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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第4章 エルフの里 テスラの大森林編

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第55話 全滅の危機~何か手段は無いのですか?~

 高速で接近する、2機のマシンゴーレム。




 〈ミドガルズオルム〉は警戒し、殲滅魔砲〈アケローン〉による砲撃で食い止めようとする。


 これまでと違い、細く収束させた黒い光線。

 速射性を重視したモードだ。


 エリーゼ機とレクサ機は連射を浴びるが、全弾回避。


 ()(れい)機動(マニューバ)で、(まと)を絞らせない。




『それ以上、2人のダンスを邪魔するのは()(すい)だよ』




 剣士コンビを援護すべく、(あら)()()()は〈ミドガルズオルム〉にプラズマ砲を浴びせる。


 今度は出力が、絶妙にコントロールされていた。




 さらに賢紀、アディ、イースズ、ニーサも参加。


 (いっ)(せい)射撃を行い、パイロットであるゼフォー・ベームダールの視界を奪う。




『ここだ! もらった!』




 レクサ・アルシエフは自機に魔力ブーストをかけ、瞬発力を向上させた。


 この操縦方法は人工筋肉の(しょう)(もう)を早めるが、今はとにかく瞬発力が欲しい。


 レクサ機の突進スピードは、GR-3〈サミュレー〉の最高自走速度とされる250km/h(キロ)を超えていた。




 機体の両手にそれぞれ構えたマルチランチャーから、光の(つるぎ)が伸びる。


 両手を脇に開いて構え、(きっ)(さき)を攻撃目標に向けた二刀流の中段構え。


 


 〈ミドガルズオルム〉の重なり合った装甲板。

 その(すき)()に、突きが迫る。


 二刀の切先を、ピンポイントで合わせた(いち)(げき)だ。




 しかし――




 激しい閃光。


 耳をつんざくような(ごう)(おん)と共に、レクサ機は後方へと弾き飛ばされた。


 剣で突いた部分には、焦げ跡が残っている。


 だがそれ以外に、大したダメージを与えた気配はない。




『なら、こいつはどう!?』




 パイロットが吠えると同時に、エリーゼ機の実体剣がビームソードの(ごと)く輝く。


 魔剣に魔力を伝導させて破壊力を向上させる、魔力伝導と呼ばれる剣技と魔法の複合技術だ。

 

 以前乗っていたGR-1〈リースリッター〉と比べ、今乗っているMG-2〈ユノディエール〉の出力は倍以上。


 さらにはエリーゼ自身の魔力量、魔力操作技術が飛躍的に上がっている。


 長剣が放つ、緑色の(かがや)き。


 その光量は、以前の比ではない。




 元々GR-3より、スピードで勝るMG-2。


 突進技は重量も大事だが、速度を上げたほうが威力は増す。




 魔力ブースト機動により、レクサ以上のスピードで突っ込んだエリーゼ。


 レクサと同じく、重なり合った装甲板の(すき)()を狙った突きを繰り出した。




 次の瞬間――




 「ガキーン!」という悲しげな金属音と共に、折れた刀身が宙を舞う。




『ああーっ! 折れたあーっ! 私の愛刀【エスプリ】がーっ!』




 魔道無線機から、半泣きになったエリーゼの悲鳴が聞こえてくる。


 しかし半泣き声とは裏腹に、彼女は意外と冷静だった。


 折れた剣の(つか)を投げ捨て、(いっ)(たん)〈ミドガルズオルム〉との間合いを切る。




「落ち着け、エリーゼ(フリーダム2)。それはマシンゴーレム用にコピーした、お前の愛刀【エスプリ】の模造品に過ぎない。いくらでも、【ファクトリー】で作り直してやる」


『うえーん、賢紀(フリーダム1)。どうせなら、今度はルーンタイトで作って。あの蛇野郎には、素材になってもらうわ!』




 果たして、それが可能だろうか?


