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何事も正面から

 今日は、自由だ。


 ルナは一人で買い物に、るんるん、キュリア、リコルノの3ちびは揃って遊びに出かけている。

 今日の俺は自由……、少しの間だけだが、振り回される毎日から開放されるのだ。


「まあ、俺にも用事はあるんだけどさ」


 これで何も用事がなければ完全なる自由なんだろうけど、生憎俺はそこまで暇というわけでもない。

 俺の家の住居人の中で一番戦闘力が低いのは、言わずともわかるだろうが……俺だからな。


 というわけで、図鑑を貸してもらった後からも、テイマーの極意を学ぶためにちょくちょくオーガスのもとへ出かけている。

 そのおかげか、俺のテイマーとしての技能も少し上がったらしく、るんるんと遠距離での意思疎通ができるようになった。

 これでキュリア、るんるん、リコルノの三人だけでもそこまで心配する必要はなくなったというわけだ。


 オーガスの店に辿り着いた俺は、そのまま遠慮なく中へ入る。

 そして、退屈そうに椅子に腰掛けているオーガスに目線を移した。


「またてめぇか」


「上位種の存在についてまだ知りたいことが山ほどあるからな」


 オーガスは俺の真剣な表情を見るが、面倒臭そうな表情のまま、はぁ……とため息を吐いた。

 

「図鑑なら前にくれてやっただろうが、それ見て勉強しやがれ! 上位種のことならそれに……」


「図鑑ならもう全部読んだし、頭ん中に入ってる。これ以上読んでも意味がねぇ」


「だからって俺が知ってるって根拠はねぇだろうが」


「いや、それはなんとなく……」


 オーガスは再びため息を吐くと、やれやれといった風に俺の方へ顔を向けた。

 そして、近くにあった本……? オーガス直筆のものだろうか、かなり汚い字で書き荒らしてある本を手元に持ってきた。


「俺は以前、上位種の存在について専門的に調べてた時期があった。これはその時にまとめたものだ」


 そう言って、オーガスは本を開く。そこには、図鑑にはなかった……上位種の住んでいる地域、上位種たちのルールや身体の仕組みが細かく書き記してあった。

 俺がもらった図鑑には、上位種の種類、見た目、特徴くらいしか載ってなかったからな。細かいことは少しだけしかわからなかった。


「前にギルドの方に顔を出しに行った時に小僧の連れを見たんだが、あの時は正直驚いた。なにせ、上位種を三人も連れてるんだからな」


「三人って……、上位種は魔物じゃないのか?」


「魔物が進化して人に近づいた姿……、俺はそう解釈してる」


 オーガスはそう言って本を閉じた。

 図鑑には、幼体の魔物しか人の姿には変わらないと書いてあった。だが、オーガスの本にそれは書いてなかった。

 逆に、オーガスの本では人の姿で1つの里をつくっているという仮説までたてられていた。


「そういえば、リコが『信頼した人にしか人の姿は見せない』みたいなことを言ってたような……」


 リコの言ってたことも含めると、オーガスの説の方が信憑性が高く感じる気がする。

 もしそれが本当なら……俺は、このままキュリアたちと一緒にいてもいいのだろうか。


 ……キュリアたちを無事に里へ返すことが俺の役目ではないのだろうか。

 ふと、そのような考えが俺の頭の中をよぎった。


「そのリコっていうのは、お前のとこにいる……」


「ああ、もともとユニコーンの姿をしてた。今も額にちょこんと小さな角が生えてるけど」


 不意に隣から聞こえてきたオーガスの声に、少し戸惑いながらも俺は答える。

 オーガスは悩むそぶりを見せ、「そうか」と呟いた。


「この件については、お前が自らその子たちと向き合う必要があるみたいだな」


 オーガスの言葉を聞き、俺は黙って頷く。

 今まであえて触れていなかった、キュリアたちの過去にも触れるべき日がきたのだと……俺はそう思った。





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