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断罪の日に追放されましたが、辺境で無双していたら元婚約者が土下座してきました  作者: マルコ


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第13章 間者の影

【王暦424年・ダール渓谷の村】


 ヴァルデン兵が去って数日。

 村は再び静けさを取り戻していたが、私は落ち着かなかった。


(あの言葉──「必ず戻る」。あれがただの脅しで終わるはずがない)



 その不安は、思ったより早く現実となった。


「リシェル様、見慣れない男が村に……!」


 子供の報せに、私はすぐ広場へ向かった。

 そこには粗末な外套を着た若い男が立っていた。


「旅の商人だ。食料と塩を売りに来た」


 男はにこやかに言うが、その荷はやけに多い。

 この辺境にこれだけの物資を運べる者は限られている。


「どこから来たのですか?」


「ヴァルデンの街さ」


 その言葉に、広場がざわめいた。

 村人たちは飢えを恐れ、買うべきか迷っている。

 だが、私は彼の荷の一つを開け、匂いを嗅いだ。


(……やっぱり)


 鼻を刺す薬臭。

 塩に似せた粉だが、これは「苦塩」──過剰に摂取すれば腹を壊し、畑に撒けば土を枯らす毒だ。


「この荷は危険です! 中に毒が混ざっています!」


 村人たちがどよめき、男の顔色が変わった。

 逃げようとした瞬間、鋭い声が響く。


「捕らえろ!」


 黒衣の影が男の腕を掴み、地面にねじ伏せた。

 グレイ辺境伯だ。


「ヴァルデンの間者か。……吐け、誰の命令だ」


 男は青ざめ、やがて震えながら白状した。

 ヴァルデン男爵の命で村の食糧と土壌を再び枯らそうとしたこと──そして、次にもっと大きな妨害を企てていることを。



 男は拘束され、村に緊張が走った。

 しかし私は村人たちに向かって言った。


「これで分かったはずです。外から来る甘い言葉には罠がある。

 でも、私たちが力を合わせれば、必ず防げます!」


 村人たちが力強く頷き、広場に声が上がった。


「そうだ、もう騙されない!」

「村を守るんだ!」



 その夜、焚き火の傍でグレイ辺境伯が言った。


「よく見抜いたな。……お前の鼻は頼りになる」


「ありがとうございます。でも、これからはもっと警戒が必要ですね」


「そうだ。村を守るのは剣だけじゃ足りん。お前の知恵と、この村の結束が必要だ」


 その言葉に、胸の奥が温かくなる。

 剣と知識、そして人の心──すべてが揃えば、辺境はきっと変わる。


(絶対に負けない。村を守るだけじゃない。この土地を……生かしてみせる!)


 夜空に星が瞬き、風が焚き火の煙を遠くへ運んでいった。

 新たな戦いの幕が、静かに上がった。

第13章をお読みいただきありがとうございます。

ついにヴァルデン男爵家が“策”に出てきましたね。

甘い言葉で近付いてきた商人が間者だったという展開は、外敵との戦いが剣だけではなく“知恵比べ”になっていくことを示しています。


リシェルが毒を見抜き、村を守ったことで、村人たちの信頼はさらに強固なものになりました。

グレイ辺境伯もまた、彼女の力を本気で頼りにし始めています。


次回は、ヴァルデンが仕掛ける「次の一手」がついに動き出します。

村と領地全体を揺るがす大きな事件が起こり、リシェルとグレイの共闘は避けられないものとなるでしょう。

どうぞお楽しみに!


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