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第64話 成長の証を見せて 【誓いの輝剣 Side】

【Side 純情剣聖】



「ふぅっ、終わりっと」


 クラーケンを倒し終わって、動かないのを確認する。たまに死んだふりとかする魔獣がいるからね。警戒しないと。

 新しいスタイルはボクに凄く馴染んだ。まだ《再跳躍(リ・バンド)》には慣れてないけど、余力は残せたから及第点かな。


「クラーケンは完全に倒した。さて、二人は……」


 クラーケンの沈黙を確認したボクは、フレイとマリアの姿を探す。


「っと、いた」


 クラーケンと戦っていた場所からそう遠くないところで戦っているのを見つけたのは――


「《カウンターバースト》!」


 ヒレで空を飛ぶA級魔獣、トビザメの突進を弾き返したマリアだった。

 助けは要らないだろう。というか、横入りしたら邪魔になりそうだね。

 

「――っふぅ……!」


 息をつくマリア。その周囲を、トビザメが猛烈な速度で飛び〝泳ぐ〟。

 時にヒレで空中を滑空して、さらに水の魔法で作った「空に浮かぶ水の路」を使って加速する。

 馬よりも速い速度で突進し、硬い表皮と、強靭な牙と顎で獲物を食い千切る。

 その凶暴性の矛先を、今はマリアに向けている。

 対するマリアは左手に盾を、右手に刃が蛇腹のように連なった連結剣を構えていた。


「ギュンギュン動かないでほしいな〜。お姉さんはエルミーほど速くないんだから――」


 そんなことを言いつつ……次の瞬間。


「待ち構えるしかできないじゃない。《爆地雷(ボルトマイン)》で、ね」


 盾を避けて背後から突っ込んだトビザメが、仕掛けられていた罠……弾ける雷に巻き込まれた。

 盾と剣をわざとらしく構えて、背後に誘い込んだんだ!


