大阪名物はタコ焼き
今週の投稿は少ない…
来週も少ない…
再来週は?
少ないかも…
今気が付きました。
69話が飛んでました。書いたのがあった筈…と、探したのですが、見当たりません。
思い出して書こうにも、内容が捻じ曲がり、上手くいきません。なので、無いままでいいかなぁ〜なんて…。
港を発ってから三日が経った。
リョーガ達は今日も呑気な船旅を謳歌している。
ユースは薬が効いたのか、酔いを感じない動きで船内を探検しており、リリィはクリムと共に操縦室。リョーガとエリオスは、日課になり始めた釣りの最中だ。
今日も今日とてノンビリと時は過ぎるーー筈だった。
リョーガがとある魔物を”釣り上げる”まではーー。
ーーー
甲板の手摺りに竿を立て掛け、魚が掛かるのをひたすら待つリョーガとエリオス。
エリオスは暇を持て余しており、手摺から顔を覗かせて海に落ちそうになったり、甲板内を歩き回ったりと、落ち着きがない。
それに対してリョーガは、竿に手を掛けてジッと魚が餌に食らいつくのを待ち続けている。
心を無にして、両目を瞑り、糸が引くのを待ち構える不動の姿は、まるで、お寺などで崇められる大仏のようだ。
そんな時、突如リョーガの両目がカッと開かれた。
「っだらしゃァァァァァ!!」
気合の入った声を吐きながら、竿を強く掴んで立ち上がると同時に竿を力一杯引く。
そして、海から力づくで引き上げられた巨大な魚が空を舞い、優に10㍍は超えている魚がドンッと甲板に落下した。
普通ならば、この後に釣り上げた魚の針を抜いて終わりだが、ここはリョーガの居た世界ではない。
大きいだけで驚異の感じない魚だが、正真正銘の魔物だ。放っとけば襲ってくる。
だからリョーガは、すかさず魚に一発の拳骨を食らわして瀕死状態に陥らせ、手招きでエリオスを呼ぶ。
少し離れた位置から魚を釣り上げる瞬間と、殴る瞬間を見ていたエリオスは、駆け足で魚の元までやってきて、口に手を突っ込んで針を抜く。
そして、抜いた針に新たな餌を取り付ける。
これで、リョーガが釣り上げた魚の数は26匹になった。
それなのに、エリオスは未だに1匹も釣れてない。
「今度のはデケェな。そんじゃ、コイツを倉庫まで運んでくるとするか…」
魚の口に手を掛けて運ぶ途中にチラッとリョーガを見れば、既に定位置に着いて海に糸を垂らしている。
エリオスからしてみれば熱心に魚釣りをしているように見える。だが実際は、
「暇や…」
本音を隠す事が出来ない程に暇を持て余していた。
リョーガはこう見えて動かない事に関しては誰よりも得意だ。だから、釣りで暇潰しが出来る。
だが、釣りは趣味ではない。好きか嫌いかで言えば好きの部類に当たるが、数日間もの間、毎日欠かさず続ければ流石に飽きる。
かと言って、する事なんて無い。
無さすぎる。
陸の上ならば、ギルドで依頼を受けて暇潰しと言う名の金稼ぎが出来る。
だが、ここは海の上。暇潰しになる事なんて望遠鏡を覗いて何もない海上を眺めるか、無駄に砲台を撃ちまくったりするぐらいだ。
ちなみに、砲台で遊んでいた際にはクリムにこっぴどく叱られた。
それと、砲台が使えないように武装解除までされ、他の武装も使えなくされていた。
タバコを新たに一本取り出して吸い始める。
モクモクと紫煙を立ち昇らせながら、魚が釣れるのを待つ。
と、そんな時、また釣り糸が反応した。
即座に立ち上がり、力づくで引っ張ろうとする。が、その前に竿を持つ手に強い衝撃が加わった。
それは、何度か感じた事のある感覚だ。
その時は必ずと言っていい程に、魚が二匹同時に釣れる。
餌に食い付いた魚を、より大きな魚が食らう。そうする事で、二匹釣れるのだ。
