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次は、どの県を食べようか?  作者: 落川翔太
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10.高知県

10.高知県


 彩乃のお腹は日に日に大きくなっていた。

 山口料理を食べてから二週間が経った水曜日のお昼頃のことである。

 晴斗は事務所で作業をしていた。その時ちょうど厨房から大きな音がして、晴斗はビクリとした。それは誰か人が倒れたような音がした。

「彩乃さん! 彩乃さん、大丈夫ですか!」

 それから、厨房から若い男性シェフが大声で叫んでいるのが聞こえた。彩乃に何かあったのだろうかと晴斗が思っていると、すぐにその声とは違う別の若い男性のシェフが晴斗のもとへやって来た。

「山崎さん、彩乃さんが……。」

 そのシェフが慌てた様子で言った。晴斗はすぐに席を立ち、厨房へと向かった。

 厨房に行くと、彩乃が倒れていた。彼女の周りに何人かのシェフがいて、その一人が彼女の側に寄り添い、水を飲ませていた。

「彩乃、大丈夫か?」

 晴斗はすぐに彼女の側へ駆け寄り、声を掛けた。

「ええ、大丈夫」

「一体、どうしたんだ?」

晴斗がそう訊くと、「ちょっと立ちくらみがして……。」と、彼女が言った。

「立ちくらみ……。」

「もう平気よ。みんな、心配させてゴメンね」

 彼女はそう言って立ち上がる。すかさず晴斗は「ちょっと事務所で横になるといいよ」と、彼女に言った。

「あなた、もう平気よ」

 それから、彼女がそう言った。けれど、晴斗は心配だったので、「いや、少し休んだ方がいい」と言うと、「ええ、分かった。そうするわ」と、彼女が答えた。

「吉田君、ちょっといい?」

 それから、晴斗は吉田という若い男性のシェフに言った。

「なんですか?」と、吉田というシェフが返事をした。

「ああ、それから、みんなにも聞いてほしい」

それから、晴斗は厨房にいたシェフたち全員を呼んだ。

「僕と吉田君で彩乃を事務所まで運ぶから、他は仕事に戻りなさい」

 晴斗がそう言うと、吉田というシェフと他のシェフたち全員が「はい!」と、大きな声で返事をした。それから、すぐに吉田以外のシェフたちが各々の持ち場へと戻り、調理を再開した。

 それから、晴斗は吉田と一緒に彩乃を起こし、二人で彼女を事務所のソファまで運んだ。

「吉田君、ありがとう。君ももう戻っていいよ」

 その後、晴斗が吉田に声を掛けると、彼は頷いてすぐさま厨房に戻って行った。

 しばらくの間、晴斗は彼女に付き添った。

 晴斗は今起きたことについて考えた。仕事のストレスだろうか。それとも、妊娠による症状の一つなのだろうか。おそらく後者ではないだろうかと晴斗は思った。

 それから、晴斗はもう一つあることが気になった。――お腹の中の赤ん坊は無事だろうか。立ちくらみをして、彼女は倒れただけだが、赤ん坊も一つの命である。やはり晴斗はそのことが気になった。

その後、晴斗はすぐに彼女を病院へ連れて行こうと思った。

「彩乃、調子はどう?」

 晴斗が声を掛けると、「さっきよりはだいぶ楽よ」と、彼女は答えた。

「なあ、彩乃。今から病院に行って診てもらわないか? お腹の中の子も心配だし」

 晴斗がそう言うと、「今から? お店はどうするの?」と、彼女が訊いた。

「店はランチタイムのこの時間だけ、シェフの皆に任せることにするんだ。夜は普通に彩乃にも仕事に戻ってもらうつもりだよ」

 そう言うと、「分かったわ」と、彼女が頷いた。

 それから、晴斗は一度厨房に戻り、先程の吉田というシェフに声を掛けた。

「吉田君、ちょっと今から彩乃を病院に連れて行こうと思うから、ランチタイムの間だけ店番を頼む。何か困ったことがあったら、僕の携帯に連絡してほしい」

 晴斗がそう言うと、吉田は「分かりました」と、返事をした。

「よろしく。四時には戻って来るから」

「はい!」

 事務所に戻った晴斗はすぐに病院に連絡をした。それから、晴斗は彩乃を車に乗せると、すぐに病院へと走らせた。


「……やはり立ちくらみですね。妊娠中の女性はめまいや立ちくらみなど頻繁に起きるのですよ。ふらついた時、まずは座るか横になるかして下さい。安静にしていれば大丈夫ですが、ご無理をなさらずに。お腹の子のためにも、奥様はお仕事などは控えた方がいいかと……。」

