新しい街
グリービロッド。それはサイラルから東へ進んだところにあり、これから向かう場所である。
サイラルでのヘカテーとの闘いはまるで何事もなかったかのようだ。街には人が溢れ、たわいもない話をしながら歩き、買い物をしている。実際この場所での戦闘はほとんど無かったのだからそれが当たり前の光景なのだろう。
「もう準備はいいのかい?街を観光してもいいんだよ?」
支度を整えたトトを見て、ガルエールは笑いながら言った。しかし命を狙われた身としては、今すぐにこの街を離れたいし、そもそもそういう気分にはなれない。そんなお金もない。
そんな感じで、2人は馬車乗り場へ向かった。
馬車の中では2人はあまり話をしなかった。ガルエールが気をつかってくれたのか、あえて何も話さなかった。
グリービロッドには早朝についた。極めて高い建物は無く、全体的に大きく広い街だった。治安も良さそうで、なんだか安心できるような雰囲気があった。
「砂を隠すなら砂漠。人に紛れるなら広い街。僕ら英雄はあまり人に目立ちたくないものでね。どうにか気配を殺してこの間違えたで少しの間過ごしていたんだ。もちろん家もあるから、そこでしばらく過ごそう。」
「ありがとう」
「礼には及ばないさ。僕は勝手に君を助けて連れ出しているんだから。」
そう言ってガルエールは歩き出す。
少ししてガルエールが立ち止まる。家に着いたのかと思い建物を見上げると、そこは家というより…。
「まず、すこし服が汚れているから、新しい服でも買うといいよ。なんでも好きな服を買ってくれよ。」
ーーーーーーーーーへぇ、なかなか似合うじゃないか。
結局服はガルエールが決めた。人のお金で服を買ってもらうなんて、それも英雄から。申し訳なくてトトには選ぶことができなかった。
「この服1式、買わせてくれ。」
店の店主のような人はは丁寧な接客で、それはもう店主という言葉が似合う対応だった。値段を提示され、ガルエールが出したのは現金だった。
「ガル……」
そう言いかけたところでガルエールに、しーっと言われ、口を閉じる。
外に出てからガルエールはトトの疑問に答えた。
「なんでお金を支払ったか、だろう?宿屋の時は、宿屋には宿泊客の情報わ渡してはいけないという決まりがあるからね。あれを使って英雄だとバレても構わなかった。でも普通の店だとわけが違うんだ。」
「でも、英雄となれば顔を見られたら……」
「今僕が着ているこの服、実は異能道具でね。認識阻止の異能効果があって顔を見ても、どこかで見た顔、程度にしか思われないんだ。見たあとはすぐに顔を忘れてしまう。僕にとっては便利すぎるよ。」
なるほど。だからすれ違う人が1人もガルエールに騒がないわけだ。
「まあ安心していい。僕は現金もそれなりに持っているんだ。普段使わないしね。」
「ありがとうございました。いつか必ずお詫びを……」
「そんなのはいいよ。僕が勝手に連れて来たんだから」
ガルエールはそう言って笑う。
そう、ガルエールは笑うのだ。そしてトトは気付く。しばらく笑っていない事に。これだけ不幸が起きていて、笑うのもおかしいが、不幸過ぎる。村で家族と暮らしていた時の事が懐かしい。そんなに時間は経っていないはずなのに、何故か記憶がぼんやりする。それだけ混乱しているのだろう。
「今日はこの街を観光するといい。いい気分転換になると思うよ。この街は治安がいいから何も起こらないと思うけど、どうする?」
確かに今までちゃんと街を観光したことが無い。興味はかなりある。
「観光…してきます」
「よし!そうと決まれば、ほらこれお金ね。たいていの物は買える分あるから、自由に買ってくるといいよ」
そう言ってガルエールはお金でパンパンになった手持ち袋を渡す。
「こんなに……」
その圧倒的な金額が眩しい。こんな大金を持ったのは初めてだ。
「自由に使ってくれよ。そのお金は今日から君のものだ。気にしないでくれ、僕が勝手にあげたものだ。」
その後も返そうとしたが、強制的に渡され、家までの道のりと地図を渡されてガルエールは去ってしまった。、
「あー。何を買おう……。」
実際欲しいものはいくらでもあるのだが、いざ、大金を渡されると使い道に迷ってしまう。
「とりあえず、ご飯かな。」
トトはすぐ側にあったレストランへと足を運んだ。