胃袋に収められた魚を取り出すと言った後処理は全てエリオスがするのだが、リョーガには関係なさそうだ。
彼の頭の中にあるのは『釣る』の一言だけだ。
「っだらっしゃァァァァァ!!」
新たに重みが加わった所で、リョーガには関係ない。これまで以上の力で釣り上げるだけだ。
そんな考えで竿を力づくで引っ張る。そして、海から強制的に空へと移動させられたのは、魚ーーではなく、タコだった。
横幅30㍍越えの甲板を埋め尽くしても足りない程の巨大さ。ウネウネと動く8本足。その中央から伸びる鋼鉄の釣り糸。全長だと100㍍は下らない。そんなタコが釣れた。
さすがのリョーガも、余りの巨大さに空を見上げてポカーンッと口を半開きに。
戻って来たばかりのエリオスも同じように空を見上げて呆けている。
彼等の姿を影で覆い隠し、それでも尚足りず、船の前部を覆い隠す。
僅かな時間が、引き伸ばされたかのようにゆっくりとタコは落下する。そして、船の上に。
慌ててリョーガは退散し、艦橋へ。
エリオスは逃げ遅れてタコの下敷きとなった。
タコが落下した衝撃で船は大きく揺れ、危うく沈没しかけたが、さすがユートが造ったものではある。
ほぼ海面に垂直になったにも関わらず、船は沈む事なく着水した。
「た、助けてくれぇ〜」
哀れな子羊の声がタコの下から聴こえてくるが、リョーガは目の前のタコの大きさに驚きを隠せないでいる。
そんなリョーガに朗報だ。
ピンポンパンポーンと木琴を叩いたような陽気な音が鳴ったと思えば、船内放送が流れた。
『あー、あー、テステス。コホンッ、クリムなのですっ!リョーガさんが海の大悪魔”クラーケン”を釣り上げた所為で水圧機と動力源に異常が発生したのっ!急ぎ、予備動力に変更し、修復を開始するのっ。だから、その間に”クラーケン”を退かして下さいなのっ!このままじゃ沈んじゃうのっ!!』
少し焦りが混じった怒り気味な口調で早口に報告してから放送が途切れた。
しかし、放送はそれで終わりじゃなかった。数秒後にまたもや放送が入ったのだ。
『あれ?これで流れてるのかしら?あー、あー。流れてるっぽいわね。…すぅーー、アンタなんて事したのよ!責任取ってなんとかしなさいよ!!クリムちゃん泣いて走ってったじゃないのよ!!ちゃんと後始末しなさいよ!』
海の彼方まで届くのではないかと言う程に大きな声で、リリィのお叱りの言葉まで頂いた。
そんな言葉を投げかけられた当の本人はと言うと、怒られているのを理解しているのかどうか、艦橋で胡座をかいて考え事をしていた。
「今日の晩飯はタコ焼き…けど、タコ焼きも捨てがたい…うーむ。俺はどっちを選べば…」
目の前には巨大なタコ。船内には釣り上げた魚。
その他にも、果物や野菜など食に困らないようにする為の配慮か、船には山ほど食料がある。
だから、リョーガは迷った。
今日の晩飯を何にしようかとーー。
「今はそれどころじゃないですよリョーガさん。あの”クラーケン”?をなんとかしなきゃですよ」
リョーガの背後から声が聴こえて振り返ってみれば、そこにはユースが立っていた。
その表情は『またですか…』と語っているようで、リョーガの言動に呆れ果てているようだ。
「さっき、リリィさんとすれ違ったんですけど、『女の子を泣かすなんて最低ねっ!』って言ってましたよ。何したんですか?」
「何って、魚釣ってたら、でっけぇタコ釣れてんよ」
リョーガは巨大なタコーークラーケンを指差して言う。
クラーケンはウネウネと8本の触手を海に沈めており、まるで戦艦に掴まっているような格好になっている。
「それだけですか?」
「たぶん、それだけやと思うで?」
背後でクラーケンが触手を使って船を締め上げ始めた。ついでに下敷きにされているエリオスを圧迫死させようとし始めた。