 医師はそう言った。

「そうですか」と、彩乃は言った。

「ええ。後、妊娠中のめまいや立ちくらみは、脱水や貧血が原因ですから、水分や鉄分を多く摂るようにしてください」

「分かりました」

「また何かありましたら、こちらへお越しください。では、お大事に」

「はい。ありがとうございます」

 晴斗はそう言った後、彩乃と二人で病室を出た。会計を済ませて、二人は車に戻った。

「ねえ、あなた」

 ふいに彩乃が口を開いた。

「何?」

「ゴメンナサイ。私が立ちくらみをしたばかりに……。」

 彼女は申し訳なさそうに言った。

「しょうがないよ。こればかりは」

 晴斗が彼女をなだめるように言うと、「そうよね……。でも、お店の皆にも迷惑だわ」と、彼女が言った。

「そうは言っても、今はお腹の中の子のことを優先したほうがいいよ。だって、俺達の子どもだからね」

 晴斗はそう言って、彼女に笑顔を見せた。

「うん……。」

 彼女は俯きながら言った。

「だから、しばらくは仕事を休んだ方がいいと思うんだ。自宅でゆっくりしていた方がいい」

 晴斗がそう言うと、「でも……。」と、彼女が言った。晴斗は口を開く。

「今は仕事を気にしなくていいから。明日から、お店は俺がシェフたちと一緒に何とかするから」

 晴斗は堂々と言った。

「じゃあ、趣味は?」

 それから、彼女がそう訊いた。

「趣味って? ああ、日本の料理を食べ周るやつね。あれもしばらくの間、お休みしよう」

 晴斗がそう言うと、彼女が口を開いた。

「それもお休み? あなた、ちょっと待って。お店を休むのは分かったわ。けど、せめてそれだけはやらせて! というかやりたい!」

 彼女は大きな声でそう言った。

「でも、それだと、彩乃の身体が心配だよ……。」

「…………。」

 晴斗がそう言うと、彼女は黙ってしまった。晴斗も黙る。

 それからしばらくして、晴斗は口を開いた。

「……分かった。じゃあ、今やっている趣味だけは続けよう」

 晴斗がそう言うと、「あなた……ありがとう」と彼女は言って、笑顔になった。

 車のエンジンを掛けた。そろそろお店に戻ろうと晴斗は思った。

 車の時計を見ると、午後二時五十五分であった。もう後五分もすれば、午後三時である。ちょうどランチタイムが終わる時間だった。晴斗はポケットにあるスマホを取り出した。お店からの着信がなかったことを確認して、晴斗はホッとした。晴斗の身の回りに何か起きようとも、お店のほうでは今日の昼の運営もどうやら平和だったらしい。それが分かると、すぐに車を発進させた。

「次はどの県を食べようか……。」

 運転中、晴斗はポツリと呟いた。

 すると、それを横で聞いていたのか、彼女が「ねえ」と言った。

「この前テレビで観た高知料理なんてどう?」

「高知料理か」

 それから、晴斗はすぐにこの前の番組でやっていた高知料理を思い出した。その時、それを観ていて確かに晴斗はその料理はおいしそうだなと思っていた。

「いいねえ」

 晴斗がそう言うと、「でしょ?」と、彼女は嬉しそうに言った。

「いつ行く? 次の休みかしら?」

 彼女がそう訊いたので、「あ、今からはどう?」と言って、晴斗はにやりと笑った。

「今から?」

 晴斗の提案に彼女が驚いたように言ったが、「うん、お腹空いたでしょ?」と晴斗が訊くと、「そうね」と言って彼女が笑った。

「もうすぐ三時だし」

「ああ、そっか。それもいいわね。でも、仕事は?」

「大丈夫。食べたら戻るから」

「オッケー」

 それから、晴斗は一度、走らせていた車を路側帯に停めた。その後、彼女が高知料理のお店を調べてくれた。そのお店はどうやら新宿にあるようだった。そこからすぐ近いことが分かった。

