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断罪の日に追放されましたが、辺境で無双していたら元婚約者が土下座してきました  作者: マルコ


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第12章 隣領からの圧力

【王暦424年・ダール渓谷の村】


 保存食づくりが軌道に乗り、村には少しずつ笑顔が戻り始めていた。

 子供たちが干した魚を手に遊び、女たちが燻製を吊るしながら歌を口ずさむ。

 けれど、その穏やかな日々は長く続かなかった。



 昼下がり、村の入口に騎馬の一団が姿を現した。

 赤い外套を纏った男たち──ヴァルデン男爵家の兵である。

 先頭の男が声を張り上げた。


「ここはヴァルデン領の監督下にある! 勝手に開墾し、勝手に水を引くなど許されん!」


 村人たちがざわめき、怯えて後ずさる。

 その中で私は一歩前に出た。


「ここはダール渓谷。正式に辺境伯領の支配下です。勝手に踏み込む方こそ掟破りです!」


 兵たちの視線が鋭く私に突き刺さる。

 その背後から、低い声が響いた。


「──彼女の言う通りだ」


 黒衣の男。グレイ辺境伯が村の奥から歩み出た。

 剣に手をかけるでもなく、ただその存在感だけで空気が張り詰める。


「ヴァルデンの者ども。貴様らが越境していることは明白だ。すぐに引け」


「ば、馬鹿な! この地は元々──」


「黙れ」


 一言で、男の声が凍りつく。

 グレイの眼光は剣よりも鋭く、兵たちは思わず手綱を引いた。



 沈黙の中で、私は前に進み、声を上げた。


「この村は、もう飢えに屈しません。畑は甦り、水も戻り、食を繋ぐ方法も見つかりました。

 私たちはここで生きます。どんな圧力にも負けません!」


 村人たちの目に光が宿る。

 誰かが小さく「そうだ」と呟き、やがて声が広がっていった。


「そうだ! ここは俺たちの村だ!」

「ヴァルデンになんか渡さない!」


 群衆の声に押され、ヴァルデン兵はたじろぐ。

 やがて憎々しげに吐き捨て、踵を返した。


「……いいだろう。だが覚えておけ。我らは必ず戻る!」



 兵たちが去り、村に静けさが戻る。

 私は胸に手を当て、震える息を吐いた。


「……怖かった」


「当然だ」

 隣に立つグレイが低く答えた。

「だが、よくやった。村人の前で恐れを見せなかったことが、一番の勝利だ」


 その瞳には、かすかな誇りの色が宿っていた。


(追放されて何も残らなかったはずの私が、今は“誰かを守る言葉”を持てるなんて……)


 胸の奥に新しい力が芽生えるのを感じながら、私は強く拳を握った。


(次は、恐怖だけじゃなく“確かな力”で村を守らなきゃ)

第12章をお読みいただきありがとうございます。

ついにヴァルデン男爵家の兵が直接村に現れ、力による圧力を仕掛けてきました。

しかしリシェルは恐怖に屈せず、村人の前で毅然と立ち向かい、グレイ辺境伯と共に外敵を退けました。


「ただの追放令嬢」から「村を導く存在」へ──彼女の立場が大きく変わった瞬間です。

グレイ辺境伯もまた、はじめて明確にリシェルを認め、二人の信頼関係はより強いものとなりました。


もちろん、これで脅威が去ったわけではありません。

ヴァルデンは必ず再び牙を剥き、さらなる妨害や陰謀を仕掛けてくるはずです。

次回は、外からの圧力に加えて村内部の絆が試される展開へ──どうぞご期待ください。


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