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第25話:魔法道具の使い方っていまいち分かんないよね?

 翌日。

 洞窟攻略は決行された。

 集まった冒険者さん達は、私を入れて40人。そこにクックさんとモフモフさんを加えると42人かな。

 作戦は、4~5名を1班として、それを8班作って、まずは1班が進み、分岐路に到達したらその班は左右警戒して2班と交代。2班が先の通路に進んで、分岐路に到達したら……て、その繰り返しで、最後に私、ラグルさん、クックさん、モフモフさんの最終班が魔柱石に到達するっていうもの。

 魔柱石の上書きか破壊でクエストクリアになる。


 問題は、私のエールの使いどころだよね。

 身体能力と魔力のアップは効果時間内で持続するけど、全回復は最初の発動時だけだし。

 そして、その後に来るクールタイム。


 魔柱石は絶対にオーガが守っていると思うし、どうしようかな……。


 そんなことを考えてると、イザベラちゃんが駆け寄ってきた。

 もしかして、参加するつもり?


「イザベラちゃん、どうしたの? 洞窟の中は魔柱石の魔力で溢れてるから、魔法は効かないよ?」

「違いますわお姉様。わざわざ死にに行くようなことはしませんわ」

「え……えっと……」


 私は今からそこに行くんだけど。


「お姉様。これを」


 渡されたのは、銀のようなもので出来たブレスレット。

 細かい細工がされていて、真ん中に青い宝石がついていた。


「それはマジックアイテムで、お姉様の危機に反応して、自動でバリアを張ってくれますわ。防具が装備できなくても、アクセサリーなら大丈夫だと思いまして」

「ありがとう! イザベラちゃん!」

「どういたしましてですわ。無事に帰ってきてくださいまし!」


 早速、左手首に装備する。

 うん。重さも感じない。

 また一歩、勇者に近づいた!

 私の現在の装備! 木の棒! 練習着! 水色ホットパンツ! 借り物の銀のブレスレット! 防具一切無し!

 ……悲しいな~。


 気を取り直して、準備を済ませて、洞窟の入り口で待っていたラグルさん達と合流した。


「よし。俺達の配置だが。前衛にクックさん。中衛に俺。サクヤちゃんの護衛でモフモフさんでいいか」

「クックック。少し待たれよ」

「どうした?」

「私は魔導師タイプでして、前衛は向いてないのですよ」

「その鎧と盾はいったい何の意味が!?」


 ラグルさんにツッコミ先に言われた~~~!


「言わば皮膚の一部でしょうか? それに、今までこのクックさんが近接戦闘しているのを見たことがありますか? クックック」

「「あ、ないな~」」


 北門戦の時も、オーガのところに行ったはずがゴブリンに邪魔されてすぐに帰ってきたし、最後に使ったのは魔法だし……。


「ま……まぁ、だったら前衛が俺、中衛にモフモフさん、サクヤちゃんの護衛にクックさんでいくぞ」

「クックック。それでいきましょう」

「は……はい」


 最大戦力と見られてたクックさんが、実は魔導師タイプでした! て、魔法が効かない洞窟内の戦闘は大丈夫なの? 私たち最強班はどうなっちゃうの?




 そんなこんなで、洞窟最深部に辿り着きました!

 え? ここまでの道中? 見てたよ、冒険者さん達の背中を。

 だって、私達の8班は、最後尾からだったし、最深部に辿り着くまで無傷でっていうのが最終目標だったし?

 1~7班の人たちがゴブリンを倒してここまで到達したんだけど……。

 声は聞こえてたから、音声ダイジェストでどうぞ!


「いきなり数が多いぞ!」

「2班そこを右だ! 1班はここに留まって前方の通路を警戒!」

「ぐあ! 負傷した! だがまだ行ける! 俺の帰りを待ってる息子がいるんだ! こんなところで死ねるか!」


 幸いなことにフラグは建たなかったよ。


 カキーン! キーン! カーン!


「この道を左だ! 7班は6班と交代! あと少しだ!」

「よし! 最深部入り口が見えた! 俺達は後方を警戒しておく! あとは頼んだぞ!」


 こんな感じだったかな。

 後は私達で勝敗が決まるね……。




 ラグルさんが最深部、ホールになっている中の様子を見る。


「オーガが1匹。今まで見たオーガよりも大きいぞ……」

「向こうも最大戦力を防衛に回してきましたか……クックック」

「だがオーガが1匹だけだ。何とかなるか。1、2、3で閃光弾を投げるから、そのタイミングで突っ込むぞ」


 みんなで頷きあう。


「よし! 1……」

「とう!」

「「え?」」


 何が起きたかと言うと、クックさんが『1』で突っ込んで行っちゃった!

 もう作戦や指揮なんてあったもんじゃないよ!


「ぐは!」


 オーガの左腕の横薙ぎで吹き飛ばされたクックさんが、右側の壁にクレーターを作ってめり込んじゃった!

