表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

Forest in the mist

 そうして英雄が(まも)る国と魔女の国との戦争は、二人の死を()って終結した。

 焼け落ちた敗戦国の城に(のこ)されていた英雄の剣と、それを握る腕のみが彼の国へと帰還し、それを見た民達は(なげ)きながらも心から戦勝を喜んだ。

 王は切り札だった(英雄)と精鋭を消耗したことに激しく(いきどお)りはしたが、すぐに頭の中は次の戦争のことで一杯になっていった。


 そうして次に起こる戦争までの()()()()の平和が訪れ、魔女の森に棲む人間は居なくなった。



 そう、()()()


 森の(あるじ)が居なくなった今、森に(ひそ)むモノたちが(うごめ)き始めていた。




 魔女の国との戦争から数か月後。

 守人の(おり)から解き放たれた化け物達は、(おのれ)たちを封じていた森から飛び出し、本能に従って周囲の国々を次々と侵略し始める。


 さらに数年もしない間に、圧倒的に数を増した漆黒の大群が英雄のいた大国を襲った。

 王の命令によって軍が反撃を試みたが、味方は次々と不死の化け物に飲まれ、次の日には敵として襲ってきた。

 そして栄華を極めた大国も、たった数週間であっけなく地上からその姿を消した。



 (おろ)かな()の国の王は知らなかったのだ。

 (いな)、知ろうともしなかったことでもあるが。


 ――なぜ亡国(ぼうこく)の城の庭園がわざわざ堅牢(けんろう)な造りで(まも)られていたのか。


 ――どうして一国の第一王女ともあろう姫が、危険な森の中に長年放置されていたのか。


 ――いったい何が"強国が誇る英雄"を瀕死になるまで追い詰めたのか。


 そう。香煙の魔女が(まも)る国に戦争を仕掛けた時点で、彼の国が滅ぶことは決まってしまっていたのだ。

 大国の英雄と呼ばれた騎士が、心の底から守護していたのは何だったのかを王が理解していたら、こうはならなかったのかもしれない。

 しかしそれはもう、何もかも終わってしまったこと。


 さまざまな国々や、英雄と呼ばれた者達が群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)していたこの大陸も、生を(むさぼ)る不死の大群の進軍によって人間が棲める土地は急速に失われていった。

 

 奪う命も尽き果て、(なげ)く不死者が土へと(かえ)った頃。

 人類に(わず)かに残されたのは、もはや誰も知ることのない辺境(へんきょう)にある森のみだった。


 しかしその限られた小さく残った場所では、とある美しい光景が見られるそうだ。

 それは森の開かれた場所に一面と咲く、甘く優しい風が香る花畑。

 そしてそれが一望(いちぼう)できる場所に立つ、一つの白い墓標(ぼひょう)

 白い花で()られた絨毯(じゅうたん)畑の隣には小さな木の家がポツンと建ち、その家の煙突からは紫色の煙が緩々(ゆるゆる)と……いつまでも、いつまでもたなびいているという――――


ご覧くださり、ありがとうございました!


感想や☆☆☆☆☆評価を頂けると飛んで喜びます!

\( ˙꒳˙ \三/ ˙꒳˙)/‬

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