 相変わらず無表情で冷静そうに見える(やす)(かわ)(けん)()だが、徐々に不安が押し寄せてきていた。




 手数ではこちらが圧倒しているが、(いま)だに決定的なダメージは与えていない。


 このままでは、こちらが先に消耗してしまう。


 パイロットも機体も、極限の戦闘機動(コンバットマニューバ)を続けているからだ。




『ゼフォー様。わたくしを、(とら)えることができまして?』


 魔道無線で呼びかけ、相手を挑発するアディ・アーレイト。




 彼女は機体を、空高く(ちょう)(やく)させた。


 (もた)げられていた大蛇の頭に接近し、両手に構えられた2丁のマシンガンでピタリと狙いをつける。


 至近距離から、激しい連射が叩き込まれた。


 口の中に銃弾が入るのを嫌い、〈ミドガルズオルム〉は〈アケローン〉で迎撃しようとはしない。


 しっかりと、(あぎと)を閉じている。


 しかし賢紀機の魔力センサーは、強大な魔力が口内に収束していくのを感知していた。




 アディ機がジャンプの最高点に達しても、〈ミドガルズオルム〉はまだ口を開かない。


 アディはそのまま大蛇の鼻先を踏みつけて、バックを取るように跳躍。


 その背後を追い、〈ミドガルズオルム〉は頭部をひねった。




 MG-2の操縦席(コックピット)には〈仮想全天周囲ディスプレイ〉という、360度、前後左右上下全てを見ることができる機能が採用されている。


 コックピット内でパイロットが視線を巡らせると、そちらの方向が見えるようになっているのだ。


 複数のカメラから得られた映像を〈疑似魂魄AI〉が自動的に合成し、視覚情報として操縦者の脳に直接フィードバックしてくれる。


 【ゴーレム使い】の能力【直結(フルコンタクト)】を、脳に負担がかからぬ範囲で限定的に行使するような機能だ。


 パイロットがシート上で振り返れば、真後ろの光景だって見える。


 つまりアディは、自分の背中を狙っている〈ミドガルズオルム〉に気付いていた。


 着地の瞬間、背中から撃たれる。


 そんなことは、承知の上での行動だった。




 〈ミドガルズオルム〉の口が、大きく開かれる。


 (あら)わになった〈アケローン〉には、充分な魔力が収束していた。


 マシンゴーレムを跡形もなく吹き飛ばしても、お釣りがくるほどの。




 アディ機は着地寸前。


 回避不能なタイミングで、無防備な背中が(さら)される。




 だが、全く問題はない。 


 なぜならアディが飛んだ、射線上には――




イースズ(フリーダム4)、頼みましたわよ』




 大蛇の口内に、装弾筒付翼安定徹甲弾(APFSDS)が突き刺さった。




 アディ機の動きも〈ミドガルズオルム〉の動きも、悪魔のような狙撃手(スナイパー)は全て予測していたのだ。




 発射直前だった〈アケローン〉が暴発し、(どく)(どく)しい紫色の爆炎が()き散らされた。


 〈ミドガルズオルム〉は、大きく上体を()()らせる。


 鉄の大蛇は首を(もた)げるのを()め、とぐろを巻いた胴体の上に頭を降ろした。




 今までで、最大のダメージだったはずだ。


 見た目に目立った損傷は無くとも、魔法障壁とルーンタイト装甲の強化で魔力を大量消費したはず。


 〈トライエレメントリアクター〉による、魔力供給が追いつかないほどに。


 そう考えていた賢紀は、絶望的な気分に襲われた。


 映像投影魔道機(ディスプレイ)に表示される、〈ミドガルズオルム〉の推定保有魔力量の数値を見て。




「全然消耗していないとは、どういうことだ?」




 状況は、さらに悪い(ほう)へと転がり始める。


 久々に無線の向こうから、ゼフォーの声が届いた。




『そうちょこまか動かれると、〈ミドガルズオルム〉の運動性では捉えきれないな。足を止めさせてもらおうか』




