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二度目の神様


「これのどこが、楽しそうに見えるんだ。なあ、神様」


 後ろへ振り返り、俺はその声の主に怒りの目線をぶつけた。

 が、神様はそれに動じることなく、その目線に合わせるかのように顔を俺の方へと向ける。


「頭に直接話しかけたつもりだったんだけどね、まさかバレちゃうとは」


「神様独特の気配だ。簡単に忘れられるかよ」


 何も感じない……いや、そういうわけではない。

 無を感じる。その何もない何かを感じるという独特な気配を、俺が忘れるわけがない。

 神様は真っ白な長髪を揺らしながら、俺の元へと近づいてくる。


 もちろん、いつもの拒絶反応は起きない。


「単刀直入に言うけど、ボクが君の元にきたのにはある理由がある。

 君にあげたプレゼントというか、加護というか……それについてのね」


「やっと自分のミスに気づいたってか」


「ミス? いや違う。その加護だけじゃこの世界を渡り歩くことなど到底不可能。そうボクが解釈しただけさ」


 首を振りながら答える神様の様子からして、全く自分の過ちに気づいていないようだ。

 なんとも、神様だからといって全てがわかっているわけではないことが恨めしい。


「女性と話すのが苦手なのだろう? だからコミュニケーション力……言語能力の上昇する加護を作ってきたわけさ」


「もともと期待はしてなかったけど、やっぱりどこかずれてるよな……神様のチョイス」


 魔物など危険な生物がうじゃうじゃいる中、俺のような戦闘未経験者が活躍できるわけがない。


 最初は考えてもなかったけど、やはり戦闘のできる身体が1番必要な気がする。いや、女性恐怖症を克服している身体の次にだな。

 

 だが……、神様が新たに寄越すといっている加護。何処で使うのだろうか。

 言語能力の上昇……動物相手にも話せるようになればちょっとは凄いのだろうが、狼たちともある程度意思疎通できるようになった俺にはあまり必要性がない。


「不満そうな顔だね」


「ああ、その加護ならいらねーな。それくらい自分でなんとかする」


「ふむ……そうか。君がいらないと言うのなら、無理には与えない」


 神様は頷きながら、俺の方から目線を外した。そして少しずつ遠退いていく。


「だが、君が今欲しいと思っている『力』。守りたいものがあるからかもしれないが……、それこそ自分でなんとかするべきだ」


「……わかんねぇな。加護を与えたいのか、与えたくないのか。どっちなんだよ」


「ボクは、手助けをするだけさ」


 そう言って、神様は消えるようにして去っていった。

 数秒もすれば、俺が誰かと喋っていた出来事もなくなりそうな気がする。それくらい自然に姿を消したのだった。


「にぃ、ご飯食べないのっ?」


 テーブルの方から声が聞こえてくる。

 声の聞こえた方へ顔を向けると、なかなか近くへ来ない俺に対し、キュリアが心配そうな顔つきをしていた。

 今思えば、ここ俺の家だったな。ごく自然に不法侵入されてたんだけど。……神様だからセーフなのか?

 まあ、細かいことはどうでもいい……だろう、たぶん。


「すぐ行く」


 俺は、礼儀よく食卓についているルナ、キュリア、リコルノ、るんるんの方へ体を向けた。

 どうしてもこの光景を見ると、口角が自然と上がってしまう。

 俺は、いつの間にかこいつらと一緒にいることが幸せだと感じていたらしい。


 こいつらといると、自分の恐怖症を忘れているときがたまにあるくらい、俺はこの関係に慣れてしまっていたようだ。

 このまま、恐怖症も克服できればいいんだろうけど……、それは俺自身が恐怖症と向き合わなければ不可能だろう。


 まずは、ルナに自分から触れられるくらいにはならなきゃダメかもな……。


 席に着いた俺は、目の前で美味しそうに食事をしているルナを見て、そう思った。

 


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