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第87話:曇りノチ晴れノチ雷ドッカ~ン!

 みんなが私の動向を気にして固唾を呑んで固まっちゃってる。

 もう怒りは消えて、どうしようか悩んでるだけなんだけど。


「どうした? これは何の騒ぎだ?」


 と、ジスケルさんが疲れきった顔で大ホールに入ってきた。

 疲れきってるのは、私の代わりに王様に謝りにいってくれてたかららしい。で、戻ってきたらこの騒ぎで、またか……みたいな顔で私を見てくる。

 そんなジスケルさんに、ラグルさんが説明してくれた。


「ふむ……」


 1つ頷いて、大きく息を吸い込んだ。


「連合軍内の規定に従い、この問題はフェルド国第二王子ジスケルが預かる!」

「「「はっ!」」」


 この場にいる全員が、ジスケルさんに向かって一斉に跪いた。

 他国内でも、王族の権力はロシキア騎士団長のクラーネスさんよりもずっと上らしい。

 

「規定なんて俺は知らないですが、言ってみるもんですね師匠」


 屈んで耳元で囁いてくるけど、そんなことでいいのかな~?

 確かなのは、私の中でジスケルさんの好感度が、鯉の滝登りのように滝の水を割りながら空高く舞い上がって……後は重力で滝壺の底に真っ逆さまに落ちるだけ。好感度の維持は難しいね。

 

「……残念だったね」

「ん?」


 ジスケルさんは、何が? って顔で首を傾げてた。


 



「さて……この盗賊達は師匠……サクヤ様の仲間という認識でいいのかな?」


 助けてくれたし、一緒に戦ったからそれでいいと思うけど。

 仲間っていうので刑が軽くなるのかな?


「うん。仲間だよ」

「ふむ……。その者たちは、我が国内で盗賊していたのも事実。サクヤ様の仲間だという申し入れを加味しても、刑を与えなければいけないものです」

「え?」

 

 助けてくれるんじゃなかったの? いきなり高感度が底まで行ったよ!


「サクヤ様の裁量で、罰を与えてください」

「裁量でって……好きなようにしていいってこと?」

「皆が納得できるように……ですがね」

「う~ん……」


 ジスケルさんのおかげで、死罪はなくなったけど、納得させるだけの罰を与えないといけないのか……。

 裁判なんてやったことないから分かんないし……。あ、そうだ! 裁判はしたことないけど、時代劇でなら見たことあるよ!

 ここでラグルさんにいいとこを見せちゃうんだから!


 私は盗賊さん達をズラッと横2列に整列させて座らせた。

 イメージとしては奉行所? 

 私はその前に立ったけど、背が小さいからか後ろの人が見えない……。御奉行様とかって壇上に座ってたよね?

 ということで、椅子を持ってきてもらってそこに座った。


「さて、今よりそなたらの取調べをぉぉぉぉ行う」

「いや、調べはもうついてますが」


 ジロ!


「すいません……」


 えっと……BGMってあったかな?

 ……ふ~ふふ~ん、ふ~ふふふ~ん、ふっふっふ~ふふん。あ、これ違う。白い馬に乗った暴れん坊さんだ。

 でも流れ出したBGMが止まらないよ。

 ふ~ふふ~ん、ふふ~ふふ~ん、ふふふ~ふふ~ん、……成敗!


「成敗しちゃダメなんだってば!」

「うお! いきなり何事ですかい? で、セイバイってなんですかい?」

「待って待って! 今のなし!」


 うわ~! 頭が混乱しちゃったよ! いろいろ混ざっちゃってるよ!

 そうだ! 決めゼリフだよ! え~と……市中引き回しの上、打首獄門! 

 ――だからダメなんだってば!


 私の記憶力とイメージ力の無さに絶望だね!

 ……あ、でも……そうか。私のイメージの中でも死んじゃうんだったら、最初から死んでたことにすればいいのかな?


「2年前、兵士達は魔物の襲撃を受けて死んでたのです。既に死んでた者をさらに死罪なんてできないでしょ? で、今そこに居る人達は別人で、フェルド国で盗賊をしていた罰で、私の護衛をしてるの」


 いい考えでしょ? と、満面の笑みで睨んでみる。

 こんな設定でロシキアの騎士団長クラーネスさんが納得するのかな~?


「……すまん。人違いだったようです」

「はい! 解散」


 クラーネスさんが盗賊さん達に頭を下げて、ジスケルさんがパンパンと手を叩いて皆を解散させた。


 そんなのでいいの!?


「クックック。演劇は面白かったですよ?」

「お姉様! 素敵でしたわ!」


 どうして「?」が付いてるのかな~? そしてさっきのどこに素敵要素があったのかな?