 賢紀機のコックピット内に、警告音(アラート)が鳴り響く。


 〈ミドガルズオルム〉の機体全身に渡って魔力が高まるのを、魔力センサーが捉えたのだ。




「全機後退。〈ディスペルチャフ〉、散布」


 賢紀が指示するよりも早く、何機かは後方に飛び退いている。


 だがそれでも、少々遅かった。




『〈アースシェイカー〉、起動』




 無機質な口調で、ゼフォーが言葉を発した直後だった。




 〈ミドガルズオルム〉を中心に、大地が激しく振動する。




 大地震という表現すら、(なま)(ぬる)い。




 地面が激しく(りゅう)()し、(かん)(ぼつ)し、のたうつ。




 その高低差は、数(メートル)にも及んだ。




 超人的な身のこなしが可能な第2世代型マシンゴーレムだが、大地に足を着けていなくては運動性を発揮できない。


 荒れ狂う大地の上で、まともに立っていられる機体など皆無。


 全機が吹き飛ばされ、地面に転がった。


 操縦していたのは、優れたバランス感覚を持つパイロット達であるにもかかわらず。


 高性能〈魔道演算機(エーテルプロセッサ)〉と〈擬似魂魄AI〉のアシストにより、高度な姿勢制御能力を備えている第2世代型マシンゴーレムであるにもかかわらずだ。




 〈ミドガルズオルム〉が使用した〈アースシェイカー〉は、大規模土魔法兵器。


 莫大な魔力を注ぎ込んで発動する。


 賢紀達が乗るMG-2の10倍近いリアクター出力を誇る、〈ミドガルズオルム〉ならではの武装だ。


 こういった魔法攻撃による足止めを防ぐために、MG-2には〈ディスペルチャフ〉が搭載されている。


 だがいかんせん、相手の魔法兵器が大規模過ぎた。


 〈ディスペルチャフ〉程度では、無効化しきれない。




 見れば帝国軍のGR-3も、魔法障壁を広範囲に展開するブースターを作動させていた。


 土魔法への抵抗を(はか)ったのだが、結果はMG-2と同じ。


 地面の上で、無力にシェイクされるだけだった。




『みんな! 大丈夫ね!?』




 イースズ・フォウワードが、皆を気遣う。


 かなり離れた狙撃ポジションにいた彼女だけは、〈アースシェイカー〉の効果範囲外だった。




 だが――




 イースズ機がいる方向へ向けて、細く収束された黒い光線が走った。




『あいたっ! (つう)ぅ……。こら、でけん。機体の右腕を、持っていかれたばい』




 さらに続けて、黒いプラズマのシャワーが辺り一面に降り注ぐ。


〈ミドガルズオルム〉が〈アケローン〉を拡散させ、散弾のように()き散らしたのだ。




 射程内にいた賢紀、エリーゼ、アディの機体は回避のしようがなく、四肢に損傷を受けてしまった。


 コックピット内には警告音が鳴り響き、ディスプレイには機体の損傷部分を知らせる赤い表示が踊る。




 ――全滅。




 そんな言葉が、賢紀の(のう)()(かす)めた。




「何か奴に、ダメージを負わせる手段はないのか?」




 (つぶや)いた【ゴーレム使い】には、心当たりがあった。


 ――こうなったら、「アレ」を使うか?


 いやいや。

 ダメだ。


 「アレ」はまだ、使いたくない。


 テスト不足であるし、帝国にも見せたくない。


 試作段階である「アレ」を実戦に投入するなど、ポリシーにも反する。


 おまけに「アレ」を出すと、色々と騒がしい。




 自らのアイディアに(おう)(のう)した(あげ)、「却下」という結論を出した賢紀。


 しかしエリーゼが、せっかくの決断を否定するようなことを言い出した。






『ケンキ……。こうなったら、Xナンバーズを使いましょう』






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