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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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創造主がどの悪役令嬢断罪小説を参考にしたのかは、薫には分からない。そして、参考にしたところ以降に、どのような文章が続いていたのかも。ただ一つ言えるのは、『今』は創造主の手を離れたということ。全てが解き放たれたのだ。しかし、未来へ向かって誰もが解き放たれようと、それまでのストーリーという過去は誰にも必ずついて来る。


その過去にジョイスは縛られ、苦しみ、悲しみと辛さを混ぜたような複雑な表情をしているのだろう。

『過去は忘れましょう』、ジョイスの心を多少でも軽くしてあげたいと思うのなら薫はこの一言を伝えればいいのかもしれない。でも、これは色々あったけれど最終的にスカーレットがアルフレッドと結婚した場合にのみ使える言葉だ。

何故なら、解き放たれたストーリーは既に惚れた腫れたの恋愛劇ではなくなり、この世界に暮らす人々に様々な影響を与えだしている。ジョイスが言ったように、気付かれていないだけで人々に不利益をもたらすような。その人達のことを考えるなら、寧ろ仕出かしてしまったことを胸に刻み付ける方が良い、『忘れましょう』ではなく。


だからこそ、薫は次に何と言えばいいのか悩んだ。重苦しい雰囲気になってしまった朝食をどうにかするには場を一転させる言葉が必要だ、しかし次に出てきたのはナーサの辛辣な一言だった。


「詫びるのは簡単ですよ。ただの言葉ですから。それに知らない内に利益を取り上げられた人は知らないままです。だったら、それ以上の恩恵が得られるよう尽力するのが、言葉よりも重要ではないのでしょうか。それが出来る立場にその方々がいるのであれば、ですが」

「ああ、ナーサさんの言う通りだ」

「でも、面と向かって愚かな言葉を投げつけられ、本来の立場を取り上げられた人には…」


ナーサの言葉を主として薫が窘めなければならないのは分かる。けれど、薫には出来なかった。辛い状況にあった当事者のスカーレットの記憶を見てしまった薫には。

そしてやってはいけないと分かっていながらも、じっとジョイスを見つめたのだった。追い詰めるつもりはないが、知りたかった、ジョイスの考えや気持ちを。


「人を傷付ける時の言葉は凶器の様なのに、傷付けた相手への謝罪や思い遣る言葉は紙より軽い。けれど、紙、下手をするとちょっとのことでまた切りつけてしまう。だから、行動で示すしかない、と俺は思っている」

「その行動の中に、二度と関わらないようそっとしておくというのを入れておくと良いと思います」

「でも、それでは…」


薫がした取るべき行動のアドバイスに、ジョイスは反対を表したかったのだろう。しかし、その先の言葉は出て来なかった。

そう、ジョイスは気付いてしまったのだ。謝罪や思い遣っていることを伝えたいのは自分のエゴだと。伝わったところで、スカーレットに何を求めるのか。

本来なら、そっとしておいて欲しいと言っている本人の意思を尊重すべきなのだ。それでもジョイスはファルコールで暮らすスカーレットを今度こそ守らなくてはいけないと思ったのだった。

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