婚約発表会
時間はあっという間に過ぎ、今日は婚約発表の当日を迎えてしまった。
今私は皇居内の皇太子妃のみが入室を許されるという『シュヴァン(白鳥)の間』にてレオナルドが迎えに来るのを待っている。
採寸をしてデザインを2人で決めて、驚異的な早さで出来上がったドレスはレオナルドが指定した、紫色のドレスだった。
プリンセスラインのドレスは幾重にもレースが重ねられ、レースとレース継ぎ目部分に青いレースでバラがあしらわれたデザインだ。チューブトップなのでキラキラと輝く大ぶりのネックレスとピアスには大きなアメジストがはめ込まれ存在感をアピールしている。
髪はアップにして、プラチナの小ぶりのティアラがチョンと乗っかっている。ここにもアメジストが付いているとかどんだけだよ。
ああ、アメジストは魔除けだっけー、などど白々しく思いながら、自分の姿を眺める。
間違っても独占欲などどは思わないが、ここまで自己主張を激しくする必要は無かったと思う。間違いなく私は他を牽制するための程の良い防波堤なのだから。
レオナルドがウチに挨拶に来た日の夜、ヘンリーお兄様を筆頭にお茶会で婚約者の打診があった事を家族に一言も言わなかった事を怒られた。
断ったから大丈夫だと思ったと言うと、知っていれば早くに手を打てたのにとお父様にまで怒られてしまった。
お母様にも、「レティは嫌なのでしょう?私達もそんな貴女を尊重したいから言うのよ?」と言われてしまった。
ぐうの音も出ません。ごめんなさい。
決まっちまったもんは仕方ない。乙女ゲーの強制力に辟易しながらとりあえずここから先どうやって穏便に婚約解消するかを考えていかなければ。
3回ノックの音がして、メイドのリサがドアを開けるとレオナルドが立っていた。
「レティシア、行きましょうか。」
今日の彼は私とお揃いの紫のスーツを着て青のネクタイを締めている。私の装いの色とリンクさせて仲睦まじさをアピールすると言う事だろうか?
紫のスーツなど日本人が着たらただのバブル期だけれど、レオナルドが着ると様になるからイケメンは得である。
レオナルドにエスコートされ、御披露目会場の前に掛かっている分厚い臙脂色のカーテンの前まで来た。緊張で胃がひっくり返りそうだ。
「レティシアは初めて会うだろうけど、ライムライト公爵は熊みたいな人なんだよ。」
「へ?熊…ですか?」
「マルーン公爵は狐だし、シュバルツバルト侯爵は犬だね。レイブン騎士団長は蜥蜴で、君のお父さんは猫だと思うよ。」
「何ですかそれ。」
まさか動物に例えるとは、思わず笑ってしまった。
それで私の緊張もほぐれたので、レオナルドがわざと言ったんだなと分かったが、無表情…。
無表情…うん、無表情。違う意味で笑ってしまった。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。