「知能があったら、受けた痛みは避けたくなるわよね。それじゃあ――」


 そういえば、レイナーレがマリアにアドバイスしたことは大したことは無かった。

 ボクの時みたいに何かを与えるというより、視点を広げさせるような――


『マリア、お前はスキルを多重に発動できるのが強みだろう。攻撃スキルを重ねて使えるなら、強化スキルも使ってしまえ』


「――《バスターソウル・火雷(ブレイズボルト)》」 


 マリアの全身を黄色い魔力と、〝赤い〟魔力が迸る。

《魔戦士》の強化スキル《バスターソウル》は、属性ごとに性質の違う強化を身に纏うって、マリアから聞いたことがある。

 ……その強みは重なるって、レイナーレは言ってたっけ。


『属性毎に変わる強化の特色。マリアは《雷属性魔法》が強力すぎて他の属性はあまり使っていないのだろうが……あまり傾倒するな。お前には、豊富な魔法の才能がある』


 雷属性なら特に瞬発力が伸びて打撃に雷撃が加わる。なら火属性は――


「火属性で得られる特大に強化されるパワーを、雷属性の速度で撃ち出す――!」


 振り被った普通の剣モードの連結剣に、マリアの体から魔力が移り流れて。

 雷と炎の属性を纏った剣撃が、フラフラの魔獣に襲いかかった。


「――《エレメント・バスター》ッッッ!」


 受けたトビザメは、熱と電撃が織りなす斬撃に耐えきれず……力なく凍った海に倒れ伏した。


「ふぅ〜、一段落ねっ!」

「〜〜〜っ、やったねマリア! 修行の成果出てたじゃん!」

「エルミー! 無事だったのね、怪我も無さそうでよかったわ」

「もちろん。ボクたち、あの《始祖》に鍛えられたんだよ? A級なんかに負けてられないからね!」


 ボクは抱きつく勢いで戦い終えたマリアに駆け寄った。

 あの……レイナーレによるシゴキとしか言えない修行を乗り越えた成果が如実に表れている。

 確実に強くなれていることがわかって、二人で笑い合った。


「あとはフレイだけだけど……ま、心配も加勢もいらないよね」

「そうね、だって――」


 さっきから轟音が鳴り響いている方向を見る。


「レイナーレさんとの修行で一番強くなったのは……たぶん、姉さんだもの」


 そこには、頑強な頭部装甲が傷だらけになったフォルトレスホエールと、力強くハルバードを振り回すフレイがいた。



 ・ ・ ・ ・ ・



 他の二人に比べてレイナーレがフレイに教えたことは少ない。


『お前に教えることは一つだけだ』


「えぇ〜っ? レイちゃんのケチ〜!」


『こら、抱きつくなよ。接近戦のテクニックはもう十分だろう、フレイは。あとは鍛えて経験を積めば強くなれるさ』


『フレイ、オレはお前より強かった《付与士(エンチャンター)》を知っている。ま、前線に出るタイプではなかったがな』


「サポート特化ってことかしら?」


 今まで会った《付与士(同業者)》は後ろにいてばかりで、継続的に支援することはできない者が多かった。

 ゆえにフレイは戦いだけでなく、サポートでも自分は優れていると自負していた。……が。


『ああ。だが、《付与士》としては明らかにお前より格上だ』


「――っ!?」


『《付与士》というのは難しいジョブだな。一つの《付与》の強さは決まっているから《重付》で重ねがけするしか強化倍率が上がらない』


「……そうね」


『ソイツは戦えなかったが、その壁を破るために一つのスキルを見出した。それを使えるようになれば、上のステージに登れるだろう』



『フレイ、お前に教えるのは一つだけ。オレが知っている、お前より()()()()()付与士(エンチャンター)》……ソイツが使っていたスキルだ』


「スキル……? 新しい付与じゃないの?」


『あぁ、《重付》スキルと同じようなものだ。その《付与士(エンチャンター)》が使っていた、そのスキルは――』


「――《連結(コネクト)》」


 今、一人の《付与士》がステージを一段上がる。




【Side シスコン双子(タチ姉)】



「硬ったぁいわよね、貴方」


 わたしはハルバードを振り回しつつ、空を泳ぐように滑空するクジラを見上げた。地面に落ちるたびに尾で氷を叩き、宙に浮かび直す要塞鯨を。


「最強の攻撃手段は頭突き。フィジカルが強くて大きいからそれだけでも脅威だし、魔法も撃ってくる。……でももう、勝てない相手じゃないわ」


 フォルトレスホエールの頭部装甲は、城の城壁にすら匹敵する堅牢さで有名。実際に叩いてみたら硬いったらなかったわ。

 けれど……もうその装甲は傷だらけ。幾度ものぶつかり合いによる攻防で、わたしは最硬を誇る頭部にも深い傷跡をつけていた。


「ふふ、確実な手応えね。まだまだ強くなれるなんて、嬉しいわぁ……!」


 強くなりきったと思ってたのに、さらに強くなれる。そんな現実を知ったら……アガっちゃうに決まってるじゃない!


「――クォォオオ……――――!!!」

「《増強(ブースト)》:《四重(フォース)》!」


 怒りに燃えるフォルトレスホエールが突進してくる。

 わたしは無理のない範囲で身体強化をかけて、空を飛ぶ要塞鯨に駆け出した。


「レイちゃんが教えてくれたスキル……! 悔しいけれど、これを見つけた人は確かに天才ねぇ!」


 スキルとは、『発想』により会得できる。

 強力な斬撃を放つスキルは、『剣を振る』ことで習得するように。

付与士(エンチャンター)》のスキルは、『こんな強化が出来たら』という発想が習得のキッカケになる。


 だけど付与スキルの強化倍率は変わらない。その壁を越えるためにわたしは工夫してきた。

 スキルを強くするために『重ねる』ように。

 レイちゃんに伝えてもらったのは……わたしが求めていた、そういう手段だった!


「まさかスキルを()()()強くしようだなんてね! ――《二列連結(セカンドコネクト)》!」


 スキル《連結》。それは付与を掛け合わせるスキルだった。

 たとえばこんな風に。

「能力を強化する」付与の《増強(ブースト)》を、《光刃(セイバー)》の付与に付与する。

 光の刃はより強靭に。より鋭利に。あらゆる物を断ち切る剱に進化する――!


「――《天剣光刃(ブレイザー)》!!!」


 輝きの増した光の刃は、要塞鯨の体に深々と斬創を刻んでいた。

 血が噴き出し、激痛で巨大が捻じれ荒れる。

 

「ふっふふ、あはははは! 畳み掛けるわよぉ!」


 チャンスは逃さず! たたんっ、と……暴れるクジラちゃんを踏み台に跳び、頭上に飛び出た。


「ト・ド・メぇ――《臨界増強(バースト)》!!!」


《増強》に、《増強》を繋げる。

 今まで加算式に積み上げていた強化倍率を、一気に乗算式に跳ね上げる身体強化。

 その強さは諸刃の刃だった《五重(フィフス)》をも超える。そして――


「頭は無理でも、体なら貫けるわよ! ――〈砕き()き〉!」


 これは硬い装甲を斧槍の刃で割り砕き、槍の先端で刺し貫く技。

 巧みな武器捌きによる高速の二連撃。全身のパワーを一点に収束した突きが、フォルトレスホエールの背に深く刺し込まれた。


「クォ、ォォォン……――!」


 その威力は巨体を地面に叩き落として――わたしたちの戦いは、決着した。


 

【Side 純情剣聖】



「フレイ!」

「姉さん!」


 フレイの勝利を見届けたボクたちは、倒れたフォルトレスホエールに登った。

 三人の中で一番強い魔獣を倒したフレイは――


「いったぁ〜〜〜い! 《臨界増強》の反動で体が割れちゃう〜〜〜〜!!!!」


 ……ハルバードを刺したまま、鯨の巨体の上でのたうち回っていた。


「そりゃ《五重》でひーひー言ってたんだから、もっと強い強化なんて使ったらそうなるよね……」

「もう、姉さんったら。ほら、回復してあげるから」

「調子乗っちゃったのぉ〜〜〜!」


 反動で全身が痛みに襲われるフレイを助けるために、優しい妹が低ランクの治癒ポーションををかけていく。血が出ていないなら高い薬を使わなくてもいいしね。

 一番強くなったのはフレイだけど、まだ扱いには難がある。


「まだボクやマリアも新しい力を使いこなせているわけじゃないなぁ」


 今回の戦い、ボクだって気をつけてたけど魔力をたくさん使ってしまった。

 マリアも、強化スキルを多用して体力も消費するし、魔力切れになるリスクがさらに上がったんだから。


「筋力も、魔力も……すぐには増えないもんね。まだまだ一歩ずつしか進めないんだ」

「エルミー……」

「ふふっ。でもね、確実にあっくんに近づけてるわよ」

「……うん!」


 遠いと思っていた想い人に、少しずつでも近づけている。

 そう思えたボクたちは笑い合いながら少しの間、身体を休めるのだった。


 ――遠くで、強大な魔力に膨れ上がった相手と戦っているアベルも、大丈夫だよね。



サレ冒険者書籍化! 3/25発売!

お手に取っていただけると幸いです!


KADOKAWAオフィシャルサイト

https://www.kadokawa.co.jp/product/322510001632/


エルミーたちが可愛いので、ぜひご覧ください!

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