第十一話
いつも通り病院に向かうと、また慌ただしかった。
嫌な予感がした。
この前心肺停止状態になったばかりなのだ。
もしかしたら……また……!
俺は無我夢中で絵理奈の病室まで走る。
たったの30m程の距離が遠く感じられた。
病室の前に来ると、俺は絶句した。
「圭一…!おかえりなさい!」
「絵理奈…なのか…?」
そこにはベッドから上半身だけを起こした、他の誰でもない、絵理奈が微笑んでいた。
俺はすぐに絵理奈の元に駆け寄った。
「本当に…絵理奈なのか…?」
「私だよ?」
しっかりとした、絵理奈の声だった。
「絵理奈……ごめん…絵理奈……。
俺これからもっとお前の事、考えるから……。
俺…絵理奈が…いな…いと…ダメ…で……さみしく…て…辛く…て……。」
嗚咽で言いたいことが話せない。
絵理奈が目覚めてくれた…それがどんなに待ち望んだことか……。
「圭一、もう泣かないのっ!
ほーら!よーしよしっ!」
男なのに不甲斐ない。
絵理奈は俺を優しく抱き締めてくれた。
俺はここに誓う。
もう二度と、絵理奈を不幸にはしない。
絵理奈は俺が幸せにする。
「おかえり、絵理奈。」
二度と離さないようにと、俺は絵理奈を強く抱き締めた。
False End...