表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第二章 違和感

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/19

第三話 同じ距離

応接室には、静かな緊張が満ちていた。

整えられた空間に余計な装飾はなく、それでもそこにいる人物の存在だけで空気の密度が変わっている。


レオニス・ヴァルカは席に着いたまま動かず、視線を正面へと向けていた。

その向かいにアルベルトとディオンが控え、互いに言葉を交わさないまま、場の均衡を保っている。


そこへセレスティナが入室した。


「お呼びでしょうか」


一礼し、顔を上げる。

その動きは正確で無駄がなく、視線は自然にレオニスへと向かう。

逸らすことも、揺れることもない。ただ同じ高さで止まる。


「座れ」


短く告げられ、セレスティナは迷いなく席へ腰を下ろした。

姿勢は整っているが力みはなく、その様子をレオニスは黙って見ている。


変わらない――その印象だけが、静かに残る。


「呼んだ理由は」


先に口を開いたのはセレスティナだった。

確認するように、必要なことだけを問う声音。

アルベルトの視線がわずかに動いたが、口を挟むことはない。


レオニスはすぐには答えず、ほんのわずかに視線を細めたあと、「……昨日の続きだ」と低く言った。


セレスティナは首を傾げる。

「どの部分でしょうか」と問い返す。

その声音に曖昧さを許す気配はない。


レオニスはその反応を見てから、「揺れない理由だ」と言い切った。


室内の空気がわずかに張り詰める。

ディオンの視線が鋭さを増し、アルベルトは沈黙のまま様子を見ている。


セレスティナは一度だけ視線を落とし、すぐに戻した。


「昨日も申し上げた通りです。必要がありませんので」


同じ答えだった。

変わらない。


レオニスの指先が机の上でわずかに動き、止まる。


「それは、誰に対してもか」


踏み込んだ問い。


セレスティナはわずかに考えるように間を置き、「はい」と短く答えた。


「対象に関係はありません」


ディオンの目がさらに細められる。

レオニスはその言葉を受け止めながらも、納得はしていない。


「……では、距離も同じか」


問いは静かだったが、意味は明確だった。


セレスティナはわずかに首を傾げる。

「距離、とは」と返す。


レオニスは一瞬だけ言葉を選び、「他者との接し方だ」と言い換えた。


「近づかれても、変わらないのか」


セレスティナはその問いを受け止める。

視線がわずかに動いたが、それ以上は何も変わらない。


「はい。問題がなければ」


簡潔な答え。


アルベルトはその一言を聞き逃さなかった。


レオニスの目がわずかに細められる。


「問題があれば?」


「排除します」


即答だった。

感情ではなく、判断として。


その言葉に、室内の空気がほんのわずかに揺れる。

それでも誰も口を挟まない。


レオニスはしばらくセレスティナを見ていた。

変わらない。

どこまでいっても、変わらない。


「……そうか」


低く落とすと、それ以上は続けない。


沈黙がそのまま場に広がる中、セレスティナは動かずにそこにいる。

視線も呼吸も変わらないまま。


その様子を見つめながら、レオニスの目の奥だけが、ほんのわずかに変わる。


理解できないまま。


それでも――目を逸らすことはできなかった。


(……なぜ、気にする)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