 意味も分からず、明日の準備にそれぞれ動き出した皆を見回してると、私の前に屈んだラグルさんの大きな手が、私の頭を撫で回してきた。


「サクヤちゃん。よくやったな」

「本当にさっきので良かったんですか?」

「サクヤちゃんが仲間だと宣言した時点で誰も手出しできなかったしな。後は上手く纏める口実があれば良かったんだ。サクヤちゃんはこの国とこの場に居た皆を救い、今もまた命を救った。本当によく頑張ったな」


 勢い良く頭を撫でられて、怒られてどんよりしてた心が晴れていった。

 褒められたよ! 雲1つ無い快晴だよ!


「嬢ちゃん。仲間だと言ってくれてありがとな」

「うん! 助かってよかったね」

「まぁ、ロシキア兵士だった俺達は死んだけどな。これからは嬢ちゃんの仲間として頑張るぜ。まだ名前を言ってなかったな。俺の名はロイだ。よろしくな」

「よろしくお願いします」


 自己紹介してくれる皆と握手した後、フッと思った。

 私の仲間だと皆に分かるように統一感を出したほうがいいよね? 統一だと何がいいかな? あ! そうだ! 私とイザベラちゃんはお揃いのマントを羽織ってるから、皆もお揃いにしちゃおう! 都合よく、皆もマントを羽織ってるし、素材はあるからね!

 ということで、私の前に横一列に並んでもらった。


「いくよ~! クリエイト!」


 マントが一斉に輝いて変化した。これでよし!


「嬢ちゃん……」

「え? 何?」

「「「ピンクのマントはやめてください……」」」



 ☆ ☆ ☆



 夜も更けて皆が寝た後、私はこっそりと部屋を抜け出して裏庭に来た。正面には裏門の通用口と高さが20メートルくらいある城壁が見える。空はお月様が出てて綺麗だね。


 さて、ここに来た目的は、秘密特訓!

 クックさんが、力の制御を覚えましょうって言ってたしね!


「こんばんは~」


 私が見張りの兵士さんに挨拶したら、凄い笑顔で敬礼してきた。

 う~ん。秘密にしときたいけど、所々に見張りの兵士さんが立っていて、無人になるところが無いんだよね。裏門は1人しか居ないから、まぁ、いいかな。


「ファイヤ!」


 手の平から小さな火が出て、夜の暗闇を明るく照らした。手の周りだけ……。完全に周りにある篝火にも負けてる。

 そもそも、ファイヤって攻撃魔法であって、明るく照らす魔法じゃないんだよね。

 こんなのでも、後ろに居る兵士さんからパチパチと拍手されたよ。

 ふっふっふ。もっとカッコイイところを見せちゃおう!


「浮遊魔力変換吸収!」


 これは名前の通り、周りの浮遊魔力を私の魔力に変換できるらしい。ただ、どこまでの範囲と量を吸収できるか分からないんだよね。今はとりあえず手の周りだけのイメージで使ったけど。

 ギルドカードで確認してみる。


 魔力:6400


 お~! 凄い! 手の周りだけでもこんなに魔力があるんだね!


 と、喜んでると、体中から黒い稲妻が出始めちゃった! これあれだ! 冒険者登録した時と、クックさんを召喚しちゃったときの現象!

 どうしよどうしよ! やばいよね!? そうだ! 放出しちゃえば収まるかな!?


 右手を突き出して、手の平に魔力を集中させるイメージで、一気に放つ!

 ……うん。球体になった魔力の塊が、黒い稲妻を放ちながら城壁に向かって飛んでいったよ。

 当然、結果は……。


 ドッゴォォォン! ジュウゥゥゥ!


 城壁を吹き飛ばして、周りを赤く溶かしちゃった。

 私はクルリと後ろを向いて、笑顔のまま顔色が真っ白になってる兵士さんに、人差し指を口に当てて、秘密だよ♪ とお願いした。


「敵襲か! 見張りは何をやっていた!」


 兵士詰所から皆が飛び出してきた!


「いや、待て! これは外からじゃなく、内から破壊されてるぞ」

「誰が……て、サクヤ様がここに居る?」


 皆が私を一斉に見てきた。

 やばい! 逃げ遅れちゃった!

 

「私じゃない――」


 よ、と、最後まで言い終わる前に、肩に大きな手が置かれた。

 ビクッっとして上を向いたら、月が見えてた空はいつの間にか雲に覆われて、雷が鳴り始めてた。


 ゴロゴロゴロ……ド~ン!


「褒めたすぐ後でこれか……」


 恐る恐る振り返ると、稲妻に照らされて、怒気のオーラを鬼の形に変化させたラグルさんが居ました。



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