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第零章 / プロローグ 『零』
――物語の始まりとは、とても重要なものだ。
俗に言うプロローグがなければ、物語は始まらない。いや――プロローグがなくても、物語が始まることはできる。なぜなら、プロローグというのは単なる前置きでしかなく、フルコースで言う前菜だからだ。
つまりはオードブル。
つまりは『作品外』というわけだ。
前菜の仕事は、塩味や酸味が効いた軽い料理で食欲を増進させるもの。つまり、単なるお膳立て役。
「あったらあったで便利だけど、別になくっても美味しいよね」
といった風に、必要なものではないのだ。
しかし――ここまで酷評して言うのも何だが、どんなに必要がないとしても、やはりとても重要なものだ。必ず要するものではなく、重く要となるものなのだ。
物語においてのプロローグは、ただメインを期待させるためのものではない。プロローグというのは――物語の方針を、決めるためのものだ。
これから先、主人公はどんな人間なのか。主人公がどんな目的を持つのか。なんの為に動くのか。それを聞いている者に、見ている者に、知らしめるためにあるのが、プロローグだ。
そして、これから始まるのは『一』ではない。
それが始まる前の『零』の物語。
今から始まるのは、俺の指針が決まる物語だ。
――あの日、あの瞬間、無力ながらも力強く決意するまでの。
『零』




