第88話:1週間の活動結果と……花火?
ラグルさんの雷が落ちて2日後、フェルド関係者全員でフェルド王国に帰ることになった。
本当は1日前に帰る予定だったんだけど、私がラグルさんに怒られたショックで寝込んじゃったために、出発が延期されたんだよね。
「クックック。ショックじゃなくて、夜更かしして寝坊したのが原因でしょう? お子ちゃまなんだから夜更かしはダメですよ」
クックさんはヤレヤレと、首を振ってくるけど、あの後ラグルさんの説教が朝日が昇るまで続いたんだよ? とてもじゃないけど、その日に出発なんてムリでしょ?
それにショックを受けたのは本当なんだよ? 私1人しか居ないときはスキルも魔法も使っちゃダメって言われたし……。
で、今の私の状況……。右にラグルさん、左にクックさんで、両手とも2人にしっかりと手を繋がれてる。
……ワタシ、そんなに危険人物ですか?
そんな状態で、私達は西地区の市街地の端にある防壁の上に立っている。
防壁の上は幅が5メートルくらいの通路になっていて、等間隔で迎撃用の弓矢が並べられていた。
王都をこれで防衛してたんだね。結局、この防壁は突破されちゃったけど……。
これからここに残って防衛してくれる皆に勇気をあげたい!
で、私が思いついたのが、魔法で花火を打ち上げよう! というものだった。
花火を見ようと皆が防壁の上に集まって、私に注目してる。
ちょっと緊張するな~。
「じゃ~、クックさん、リンク!」
「はい。リンク」
お互いの体が輝いてリンクで繋がった。
「で、サクヤちゃんがやりたいって言った花火って何なんだ?」
「え? ラグルさん花火知らないの?」
「知らないな」
あれ? 一般庶民は知らないのかな? この世界の火薬とかって高いのかな? 貴族のイザベラちゃんなら知ってるかな?
「イザベラちゃんは……」
「残念ですが、ご存知ありませんわ」
「そうなんだ」
この世界には花火っていうものが存在しないみたいだね。
ふっふっふ……。だったら張り切って皆に初めての花火を見せちゃうよ!
『防衛』のために残ってくれる皆に花火を見てもらって、『永遠』の勇気を与えちゃうもんね!
「いくよ~! クリエイト! はな……」
ちょっと待って。花火って英語で何て言うの? 花と火を分ける? でも爆発もするよね?
爆発……ボム?
「えっと……フラワーボム!」
「「「……これが花火か? 何か防壁の外の草原が花畑になったが?」」」
草原に折り紙で作られたチューリップみたいな花が、いろんな色で咲き誇ってた。
……どして? あ、やっぱり花と火で正解だったのかな?
「今のなし! えっと……ファイヤーフラワー!」
と、唱えたら、今度は防壁に置かれてた弓矢が輝いて、ひまわりみたいな背の高い花に変化した。
……どうしてこうなるんだろ?
「おい! あそこ! 魔物が5匹! アーマードブルが突っ込んでくるぞ!」
「野生の魔物か!? サクヤ様の魔法に反応して襲ってきたのか? とにかく迎撃!」
と、皆が防壁にある階段に走り出そうとするのと、鎧を着た牛みたいな魔物が魔法で出来た花畑に侵入するのが同時だった。
で、なにが起こったかというと……。魔物が花畑にある花を踏んだ瞬間。
ドォォォォン!
花を踏んだ魔物が爆発で木っ端微塵になって吹き飛んだよ。
「「「は?」」」
皆が爆発の跡を防壁から身を乗り出す勢いで覗き込んだ後、首をグルンと向けて私を見てきた。
うん。間違いなく私の魔法だね。どうしてこうなったか、まだ分かんないけど。
「おい! 今度は空だ! ガルーダが上空から突っ込んで来る! クソ! 迎撃用の弓矢が全部花になってやがる!」
「あ、ごめ……」
謝ろうとしたら、その花が一斉にガルーダのほうにグルンと向きを変えて、花の部分からエネルギーを吸収するように光の粒子が集まって、火の玉を撃ち出した。
一斉に放たれた火の玉が大鷲のようなガルーダに次々と命中。
ガルーダは火に包まれて墜落。光になって消えていった。
……あ、フラワーボムとファイヤーフラワー。つまりそういうことだよね?
