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恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第二章 違和感

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第九話 変わらない日常

皇城での生活は、表面上は何も変わらなかった。


与えられた部屋は静かで、必要なものは揃っている。朝は決まった時間に起き、軽く食事を取り、そのまま外へ出る。


庭園へ向かい、葉を選び、状態を確かめる。

必要なものだけを摘み取る。

その一連の動きは、すでに習慣として定着していた。


変わらない。


少なくとも、セレスティナにとっては。


だが――


周囲は違った。


「本日も、外へ出られるのですか」


控えめに声をかけてきたのは侍女だった。

言葉遣いは丁寧だが、どこか様子を窺うような色が混じっている。


セレスティナは手を止めることなく答えた。


「はい」


短く、それだけ。


侍女は一瞬だけ言葉を失う。


「……その、外出についてですが」


続けようとして、躊躇う。


「制限は受けていませんので」


先に結論を置く。


侍女の口が、閉じた。


否定できない。


実際に、誰からも明確な制止はされていない。


ただ――


「……同行の者を」


「必要ありません」


間を置かずに返す。


視線は向けない。


会話は、それで終わった。


セレスティナはそのまま部屋を出る。


廊下を進む足取りは変わらない。

迷いもなければ、躊躇いもない。


だが、背後の気配だけが違っていた。


一定の距離を保ってついてくる存在。


気配を消しているつもりだろうが、完全ではない。


「……非効率ですね」


小さく呟く。


誰に向けた言葉でもない。

ただの評価だった。


そのまま足を進める。

庭園へ。


昨日と同じ道を辿り、同じように視線を落とす。

葉の状態を確認し、必要なものを選び取る。


環境は変わらない。

だが――


「それで、問題はないのか」


すぐ後ろから、声が落ちる。


振り向く必要はなかった。


「ありません」


セレスティナは、葉を見たまま答える。


レオニスがそこにいる。

当然のように。


「監視されている状態だが」


続ける声音は低い。

だが、試すような色が混じっている。


セレスティナは、ようやく視線を上げた。


ほんの一瞬だけ、レオニスへ向ける。


「問題ありません」


同じ答えだった。

変わらない。


レオニスは、その様子を見ていた。


距離を詰める。

それでも、変わらない。


「……ならば」


低く落とす。


「このままでいいな」


確認ではない。

決定だった。


セレスティナは、その言葉を受け取る。


わずかに視線を落とし、すぐに戻した。


「合理的ですので」


肯定だった。

それだけ。


再び視線は葉へ戻る。

指先が動く。


いつもと同じ動作。

変わらない日常。

だが――


その中に、確実に別の存在が入り込んでいる。


レオニスは、そのままそこに立っていた。


動かない。

離れない。

ただ、同じ空間にいる。


それだけで。


何かが、確かに変わっていた。

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