第41話:食べ物の恨みは恐ろしい?
村へ入ると、私達が到着する前に戦っていた人達が地面に横たわっていた。
周囲の地面は赤く染まっている。
その横で泣いている小さな子供たち。戦っていたのは、この子達のお父さんなのかな……。
私は側まで駆け寄った。
そこには、ギルドで腕相撲してたディックさんの姿が……。
まだ生きてるみたいだけど……。みんな左肩から右脇腹にかけて斬られていたり、斧で腹をえぐられていたり……。
「リリー、ヒールは?」
「かけてるけど回復しきれない!」
リリーがヒールをかけると、かけられた人の体が一瞬だけ青く輝くけど、傷を塞ぎきれてない。
刻一刻と生命が失われていきそう……。
そんなとき、私の背負ってたリュックからプニプニさんが飛び出してきた!
プニプニさんは的確に一番危ない人に覆い被さった。
傷はどんどん塞がっていったけど、人数が多すぎるよ! あとの人が間に合わない!
「がんばれ! プニプニさん! がんばれ! リリー!」
「「「がんばれ~がんばれ~」」」
泣いて見ていた子達も応援をはじめたよ!
「「「がんばれ~~~!」」」
私と子供達の声が合わさって響いたとき、プニプニさんとリリーの体が光り輝いた。
エール発動!
プニプニさんの体が大きく膨れ上がって、倒れてる人達と同じ数に分裂。
そして倒れてる人達に覆い被さっていった。
「きたきたきた~! 力が溢れてきたよ、サクヤっち! 新たな魔法! エクステント・ギガヒール!」
リリーが魔法を唱えると、倒れてる人が全員入る大きい魔法陣が地面に描かれて、プニプニさんが青く輝いた。
プニプニさんの治癒力とリリーの回復魔法の相乗効果で、傷が瞬く間に塞がっていった。
しばらくすると、ふらついているけど、みんな起き上がってきた。
子供達が起き上がってきた人に抱きついて大泣きしてる。
よかったね……。
一段落してからディックさんに話を聞くと、村の西にある森林地帯に魔柱石が発見されて警戒してたけど、突然赤く光出して、そこからオークが溢れ出してきたらしいんだよね。
そして何と、ディックさんはこの村の出身者で、奥さんと娘さんがいたよ!
ビックリしたよ。
子供達が私達の前に歩いてきた。
一番大きい7歳くらいの女の子が、一歩前に出てきた。
この子がディックさんの娘さんだよ。名前はマリーちゃん。
「お姉ちゃん。お父さんを助けてくれてありがとう!」
「「「ありがと~!」」」
うわ! 面と向かって言われると照れちゃうね!
子供達が駆け寄ってきて! ……リリーに抱きついた!
『わわ!』とか言いながら押し倒されるリリー。
あっるぇ~? 私は? 私も頑張ったよね……応援。
「ちょっと待ちんしゃい。みんなのお父さんが助かったのは、あそこに寂しそうにポツ~ンと立っているサクヤっちだよ」
「サクヤっち?」
「うん。私たちのリーダーで、勇者なんだよね~。サクヤっちの応援があったから、私が凄い魔法使えて、助けられたんだよ」
「勇者様だ~! ほんとにいたんだね!」
今度は私に向かってきて抱きついてきた!
なんて落ち着きのない子達なんだろ! そして元気!
「私は勇者のサクヤっていいます。でもね、この村を守るために、命がけで戦ってくれていた人たち全員が、この村の勇者なんだよ」
うん! いいこと言ったよ私! 本当のことだもんね!
「うん! お父ちゃんは勇者だね! でもね? お父ちゃんの体は臭いよ? 足も。サクヤお姉ちゃんみたいにいい匂いだったらよかったな~」
「そうだよね~。サクヤお姉ちゃんがお父さんだったらよかったのに」
あれ? どうしてそうなるのかな? ここは後ろで笑っているお父さん達の胸に飛び込んでいって、感動の場面になるんじゃないの?
そしてディックさん……お風呂は毎日入ろうよ。
「あのね、私は女の子だから、お父さんにはなれないかな~」
「お姉様……」
うわ! 背中にゾクゾクと悪寒が走ったよ!
声がした後ろを向くと、なんだか頬を赤らめたイザベラちゃんが立っていた。
こういうときはね、イヤな予感しかしないんだよ。
「何かな? イザベラちゃん?」
「お姉様! 婿になって私と子供を~」
「ねぇ! 話聞いてたかな!? 私は女だから婿にもお父さんにもなれないんだってば!」
そう叫びながら私はその場から逃げ出した!
ザザザー! しかし回り込まれた!
「お姉様……」
「サクヤ様……」
『ボス……』
イザベラちゃんは仲間を呼んだ! クックさんとモフモフさんが仲間に加わった!
「クックさん先輩……。サクヤっちは恋のライバル決定!」
「ちょ!?」
話をこじらせないで~!
周りの人たちも、四角関係だの、修羅場だの、勇者様はモテモテだね~とか言って、盛り上がってるし!
「まさかと思うけど、まさかクックさんとモフモフさんも……」
「いえ。腹が減りましたと言いにきたのですよ。クックック」
『同じく』
だぁ! と、周りの人たちがずっこけたよ!
空気の読めない2人ナイスだよ!
「そうだね! 荷台のところに戻ってご飯にしようか!」
こうして、私はイザベラちゃんからのプロポーズ? を回避することに成功したよ!
私達は呆然と立ち尽くしている。
散乱した鍋や食器たち。
そして、食べ荒らされた作りかけのスープ……。
設置型の結界は使用者が距離をあけると効力を失うらしい。
で、結界が消えて何者かに食べ荒らされちゃった。
「許さんぞオーク共! 本気で怒らせよって~~~!」
クックさんがフルフェイスモードになって、隠していた魔力を全開にした。
『ウオォォォォン!』
モフモフさんの体からオーラが立ち昇って、そのオーラは巨大な狼の形になった。
まだ見たことなかったフェンリル波動かな?
「クックック。モフモフさん、オーク共の臭いは覚えてますよね?」
『もちろんだ! あの野郎共……ボスの料理を台無しにしてくれたこと、後悔するがいい!』
「ちょっと! まだオークと決まったわけじゃないよ!」
「行きますよ! モフモフさん!」
『おう!』
凄い速さで行っちゃったよ。
クックさんは高所恐怖症のはずなのに、空高く飛んで、モフモフさんは最初から光の疾風を全力で発動して……。
2人ともブチキレちゃってるよ……。
料理なんてまた作り直したらいいだけなのに。
「お姉様。どのみちオーク達は退治しなくてはいけませんし、魔柱石も放っておけませんし、これでよろしんじゃなくて?」
「だよね~。クックさん先輩も珍しく本気になってるし。簡単に勝っちゃうでしょ~ね」
「と、とにかく私達もオークが逃げていった方向に向かうよ!」
どうして私がこんなに焦ってるのかって?
そんなの決まってるでしょ! 勝ち負けじゃなくて、本気になって理性を失ったクックさんとモフモフさんを想像してみてよ。
森が消滅して、へたしたら地形が変わっちゃうよ?
私達は急いで2人の後を追いかけたよ!
年内最後の投稿です。
再会は1月3日くらいかな?
みなさん来年もよいお年を~。^^ノシ