「……クックック。サクヤ様。クリエイトでいったい何を作り出したんですか? あれが花火ですか?」
「……魔法説明見たほうが皆が納得すると思うよ? てことで、教えて! ギルドカード!」
フラワーボム:設置型防衛トラップ。敵と認識されたものが踏むと作動。爆発で倒しちゃうぞ!
ファイヤーフラワー:設置型迎撃防衛トラップ。射程距離に入った敵を追尾型ファイヤで自動迎撃。逃げても追いかけちゃうよ!
注意。自動魔力吸収により、フラワーボムは即座に再生、ファイヤーフラワーも連続発射が可能である。これにより、永久設置型トラップになった。
「……まぁ、あれだ。サクヤちゃんのおかげで強固な防衛線が出来上がったから、残った者でも余裕で守れるくらい安全になった」
「クックック……。さぁ、安心してフェルド王国に帰りましょう」
「ちょっ! 待って! 本物の花火はあんなのじゃないんだよ! こう……空に火が飛んでいってね、上空でど~~~んて爆発して」
「そんな危ないことをしようと思うんじゃない! 何度言えば分かるんだ!」
「……はい」
しょぼ~んだよ。
爆発っていう説明で危険認定されちゃったよ。本当はその爆発の後で花のように広がる色が綺麗なのにね。
落ち込んで防壁の上から王都を眺めた。
1週間足らずで、いろいろなことがあったな~。
東地区壊滅でしょ~、西地区壊滅でしょ~、王様討ち取り事件でしょ~、秘密特訓で城壁破壊でしょ~……。
……あ、あれ? 私、怒られて当たり前なことしかしてなくない?
☆ ☆ ☆
「プレリア様」
「おお。あんまんか」
2人だけの密会の部屋。この部屋は結界に閉ざされて、外部からの干渉を一切受け付けないようになっている。
その部屋の椅子に座っていた魔王の前に、あんまんが跪いた。
「あの街に配置された花畑ですが、野生の魔物を使い突破を試みましたが、ことごとく失敗しました」
「うむ。あの花畑が出来てから1週間か。やっかいよのう」
「がはは。爆発した花も即座に再生していきますからな。空からもあの飛んでくるファイヤで近づくことさえ出来ませぬ」
「我が半身ながら、感心するしかないのぉ」
「……」
あんまんは目の前の魔王を見ながら溜息をついた。
どうしてこちらの魔王は年老いたオヤジで、向こうの魔王は可愛い女の子なのか。
元は同一人物だったはずなのに、この差はなんだろうか?
「スパイとして潜り込ませたゴブリンはどうなっている?」
「先ほど報告を聞きに行ってきました。いや~、街に入るのに苦労しましたよ。敵と認識されないように、平民に変装して行ったのですが、ちょっとでも敵意を覗かせると、防壁の上の花がこちらを向きますからな!」
「……潜入は出来たのだな?」
「ええ。街での活動を記録してますから、こちらをご覧ください」
取り出した水晶に手をかざすと、映像が浮かび上がってきた。
街を建て直してるのだろうか? ゴブリンが人間の兵士の指示で木材を運び、あんまんが壊れた家屋を解体している。
太陽が真上に来たら昼食なようで、人間達と輪を作り、配給された昼食を談笑しながら食べている。
「いや~、いい汗かいた後の飯は美味いですな!」
「……善の魔王の少女が写ってないが?」
「花畑が出来てすぐ後に、自分達の拠点がある国に帰ったようですな」
「……は? スパイのゴブリンは……どうしてまだ街にいるのだ?」
「サクヤという少女に着いていけば、魔物との戦闘は不可避でしょう。戦闘があるのが怖くて、この街に残ったようですな。街の復興を頑張るとやる気を漲らせていましたよ! がはは!」
「スパイの意味よ!?」