「じゃあ、行こうか」

 晴斗はカーナビにそのお店の住所を入れ、そのお店まで走った。

 そのお店の近くの駐車場に、晴斗は車を停めた。そこから二人でお店まで歩いた。

 店内に入ってすぐに女性の店員に奥のテーブル席に案内された。二人は席に着き、メニューを見た。

それを見て、晴斗たちは炭火焼きカツオたたきと土佐天、どろめとちゃんばら貝、四万十しまんと鶏の土佐揚げと土佐巻き寿司を頼むことにした。それから、この後、二人は仕事なこともあって、ビールではなくウーロン茶を二つ頼んだ。

 しばらくして、ウーロン茶二つと、どろめ、それから、ちゃんばら貝がやって来た。

 どろめは生シラスのような見た目をしていた。

「どろめってなんですか?」

 料理を運んできたその女性店員に、彩乃は訊いた。

「どろめというのは、カタクチイワシの稚魚なんですよ」と、その女性店員が答えた。

「へー、そうなんだ」と、彼女は納得したように言った。晴斗もその説明を聞いて、納得する。

それから、「こっちの貝は?」と、彼女が今度、ちゃんばら貝を指して言った。

「ちゃんばら貝ですね」

 その女性店員はふふと笑ってから話を続けた。

「ちゃんばら貝は、高知での呼び方なんです。本当はマガキガイと言うんですけど、この貝って身の先に赤茶色の刀みたいなものがあるんですね。それで、この貝はその刀のようなものをぶんぶんと振り回すことから、その動きがチャンバラみたいなんです。だから、『ちゃんばら貝』って名前になったそうですよ」

 彼女は滔々(とうとう)とそう説明した。

「へー、なるほど。面白いですね」

 晴斗がそう言うと、「そうですよね」と、その女性店員は笑って言った。

「どうもありがとうございます」

 それから、晴斗がお礼を言うと、「いえいえ、ぜひ高知の味をご堪能下さい」と彼女は言って、その場を去っていった。

 それから、彩乃がいただきますと言って、まずどろめを箸でつついた。

「うん、おいしい!」

 彼女は嬉しそうに言った。

 その後、晴斗もどろめを食べてみた。口に入れると、つるりとした食感が気持ち良かった。

「うん、食感がいいね」

 晴斗は微笑んで言った。

 彼女は今度、ちゃんばら貝を箸で一つ掴み取り、口に入れた。

「ん、苦い!」

 彼女は顔をしかめた。その後、彼女はそれをもぐもぐして呑み込むと、すぐにウーロン茶を飲んだ。

「不味い?」

「ううん、不味くはないけど、苦いの……。」

 彼女はそう言って、舌を出した。

 その後、晴斗もそのちゃんばら貝を一つ食べてみた。噛むと確かに貝独特の苦味が感じられた。

「あー、確かに」

けれど、晴斗はそれが嫌ではなかった。

「でしょ?」

「うん、でもつるりとした食感と塩味がちょうどいいね」

 晴斗がそう言うと、「そうだね」と、彼女が言った。

「これはお酒に合うかもね」

 それから、彼女がそう言った。確かになと晴斗は思った。その時、ビールが飲めないことが残念だと晴斗は思った。

 その後、少しして、カツオたたきと土佐天がやって来た。

「わー、おいしそう!」

 カツオたたきを見た彼女が嬉しそうに言った。

「じゃあ、早速、いただき!」

 彼女はそう言って、カツオたたきを一枚箸で取り、小皿に入ったゆずポン酢に付けて頬張った。

「うーん、おいしい!」

 彼女は笑顔で言った。

「おいしい?」

「うん。おいしいよ!」

「本当? じゃあ、俺も」

 晴斗はそう言って、箸で一枚カツオたたきを掴んだ。晴斗もそれにゆずポン酢を付けて食べた。噛むとカツオ本来のプリッとした弾力と味が感じられた。それから、炭火で焼いているので香ばしい香りもした。付けダレのゆずポン酢がサッパリとしていて、そのカツオの身がサッパリと味わえた。

