表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第二章 違和感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/42

第八話 必要な存在

食堂に残る空気は、まだ完全には戻っていなかった。侍女の症状は落ち着き、緊急性は消えている。

それでも、先ほどまでの出来事が残した緊張は、わずかに場に滞っている。


その中心にいるのは、セレスティナだった。

誰もが意識しているのに、本人だけが何も変わらない。


「――下がれ」


レオニスの声が落ちる。

短く迷いなく、周囲の者たちはすぐに動き、侍女は静かに運び出されていく。

医師もそれに続き、食堂の中には限られた者だけが残った。


静けさが戻る中、レオニスは席を立ち、そのままセレスティナへ歩み寄る。

距離が縮まる。

それでも、彼女は動かない。


「お前はここにいろ」


唐突な言葉だったが、その声音に揺らぎはない。

命令として成立している。


セレスティナはそれを受け取り、ほんのわずかに考えてから「理由を」と短く返した。拒否ではなく、確認として。


レオニスは視線を外さないまま、「判断が有用だからだ」と簡潔に答える。

それ以上の説明はない。


セレスティナはその言葉をそのまま受け止め、「合理的ですね」とあっさりと返した。

肯定だった。迷いはない。


その反応に、レオニスの目がわずかに細められる。


「では、問題ありません」


続けてそう言い、まるでそれで話は終わったと言わんばかりに視線を外した。


その空気を割るように、「……セレス」と抑えた声が入る。

ノエルだった。

その視線には明確な不満が滲んでいる。


「それは――」


言葉を続けようとした瞬間、「発言を控えろ」とレオニスが遮った。一言で場が張り詰める。


ノエルの拳がわずかに強く握られる。

それでも引くしかない。


「……失礼いたしました、陛下」と低く告げるが、視線だけはセレスティナに残したままだった。


その様子を、ディオンが静かに見ている。

表情は変わらないが、視線は鋭い。状況を正確に測っている。

そしてアルベルトは、何も言わずただ全てを見ていた。


セレスティナは、そのどれにも関心を示さない。


「では、部屋に戻ります」


淡々と告げる。


一瞬だけ、レオニスの視線が止まる。

「許可していない」と低く返す。


セレスティナはわずかに首を傾げ、「待機、という意味でしょうか」と問い返す。


「そうだ」


短い返答。


セレスティナは少しだけ考えるように視線を落とし、「承知しました」と答えた。


それで十分だった。


再び静けさが落ちる。

誰も動かない。

それでも、何かは確実に動いている。


レオニスは、そのままセレスティナを見ていた。


(……手放す気はない)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