0 僕、異世界転生してたんだ
久しぶりの投稿。
とりあえず、今月は毎日投稿でやってみます。
9月以降は異動先の仕事次第。
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「はっ!?」
目を覚ますとそこにあったのは、知っているような、知らないような天井……じゃなくて、青空でした。
って、定番の天井ネタなんて考えている場合じゃない。
「俺、死んだ――いっ!?」
飛び起きようとして、すぐに元の姿勢に戻った。
「痛い! すっごい痛い!」
頭がメッチャ痛い。
ズキズキって脈打ってるけど、血とか出てるんじゃないの?
そっと触ってみると後頭部に大きなたんこぶがあった。
痛いはずだよ。
どうして、こうなった?
って思い出すのも無理なぐらい痛い。
しばらく頭を抱えて丸まっていると、少しずつ痛いのも落ち着いてきた。
痛いのは痛いままだけど、ガマンできなくもないぐらい。
今度はゆっくりと体を起こしてみる。
最初に見えたのは川。
きれいな水の穏やかな小川。
覚えている。
毎日ここで水を汲んで、家まで持っていく日課の場所。
僕が寝ていたのはそのすぐ近くの小さな土手の途中だ。
石だらけの川辺じゃなくて、短い草の生えた辺りで、春らしい天気のいい今日なんかは昼寝のベストポジション。
「でも、昼寝してたわけじゃない」
まだ痛い頭を押さえながら見回すと、転がった大きな桶が川辺に二つ。
その周りが濡れているのは中身がこぼれたから、かな。
段々こんなところで寝る前の事を思い出してきたぞ。
僕は今朝も妹分と二人でここに水汲みに来たんだ。
いつもの桶の倍はある特注の大きな桶を両手に持って、やっとこさ水を入れてさあ帰ろうとして、土手を必死に上ったところで体力の限界。
派手にこけた、と。
そんでもって、落ちてた石に頭を強打したわけだ。
「気絶で済んでよかったなあ」
頭とかヤバすぎだ。
どうして受け身も取らないのか、僕。
いや、桶を放すのが間に合わなかったからだろうけどさ。
我ながらトロすぎる。
ゆっくりと立ち上がる。
視界が、低い。
『俺』の感覚だと中腰になって子供と話す感じ。
そう。
目を覚ます前。
今になると夢を見ていたように思えるけど、その時の僕は『俺』だった。
はっきりとは思い出せない。
名前も、年齢も、性別さえ男だった気がするけどあいまいだ。
ただ、はっきりと最期のシーンだけは覚えている。
孤独な病室。
機械の無機質な警告音。
医者たちの怒鳴り声。
熱い息。
冷たいカラダ。
遠く離れていく鼓動。
暗くなっていく世界。
「病死、か」
やっぱり思い出せるのは少しだけ。
病名もわからないけど、どうやら『俺』は死んでしまったらしい。
「それで終わり、のはずだったんだけどなあ」
終わりの続きがあったらしい。
たんこぶの痛みで実感する。
これは生きていないと感じられないモノだ。
僕はアクタ。
今年十歳になった子供で、前世を思い出した。
「僕、異世界転生してたんだ」
プロローグなんで、もう一話。