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オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではありますが~  作者: 五十嵐 あお


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夜食は卵サンド、チーズとサラミの盛り合わせ、それにバーデンバーデンを目指しているので何となく作っておいたザワークラウトとなった。卵サンド以外は切るだけ、盛るだけ。手を加えなくても美味しいものが食糧貯蔵庫にあるのは本当に便利でありがたい。

卵サンドだってノーマンが心配した手を煩わせることなどない手軽さなもの。


だから薫は作業の合間に、再び沖縄のことを思い出した。でも、今度は口先男に関わることではない。前世でやってみたかったことを思い出したのだ。

四十七都道府県、薫が唯一行ったことがないのが何を隠そう沖縄県。

薫はいつか美しい沖縄のビーチでマリンスポーツをする、ことではなくあぐー豚のラフテーを翌日肌が潤ったかもと思うくらい食べてみたかったのだ。勿論、お供は沖縄のクラフトビールか泡盛で。


泡盛やかつお出汁がないのでラフテーは無理だけれど、それでも豚の角煮はどうにか出来るかもしれない。それには、醤油が必須。その為には、原料の大豆も。更には砂糖も確保したい。問題はこの世界で砂糖の流通量が少ないこと。お陰で値段が張る。皆が普通に角煮を口にするには砂糖が最大の敵ということだ。

ここでイービルに砂糖が次から次へと出て来る壺を出してもらっても、これは恒久的な解決策にはならない。

とすると、菌同様願った種が入手出来る箱をイービルに出してもらえば良いと薫は考えた。


サトウキビは沖縄で作っていたけれど、確か甜菜は北海道だったはず、その北海道は大豆生産量も多かったと薫は記憶している。ファルコールの気候からしてもいけると思うが、種にも希望が乗せられれば良く育つ種を出せばいい。問題は種があってもどうやって育てるか。

出張は極力週の後半にして、日本全国の旅を楽しんだ薫。その行く先々で、工場見学や果物狩りなどを楽しんだ。けれど、果物狩りは出来上がったものを刈り取るだけ。土を耕し、種を撒き、収穫までの世話など経験がない。


そして薫は思い出した。マーカム子爵がファルコールへやって来ることを。ここでは国境検問所で働くが、マーカム子爵が得意とするのは農地改革や農業に関すること。キャリントン侯爵領内でもマーカム子爵は農業全般に関する重要なポストを担っていた。ケビン達はマーカム子爵と関わることを由としないだろうが、折角お持ちの技能や知識は頂きたい。

少ない接触で欲しいモノだけ頂戴するにはどうすればいいのか…。


ここで前世の経験を活かすなら、倣いたくはないがあの男のように口先女になりマーカム子爵を都合の良い男にすればいいのだろう。しかしそれは、薫の沽券にかかわるだけではなく、スカーレットの品位すら疑われかねない。


ケビン達の話からすると、マーカム子爵はスカーレットになるべく多く接触しようとするはず。しかも、よっぽどのことが無い限りファルコールに居続ける。

今、ファルコールの領民達はシイタケの原木栽培と、おがくずとふすまでの菌床栽培に取り掛かり始めたばかり。因みに種菌での原木シイタケ栽培は、本来1~2年の年月を必要とするもの。しかし、そこはイービルのお陰で原木栽培も三分の一程度で育つ菌となっている。菌床栽培も、暑すぎなければ病気の心配もなく育つ大変優秀な菌だ。領民達の中でシイタケ栽培を始めた者達には、先ずはこの二つのサイクルに慣れてもらう必要がある。


マーカム子爵は逃げないのだから、寧ろ寄ってくるとすれば、大豆と甜菜はもうしばらく時間を置こうと薫は考えた。

その時間を利用して、今後どのようにマーカム子爵と関わるかの計画も立てられる。

ファルコールでやってみたいことが沢山ある薫は、豚の角煮は来年の計画にしようと思ったのだった。


しかし、この考えには重要なことが抜けていた。スカーレットは貴族家の子息達が男性同士でこっそり話すデズモンド・マーカム子爵の夜毎の武勇伝等聞いたことがない。その記憶を受け継いだ薫もまた知らなくて当然。

時にこういう要素こそ気を付けなくてはいけないというのに。


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