表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/673

57

『キャロルさんが持たせてくれるだろうランチボックスは旨いに決まっているが、少し我慢するといい。そうすれば、一日目に丁度いいところまで走れるはずだ』

ケビンとノーマンが教えてくれた帰路と宿泊先。そして途中、馬の飼葉を入手するところまで紙に記してあった。更には、飼葉を得る時に見せるようにと紹介状のようなものまで書いてくれた。


ナーサはジョイスを許せないという気持ちを言葉に、そして態度に表した。それに対しケビンとノーマンはどうだろう。スカーレットが作ったランチボックスを先延ばしさせ、しかも勧められたところまで行ってもまともな宿すらなかったら。

二人を信じ、裏切られたらジョイスはどうすればいいのか。

そして気付く、『どうやって信じればいいのですか?』と言ったスカーレットの心の中にあった感情を。

言葉通りにスカーレットは信じ方を問うたのではない。アルフレッド、否、ジョイスにもテレンスにも裏切られたスカーレットは、怖かったのだ。酷く傷付き、信じることを恐れてしまった。


だったら…

スカーレットが再びジョイスを信じるには、そこに恐怖も傷付くこともなくなればいい。でも、どうしても、スカーレットに最初の一歩は踏み出してもらう必要はある。


今回のファルコールから王都までの帰路。ケビンとノーマンがジョイスに何か企てたとしても、その原因に心当たりがあり過ぎるので仕方ない。だがあの頃のスカーレットは、様々な思惑が重なり傷付けられ、最終的にアルフレッドから幼い日に決まった婚約を破棄されるという裏切りにあった。状況が違いすぎる。


それでも一歩を踏み出してもらいたいと思ってしまうのはジョイスのエゴなのだろう。

願わくは、ジョイスを再び信じてもらいたいと思うのは。



信じてもらうには、まずは自分が信じることから。

その日、ジョイスは何度かスカーレットのランチボックスを開けてしまいたいという気持ちに襲われつつ、ケビン達のアドバイスに従った。スカーレットが見ている訳ではないが、信じ続けたのだ。その結果が、遅い時間に到着した宿が馬の世話を引き受けてくれたこと。お陰でジョイスの休息の時間が多めに取れたことだった。


何よりファルコールから王都まで二泊で済んだ。と言っても、三日目公爵邸に到着したのは日付が変わろうとしていた頃だったが。

前回の往復と今回の往路、ジョイス達は公爵家が誇る駿馬を走らせたが三泊を要した。だから、ケビン達から二泊の行程だとルートを説明された時は不可能に思っていたというのに。


二人を信じ、大きな結果を得たジョイス。いつかスカーレットにもジョイスを信じたことで何かを得るという経験をしてもらいたいと思わずにはいられなかった。どんなに小さなことでもその積み重ねが、消えてしまったジョイスとスカーレットの間にあった繋がりを再び蘇らせることになるように思えたのだ。


その前に、ジョイスはアルフレッドにパートリッジ公爵の言葉を伝えなくては。

ただそこで一つ、問題がある。王都への到着が遅れた以上、アルフレッドに理由を伝えなくてはならない。ハーヴァンが共に戻ってこられなかった理由も合わせて。

問題というのは、ジョイスが話す理由の中に出て来るファルコールという地名から、アルフレッドがスカーレットのことを質問してきたらというもの。ジョイスを信じ、隣国へと送ったアルフレッド。そのアルフレッドからスカーレットの質問を受けた時、ジョイスはどう答えるべきなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