した。
こちらの世界にはスマホとか携帯電話があるから不要なんだけど、マウリツィオにスマホを持ってもらうわけにもいかないので、どうにか出来ないかと思ったのだ。
結論的には、
会話は出来ないけれど、簡単なイメージを送ることは出来そうだ。
魔法理論によれば、自分が影響可能な範囲におけるエネルギー移動によって風魔法や火魔法の形で発現させている。
最初から風を起こしているわけではなく、自然界にある空気の流れを自分の意思で目の前に集めているのだ。
その集めるために必要なことが魔法理論と魔法力なのだ。
基本的には魔法力の波長は人によって微妙に異なり、お互いに干渉しあうことは滅多にないので、他人の魔法力を感知することは難しい。
もっとも、強力な魔法であれば、レベルの高い魔法師であれば感知出来る。それは魔法力そのものを感じているというより、行使された魔法の影響を感じ取っているのだ。
で、そこまで話し合ったのだけれど・・・
じゃあこっちの世界の電話とか無線とかってどういう理論なのかって話になって・・・
梨音に全くその手の知識が無いことがわかり、放課後に図書室に行ったのだった。
こちらの無線の理論、テスラのウォーデンクリフタワー、電気のこと・・・といった本を借りてきた。
けれど、マウリツィオにイメージを伝えるだけならば・・・
マウリツィオが魔力感知能力に秀でているので・・・
梨音がマウリツィオに魔法力を使ってイメージを飛ばす・・・そろそろ下校するよ、とか・・・で一方通行だけど意思疎通が出来てしまったようだ。
実際、マウリツィオが思った通りのタイミングで姿を現したし・・・。
そういえば・・・と梨音は考える。
向こうの世界では電気と言えば雷や静電気くらいだったから雷魔法ってほとんど使ったこと無いけど・・・
練習はしていたけどね。
嵐の夜なんかに雷が鳴ると、窓を開けて雷を操ってみたりとか。
けど、すごくタイミングが難しいし、
雷が鳴ってなきゃ使えないなんて実用的では無いから・・・
でも、こっちの世界って身の回りに電気が溢れているでしょう?
ひょっとして雷魔法、使いたい放題なんじゃないかな?




