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ひねくれ“悠榎”は、恋をしない  作者: 小梅沢田 明
高一の“伏見悠榎”は、既に捻くれていた
11/33

“伏見悠榎”は再び部活動を紹介される。いやあの俺まだアレなんで……。

 ……ふぅ~、終わった。

 今日を最後に、一学期初めのテストが終わりを告げた。

 周りからも一喜一憂の声が聞こえる。「あの問題難しかったぁ」とか「ヤベー、今回マジで楽勝っしょ!?」とか。いやいや、楽勝なのは最初だからだから。後々難しくなるから。

 テスト中の時間割は基本午前中までしかなく、テスト最終日である本日も変わらず午前で終わりだ。


「……帰るの?」


 ふと逢坂が話し掛けてきた。


「いや、どうしようか迷ってる所。お前はどうすんだ?」

「私も……迷ってる」


 午前中までしか授業がないからと言って、友達のいない俺達ぼっちは、基本的に何もやることがない。家に帰った所で寝るかゲームするか、はたまた寝るかぐらいしか選択肢がない。っつーか寝過ぎだろ、俺。

 そういえば最近、逢坂と会話をしているときにいつも感じていた痛々しい視線を感じない。もうこの話題には飽きたのだろうか。はたまた俺達の仲を承認してくれたのだろうか。いや、付き合ってないけれど。


「ヤッホー」


 お隣りから阿呆みたいな挨拶が聞こえてきた。ジト目でそちらを振り向くと、やはり神城がいた。何、俺は山なの? 山彦やまびこじゃねぇんだから声は返って来ないぞ?


「何?」

「や、あの、今日一緒に帰ろうかなあって思ってさー」

「いや、遠慮しとく」

「え!? 何でぇ?」


 いやだってそうだろ。お前と帰るという事はつまり、後ろにいる奴ら――里中昂輝さとなかこうき有する「私達リア充(笑)」軍団と帰るという事である、多分。

 それだけは絶対に嫌だ。個人的に嫌だ。


「いや、俺、逢坂と帰るから……」

「えっ!?」

「……え?」

「……あ?」


 三つの疑問視が宙を舞う。何? 俺なんか変なこと言ったか?

 対する神城はキョトンとし、逢坂は何故か顔を赤くしている。知恵熱かしら?

 別に深い理由はない。

 一人帰ろうとすれば、必ず神城組――もとい里中軍団と帰路を共にする事になる。それだけは阻止したかった。故に俺は「逢坂と帰る」と発言した訳である。

 誰かと帰る、という予定があれば、他人は安易に一緒に帰ろう等という野暮な事は言えない。

 そして、友達のいない俺の唯一の接点であり、帰路がほぼ同じな逢坂を共に帰る“誰か”に選んだ訳である。異論は認めん。


「そ、そっか、うん、わかった」


 たはは、と笑いながら神城は了承してくれた。まぁ、そういうしかないわな。

 ぞろぞろと教室を出ていく里中軍団。最後尾である神城が扉を閉める際、


「……バカ」


 何なら小さく呟いていたみたいだが、ごめんなさい、聞き取れませんでした。


「……で、どうする? 逢坂」

「……え?」


 逢坂は今だキョトンとした様子でこちらを伺う。まだ顔赤いのかよ。冷やせ冷やせ。


「帰んのかって聞いてんの」

「……あぁ、そうね」


 次第に冷静さを取り戻してきたようで、ひょこっと立ち上がりる。俺もそれに続くように鞄を手に取る。


「……紛らわしいのよね」

「何が」


 不意に呟く逢坂に尋ねてみる。


「貴方の言動……。他意はないのだろうけれど、あれでは他の人に、私達は付き合っていると勘違いされてしまうわ」

「そうか? 別に他人はどうでもいいだろ」

「え?」

「他人に何て思われようが、俺達の意見が真実だ。俺達が付き合っていないといえばそれが真実で、事実で、結論だ。異論は認めん」

「………」


 ふと逢坂は黙り込んでしまう。それでも俺は言葉を紡ぐ。ずっと俺のターン。


「だっておかしいだろ? 本人は否定してるのに、周りからは全く違った解釈で噂が広まるなんてさ。あれは大抵、他の奴らが嘘偽りで盛り上げた作り話だ。そんなん無視しとけばいい。“人の噂も七十五日”と言うだろう? 事実なき噂は次第に廃れていくもんなのさ」

「……そうね」


 納得したのか、逢坂はこちらを振り向きフフフと微笑む。


「……そうだ。私、また新しい部活動を始めようと思うの」

「……そうか」


 逢坂の提案は素晴らしい物だと思う。普段あまり親しい同性のいない彼女が、少しでも親しくなれればいいな、と素直に思う。


「伏見君も一緒にどう?」


 ただ、俺を巻き込まないで頂きたい。いや、マジ前回の件が今だトラウマなんですよ、逢坂さん。


「いやあの俺アレだから……」

「大丈夫よ。他に人がいないから……」

「は?」


 え? どゆこと?

 逢坂は長い髪を手で撫で払う。そして落ち着き払って一言。


「見付けたのよ。私と貴方だけの部活――“隣人研究部りんじんけんきゅうぶ”をね」


 私と貴方だけ――。端から聞けば何だか不穏な響きがそこにあるのだが、その後の部活動名が気になりすぎてそれどころじゃない。

 何? 隣人研究部? 何それ物騒。何か俺改造とかされるんかしら? もしくは実験台?

 謎が謎を呼んだまま、俺はただ聞き覚えのない部活動を紹介されただけで、詳しい内容は説明されなかった。もはや気になりすぎてネットでググってしまうレベル。







 翌週、俺はその“隣人研究部”とやらにお邪魔することになる訳である。

 ……ま、確認だけはしないとね。

 結論、確認作業は大事である。何この結論イミフ。

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