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淡い名札と、海を渡る団扇

作者:乾為天女
最新エピソード掲載日:2026/05/15
 七月上旬、尾路町の交通案内所で働く祐は、取り壊し予定の淡名渡船待合所で、色褪せた布名札の束を見つける。それは、かつて淡名島から本土の学校へ船で通った子どもたちが首に下げていた通学札だった。紙修繕店「潮紙堂」の文香は、短い言葉で「捨てないで」と告げ、祐は名札の持ち主を一人ずつ探し始める。
 淡名島の蜜柑畑、今治の古い縫い目、鞆の浦の潮風、倉敷の畳の匂い、小豆島の紙包み、下関と門司港に残る手紙。名札を返す旅は、せとうちの港や島をつなぎながら、受け取る人、待合所に残したい人、そっとしておいてほしい人の思いに触れていく。
 文香もまた、幼い頃に母・八重を渡船で見送り、自分の名札を待合所に裏返しで置いたまま、大人になっていた。母はなぜ戻らなかったのか。封筒、団扇、蝶の標本箱、古い写真に残された縫い目が、文香の知らなかった母の姿を少しずつ浮かび上がらせる。
 だが、待合所を残すには思い出だけでは足りない。暑さ、雨風、床板の傷み、名前の公開範囲、費用、鍵の管理。祐たちは笑いと失敗を重ねながら、海辺の小さな待合所を、誰かの名前を乱暴に扱わない場所へ変えていく。
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