なのに、彼等の行動はノンビリだ。
「それじゃあ、さっき言われてた通りに早く退かした方が良いんじゃないですか?」
「んじゃ、ユースやってや。俺見とくから」
「僕一人であんな大きい魔物と戦うなんて出来ませんよ。リョーガさんも……あれ?エリオスさんは?」
今頃ながらにエリオスが居ない事に気が付いたユースは周囲を見渡してエリオスを捜す。
そんなユースに場所を教える為にリョーガはタコの下に指を指し、それを見たユースは納得した。
「いつも通りですね」
「いつも通りや」
うんうん。と頷き合う二人。
後方ではクラーケンが暴れ始めて主砲を引き抜いたり、甲板を触手で叩いて穴を開けたりしているのに、彼等の周りにはお花が咲きそうな程にノホホンとした空間が広がっている。
「話を戻しますけど、リリィさん鬼のように怒ってましたよ。早くアレをなんとかした方が良いんじゃないですか?」
「あぁー、アレね。エリオスがなんとかすんちゃう?」
「エリオスさんに期待しちゃダメですよ。今なんてアレに下敷きにされてるんでしょ?だったら、リョーガさんが動くべきじゃないですか?」
意外と辛烈な言葉をサラリと吐くユースだが、この場にはツッコミを入れる被害者エリオスは居ない。
絶賛、クラーケンの下で『死んでたまるか』と、もがいている。
「えぇー、めんどーい」
リョーガのヤル気メーターはゼロのようだ。
大の字に寝転がって横目でクラーケンの暴れっぷりを見守っているほどだ。
「リリィさん、怒ってますよ」
「………」
ユースの一言が少し堪えたのか、寝返りを打ってクラーケンの方へと身体を向けた。
「この事をリリィさんが知れば、どう思うでしょ?」
「………」
リョーガの背中がモゾモゾと動く。
「僕はやります。精一杯やります。一人じゃ無理ですけど、一応やるだけやってみます。リョーガさんはどうします?」
「………」
リョーガの動きが止まった。
だが、返答はない。
「リリィさん、怒ってましたね。物凄く怒ってましたね。もしかするとリリィさん、僕達の前から立ち去ってしまーー」
「だぁぁぁぁ!!クソッ!分かった!分かったから喋んなボケ!!」
立ち上がり、からのユースの頭をむんずっと掴んで言い終えると同時にクラーケン目掛けて投げ飛ばした。
ユースはリョーガに掴まれた瞬間に逃げられない事を悟って諦めを覚え、されるがまま投げられ、クラーケンの頭部に衝突した。
パンッと何かが破裂したような音が聴こえると共にグニョッと変な感触がユースの頭に感じ取れ、ポテッとクラーケンの足の上に落ちる。
クラーケンの全身はヌメヌメとしており、粘液まみれだ。それに、感触はグニョグニョで、まるで水風船の上にでも立っているように感じる。
そんな場所に不安定ながらに立ち上がるユース。愛用している短剣を腰から引き抜き、取り敢えずと言った風に足元のクラーケンの脚に突き刺す。が、刺さらない。
刃が通らないのだ。何度も試すが、やはり刺さらない。
諦めて座り込んで艦橋の方向へと視線を向けると、そこには剣の投擲準備に入ったリョーガの姿がーー。
「う”らぁっ!!」
獣を思わせる気合の入った声を吐きながら剣を投擲するーー空に向かって。
クラーケンの図体は大きい。だから、外す事はないと思ったのだろう。
だが、忘れて貰っては困る。リョーガは魔物を倒すに限ってはノーコン野郎なのだ。
幾ら投げようと、なぜか投げた方向から軌道が捻じ曲がって空へと飛んで行く。
「なんでやねんっ!!」
新たに出した剣を床に叩きつけて怒りを剥き出しに地団駄を踏むリョーガ。
「リョーガさ〜ん。もう直接殴った方が良くないですか〜?」