 

「クックック……どうして後衛の私が真っ先にダメージを負ってるのでしょう? グフ……」

「あんたが突っ込んだからだよ!」

「カウントダウンと勘違いしましたよ」

「「え~~~」」


 ラグルさんはちゃんと1,2,3て言ったのに。


「しかし……やはりオーガは強化されてるみたいですね。クックック」


 うん。オーガの大きさを見れば誰だって分かるね。


「少し回復させてもらいますね」


 そう言うと、クックさんは前のめりに倒れ込んじゃった。

 戦闘開始早々にこっちの戦力が1つ減った。……始まっても無かったけど。




 幸いに、オーガは体が大きくなった分、動きは鈍かった。

 振り下ろされた大鉈をラグルさんは紙一重で左に避けて、その隙をついて剣を脇腹に切りつけた。

 でも、硬い皮膚で弾かれる。


「復活! クックック」


 意外と回復が早かった。


「援護しましょう。アイス・ランス!」


 氷で出来た槍がオーガ目掛けて飛んでいった。

 でも、やっぱりオーガの周囲にバリアが出来て、掻き消されちゃう。


「やはり物理でしかダメージを与えられませんね」


 そう言うと、クックさんも素手でオーガに突撃していった。


「モフモフさん! スピードでオーガを撹乱して!」

「ガオウ!」

 

 モフモフさんがオーガの足元を駆け抜けて、そのまま通り抜けて壁を蹴って、反対側に回り込み、また足元を駆け抜ける。

 オーガがそれでよろけた。

 撹乱は成功かな? って思ったとき、オーガが大鉈を大きく振り上げて、一気に振り下ろした。

 地面が爆発したように弾け飛んで、衝撃波が襲ってきた。

 私は入り口の壁に隠れてて大丈夫だったけど、クックさんとモフモフさんがホールの壁まで吹き飛ばされて、ラグルさんは盾を構えて踏ん張って耐えたけど、盾は吹き飛ばされて、その場で片膝を着いてしまっていた。

 オーガがゆっくりと大鉈を地面から引き抜いている。


 ラグルさんが危ない! エールを発動するのは今? と、思ったとき、左腕につけられてるブレスレットに目が行った。

 守ってくれるって言ってたよね? どうやったら発動するんだったかな?

 考えてる時間も無かったから、とりあえずラグルさんに向けて投げてみた!


 力が入りすぎると、狙ったところに飛んでいかないよね? うん、真上に飛んで行ったよ。

 そして何故か、投げ損じたときほど、いつもよりも勢い良く飛ぶよね?

 ブレスレットが天井で、カーン、カーン、カーンと3回くらい跳ねてから落ちてきて。


「いっつ!」


 コ~~ン! て、音を響かせて、ラグルさんの後頭部に直撃したよ。


 そして私は見た。天井に突き出てる先の尖った鍾乳石? っていうのかな。その1番大きい鍾乳石の真ん中で、横に亀裂が走っていくのを。

 ブレスレットが当たってヒビが入ったのかな? あれ絶対落ちて来るよ……。




 ラグルさんが痛さで頭を手で押さえる。と同時に、大鉈が振り下ろされて……。

 その瞬間、ブレスレットの効果が発動してバリアが展開された。

 そこで思い出しちゃった。

 『危機に反応して、自動でバリアを張って』……。最後に触れたラグルさんに持ち主が移ったってことかな?


 バリアは大鉈の攻撃を弾いたけど、力に押されてラグルさんも後方に飛ばされた。


「ぐがぁぁぁぁ!」


 オーガがその場で上を向いて仰け反って、勝利の雄叫び。

 でもね、大声出したら……。


 パキン! と、真ん中で割れた鍾乳石がオーガの真上に落ちてきて、尖った先端が、大口を開けていた口から入って胴体まで貫いて地面に突き刺さって、オーガは光の粒子となって消滅していった。


「「は?」」


 うん。みんなの反応はそうだろうね。

 私は一部始終を見てたから知ってる。この状況を作りだしたのは、私だし……。


「何が起きたかさっぱり分からんが……俺にこのブレスレットを投げてくれたのはナイス判断だ!」


 ラグルさんが親指を立てながら言ってきて、私も苦笑いで親指を立てて答えた。


「うん……頑張ったよ?」


 


 その後、魔柱石に私の想いを流し込み、上書きに成功して、洞窟を出た。


「お姉様! お帰りなさいまし!」

「ただいま~」

「あのブレスレットは役にたちまして?」

「うん……これ……」


 天井に何回も当たって、元の形の無いブレスレットを渡した。


「まぁ! こんなにボロボロになって、宝石にヒビまで!」

「イザベラちゃん。ごめんね。投げたら……」

「こんなになるまでお姉様を守ってくださったのですね!」


 あ……あれ? そういう話になるの?


「お姉様の命を救った伝説のアイテムとして家宝にいたしますわ!」

「あ……あのね、修理して今度こそ『正しい使い方で』使ってあげたほうが、このアイテムさんも喜ぶとおもうよ?」

「我が家の家宝がまた1つ増えましたわ~~~!」

「ね! ちゃんと説明するから」


 話を聞いて~~~!


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