「うん、うまい! これ!」

 その味のおいしさに思わず晴斗も声を上げた。

「でしょ?」

「なんでこんなに美味しいんだろうね?」

「ね。あ、そう言えば、カツオって、鉄分豊富なんだよね?」

 それから、彼女がそう言った。

「あー、そう言えば、そうだね。鉄分不足の時に食べる食品としてよく聞くね」

「じゃあ、私、今、いっぱい食べないと! また、立ちくらみしないように」

 彼女はそう言って、にやりと笑った。

「そうだね」

 それから、晴斗も笑った。

「残りのカツオも食べていいよ」

 その後、晴斗がそう言った。

「え? いいの?」

 彼女は目を見開いた。

「うん」と晴斗が頷くと、「やったー」と、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 それから、晴斗は土佐天を食べてみた。

その時観たテレビで、高知では揚げかまぼこのことを「天ぷら」というのだと話していたのを晴斗は思い出した。

 その土佐天を一口食べると、香ばしい香りがした。そしてぷりぷりとした食感も良かった。噛むほどに晴斗の口の中にうまみが広がった。おいしかった。それから、これは酒のつまみになるなと晴斗は思った。

 それからややあって、四万十鶏の土佐揚げと土佐巻き寿司がやって来た。ウーロン茶を飲み干した彩乃が、それをお代わりした。

 四万十鶏の土佐揚げはいい匂いがした。

早速、彼女がそれを一つ頬張る。

「うーん、これもおいしい」

彼女は美味しそうに食べていた。

 晴斗もそれを一つ食べてみる。一口で頬張ると、衣はカリッとしていた。それから、じゅわっと肉汁が口の中に溢れた。ほのかに甘みも感じられた。

「うん、旨い! これ好きかも」

「分かる。私も好き」

 この土佐揚げは、かつおだしと醤油ベースのタレで漬けているらしい。確かにかつおだしや醤油の味も感じられた。

 そして、最後に二人は土佐巻き寿司を食べた。それはカツオたたきを巻いた寿司であった。その巻き寿司も中々美味しかった。

 その後も、二人は残った料理を食べた。一通り食べ終えると、晴斗は満腹になった。彼女もひとしきり食べ終えると、「お腹いっぱい」と言った。

 腕時計を見ると、午後三時四十五分だった。

「もうすぐ四時だね」

 晴斗がそう言うと、「もうそんな時間?」と彼女が言った。

「うん。そろそろ戻らないと」

「そうだね」

 それから、晴斗は会計を済ませて、二人でそのお店を出た。車を停めた駐車場まで戻り、すぐに二人は自分たちのお店へと戻った。


「ただいま」

 事務所に戻って来た晴斗は、そこで休憩中のシェフたちに言った。

「ただいま~」と、彩乃も皆に言った。

「山崎さんに、彩乃さん。お帰りなさい!」

 そこに居た吉田と言うシェフが言った。

「吉田君にみんなも、留守番ありがとう。特に問題はなかったんだね」

 晴斗がそう訊くと、「はい。問題ありませんでした」と、吉田が答えた。

「なら良かった」

「彩乃さんは平気なんですか?」

 それから、今度、吉田がそう訊いた。

「ああ、ええっと……。」

 彼にそう訊かれて、晴斗は何と言えばいいか分からなかった。晴斗が黙っていると、彼女が口を開いた。

「今は平気よ。でも、まためまいや立ちくらみが起きるかもしれないんだって……。」

「はあ、そうなんですか」

「そう。まあ、妊娠中だから仕方ないんだけどね。それでね、山崎と話をしてね。明日から、私はしばらくお店をお休みすることに決めたの」

「え!? そうなんですか?」

 吉田は驚いたように言った。事務所にいた他のシェフたちも驚いているようだった。

「うん。仕事をしていても今日みたいになっちゃうし、みんなに迷惑を掛けると思うから。休む分、もっとみんなに迷惑を掛けちゃうけど、このお店は山崎が営業を続けるって言ってるから、シェフやフロアの従業員の皆にも協力してほしいんだ。自分勝手かもしれないのは分かってる。でも、皆、どうか私のためにもお願いします」

