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豺狼  作者: 風祭ともこ
8/8

砂塵

”俺は人間の仲間になれない”

 しばらく歩いていると、左目がさっきの言葉を繰り返すように発した。

 その後で、あひゃひゃひゃと馬鹿にしたような左目の笑い声が響いた。


 明けの空、砂塵はまだ暗い、揚華はあてもなく一人歩いている。

 今日は特に寒さが厳しい。

「豺狼が居た頃はほとんど喋らなかったくせに」

 忌まわしそうに揚華は言う、

”一人で居る時・・・それが一番、付け込みやすいんだ”

 左目は含みのある笑い声で答えた。

 すべての事を・・・揚華が見たことをこれは知っている。

 追い詰める事、陥れる事だけに喜びを見出す・・・それがこの鬼だ。

 左目は続ける。

”いつか死ぬと思っていたが、案外早かったな・・・嫌われ者らしい死に方だぜ”

「ああ」

 揚華は答えた、昔ならムキになっていた言葉も、今ではある程度、流して聞ける。

”お前はいつ、そうなるんだろうな”

「俺はそうはならない」

 揚華は意志の強い目で呟いた。

・・・ふと足を止めた。

 地平線に日が顔を覗かせる。

 漆黒だった世界が、徐々に淡いブルーに染め上げられていった。

「誰とも関わらず生きていけるほど強くない」

 豺狼から教わった何よりの事だ。

「・・・あの時、あいつに認めて貰えなかったら、俺はもう死んでいたから」


 揚華は日の方向に歩き出した。

「だから、見つけなければいけない・・・自分の生きる道を」


 完

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