刃が通らないから諦めて座り込んでしまったユースは呑気な声で言った。
だが、リョーガなりに考えがあって剣を投擲しているのだ。
「そんなベトベトなヤツに触りたないわ!」
そう。クラーケンはウネウネと動く粘液まみれの魔物だ。触れば粘液でベトベトになってしまう。現にユースがそうなってしまっている。
(相変わらず自分勝手です…)
そうユースが思ったのも仕方ないだろう。
その後、何度か投擲を繰り返すリョーガ。だが、一本たりとも当たる事はなかった。
投擲された剣は明後日を通り越して、明々後日の方向へ向かう。
「もうええわ!」
新たに剣を二本。両手に取り出してから艦橋から飛び降りて近くにあるクラーケンの脚を切る。
ユースの短剣は一切刃を通さなかったと言うのに、リョーガの謎が多い剣はすんなりと通り、スパッと素晴らしい切り口を残して斬り落とした。
そこで、ようやくクラーケンはリョーガとユースの存在に気が付いて巨大な頭を振り向かせて赤い双眸を二人に向けた。
怒りを露わにしているのか、残りの7本の触手を海から出してウネウネと動かせながら二人を攻撃しようと触手を伸ばす。
だが、二人からすればそんな事は無意味に近い。
ユースは襲い来る触手をヒョイヒョイと身軽に避けるし、リョーガに至っては「今日の晩飯はタコ焼きじゃぁ!」と叫び、獲物を見つけた狼のように目をギラつかせながら触手を切り落としまくる。
それは余りにも戦闘とは言えない行為。
海の大悪魔と恐れられた筈のクラーケンが手も足も出せない。
クラーケンは驚愕と怯えを見せるが、時すでに遅し。
リョーガに手をーー触手を伸ばすと即座に切り落とされるのだ。しかも晩飯の為だけに。
遂にクラーケンの足が残り二本になった時、もう耐えれないとばかりにクラーケンは海に身を投げて逃げ出した。
追って、リョーガも海へとダイブ。
海に入る際に体制をミスったのか、バチンッと痛そうな音が鳴った。
だが、リョーガは特に痛みを感じてないようで、海中で浮き上がるまでの時間を使って周囲を見渡してクラーケンを探す。
海の中は青く、そして、深くなるにつれて黒く深淵へと続いているかのように見える。
だが、クラーケンの姿は見受けられない。
もう少し目を凝らして探してみると、陽の遮られた船の下に隠れているのを見つけた。
クラーケンを見つけた時のリョーガの表情と言えば、そりゃもうコイツが悪魔でいいんじゃないかって程に凶悪面をしていた。
そして、目があった。
クラーケンは海の中でなら勝てるかと思ったのか、残った二本の触手を伸ばして攻撃を仕掛ける。
だが、相手はリョーガだ。
リョーガお得意の犬かきでクラーケンの元まで泳いで進みながら、剣を取り出す。
そして、いざ迎え撃とうとした。が、息が続かなくなり、急いで海面へとーー向かえなかった。
触手に脚を掴まれて、引き摺り込まれたのだ。だが、さすがリョーガと言えよう。
足に絡みつく触手を力任せに引き千切って海面まで犬かきで戻った。
そして、大きく息を吸って海中へと潜る。
その瞳は怒りを宿し、必殺の意が篭っている。
そんなリョーガに勝てないと悟ったクラーケン。最後の一本の足を駆使して逃げ出した。
リョーガは追い掛ける。まともに泳げないから犬かきで追い掛ける。
だが、所詮は犬かき。どれだけ力が上がろうとも、犬かきは犬かきだ。
ーー進まない。
追い掛けるなんて夢のまた夢。
タコ始末の夢半ばで潰え、諦めて浮上。
そして、船に上がれず、ユース達の助けが来るまで海の上でプカーンと浮く羽目に。
それでも『これもまた良し』と前向き思考なリョーガであった。
その後、晩飯がタコ焼きになってリョーガが大喜びしたのは言うまでもない。