 彼女はそう言って、皆に頭を下げた。

「分かりました」

「いいですよ」

「協力します」

 事務所にいたシェフやフロアの従業員たちが口々にそう言った。

「みんな、本当にありがとう」

 彩乃は顔を上げて言った。

「もちろん、彩乃さんや山崎さんのためだけじゃなくて、自分たちのためでもあるけどね」

 それから、吉田というシェフがそう言って笑った。その後、他の皆が笑い、事務所が笑いに包まれた。

「さあ、もう四時だ! 夜の運営に向けて、皆、準備するぞ!」

 それから、晴斗がその空気を一変させるかのように大声で言った。

「皆、夜も頑張るよ!」

 彩乃がそう言ったので、「え? 彩乃さん、夜は厨房に立つんですか?」と、吉田が不思議そうに訊いた。

「うん」と、彩乃は笑って頷いた。「今夜だけだよ」

 すると、事務所にいたシェフたちが「やったー」と言って、嬉しそうに駆け回ったり、口笛を吹いたりしていた。

 そして、彩乃やシェフたちは夜に向けて準備を始めた。晴斗は買い出しへ向かった。

 夕方五時から夜の営業が始まり、それから閉店の午後十時まで晴斗たちはいつも通りの営業をした。幸いなことに、その時間帯で彩乃の体調が悪くなることはなかった。

 夜十時になり、厨房にいたシェフたちやフロアの従業員が片付け作業を始めた。一時間程してそれを終えた後、厨房で彩乃がいつものように終礼を始めた。従業員が一同に彼女の周りに集まる。晴斗もそこへ加わった。

「皆さん、本日もお疲れ様でした」

 彼女がそう言って、終礼を始めた。

「本日はお昼から皆さんに色々とご心配とご迷惑をおかけしました。今日のランチタイムを乗り切れたのは皆様のおかげです。本当にどうもありがとうございました。そして、明日からなのですが、夕方に私が話した通り、私抜きでの運営になります。この件につきまして、皆さんには大変ご迷惑をおかけします。明日から私の代わりは山崎になりますので、皆さんは山崎の指示のもと動いてください。よろしくお願い致します」

 彼女がそう言うと、従業員たちが「はい」と返事をした。

「それから……あなた」と、彼女が言った。

「俺?」

「うん。明日からこのお店をお願いね」

 それから、彼女が晴斗を見て言った。

「うん、分かった」と、晴斗は頷いた。

「では、本日は以上になります。何か質問等はありますか? ……なければ以上になります。お疲れ様でした!」

 彼女はそう言って、頭を下げて皆にお辞儀をした。その後、従業員たちが一斉に「お疲れ様でした!」と、大声で挨拶をした。

 それから、従業員たちは事務所に戻り、着替えをして帰り支度を始めた。着替え終わった従業員からどんどんと帰って行く。従業員が帰り、晴斗たちも着替えて電気を消し、外へ出た。店を閉めて、最後に彩乃が鍵を閉めた。

「あなた、お疲れ」

 鍵を閉めたのを確認した彼女が晴斗を見て言った。

「彩乃もお疲れ。今日は疲れたでしょう?」

「うん、久々に疲れたわ」

「帰ってゆっくりしよう」

「そうね」

「今、車を取って来るから、ちょっとここで待ってて」

 それから、晴斗はそう言った。

「うん」

 すぐに晴斗は駐車場まで行き、店の前まで車を動かした。店の前まで着くと、彼女が立っていた。彼女はすぐに助手席に乗った。

「あなた、ありがとう」と、彼女が言った。

「別にいいって」

 晴斗はそう呟き、すぐさま自宅まで走らせた。

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