10. 初めてのデート
僻地の代官任命状が届いた3日後、準備を終えた僕とミーナは赴任先への引っ越しを開始した。
この世界にはマジックバックという便利なものがあり、荷物の持ち出しはすごく簡単だった。
ドラ○えもんの4次○ポケットのバックバージョンと言えばわかりやすいだろうか?
ミーナに教えてもらったのだが、これまで過ごした家は、ミーナの家に伝わる隠れ家の一つだった。
貴族はあちこちに敵がいるので、このような隠れ家がいくつかあるらしい。
このため、小屋はそのまま残していくことになった。
もっとも、ミーナの実家にとっては単なる隠れ家の一つかもしれないが、僕とミーナにとっては、2人の最初の日々を過ごした思い出深い小屋だ。
壊していくなどという選択肢は最初からなかった。
引越しの当日、この地を去る前に僕とミーナはお世話になったこの小屋に深々と頭を下げた。
「またいつか、2人でここに来たいね」
そうミーナに言うと、彼女は悪戯っぽく笑い、
「そうね、でもその時はもう1人か2人、増えてるわよ、きっと」
そう返された。
「結婚って、やっぱりいいなぁ、」
僕はそう言ってミーナを抱きしめ、この地を去った。
引越しだが、まずは森の外まではミーナに抱いてもらいながら飛んでいった。
また逆お姫様抱っこである。
重いのではないかと心配になったが、魔法で補助しているので大丈夫とのことだった。
森を抜けた場所で着地すると、そこから道の彼方に見える町まで歩いていった。
そこはまずまず大きな町のようで、結構人が多い。
雰囲気的に中世のヨーロッパに近い作りだった。
僕がこの世界に来てから初めて見る町なので、とても興味深く、何を見ても面白かった。
だが、ミーナは異世界人の僕以上に感動しているようだった。
この世界の住人である彼女にとって、この町の風景は日常的なものである筈だが、メガネをかけた今、その鮮明度がこれまでとは桁違いなのだろう。
「どうだい、メガネの調子は?」
僕のその問いかけに、満面の笑顔でミーナは応える。
「世界が変わったわ!」
至高の笑顔と言葉を賜った僕は、メガネという発明に深く感謝するのであった。
昼近くなり、適当に入った店で食事をしながら、
「ここからはどう移動するんだい?」
と僕はミーナに聞いてみた。
「赴任地はここから馬車で1週間ほどの所よ。乗合馬車があるからそれを使うつもりだけど、数が少ないから何日かこの町に滞在するかも」
うん、まさに辺境なんだな。
「それじゃあそれを調べてから今後の予定を決めようか」
そう話し合った。
調べたところ、赴任地への乗合馬車は1週間に1台が運行されており、2日後に次の便が出発するとのことだった。
このため、僕達は明日の宿を確保すると、残る時間は赴任準備兼夫婦の初デートの時間に当てる事にした。
後日談となるが、赴任地に着いてから、この時いくつかの物資を買い忘れたことに気づいた。
しかし、僕もミーナも新婚夫婦の初デートという至福の時間を過ごしていたため、まあご愛嬌の範囲内だろうと思うことにするのであった。




