喧嘩と言う名の決闘
遅くなりました。
バトル描くの苦手で、時間が無駄に掛かりました。
書いては直して、書いては直して、遂には諦めて、などもありましたが、ようやく描き終えました。
誤字とか、おかしな所、多そうですね…
冒険者ギルドの地下。そこには、闘技場が存在する。
少し深めの所に造られた闘技場は、地上にある冒険者ギルドの何倍もあり、広さは大体サッカーの試合が出来そうなほどあり、長細い。
造るのは大変苦労しただろう天井は、正方形の石で敷き詰められており隙間一つない。地面は砂が敷き詰められており、柱の類はなく、石だけで天井を支えているように思える。
壁は、古びた木の板で地肌を隠すように貼ってあり、傷付いてできた隙間や、腐って落ちた物などから地肌が見えている。
扉は金属で出来た物を使用されており、その近くには観客だろう冒険者達がいる。一部、冒険者とは思えない程に豪華な服を着た者達も居たりする。
その中には、ニアカント達の姿も見受けられる。
冒険者やその他の人達の視線の先には、二人の男性が居る。
一人は二〇代後半に見える短めの髪型をした男性。体型はスマートで、程よく筋肉が付いているのが服や鎧の上からでも分かるぐらいにガタイが良い。軽装鎧を全身に纏い、背には二メートル程の槍を背負っており、よく見ると、頬に薄っすらと傷跡が付いている濃い緑の髪質を持った冒険者だ。
もう一人は、凶悪な目付きが特徴的な少年のように見える男性だ。武器の類や鎧の類は一切身に付けておらず、肩まで伸びた髪は金、茶、黒と混ざっており、体型は細い。そこまで身体は大きくなく、この世界の人達の基準で見れば、軟弱な子供である。
二人は十m程の距離を取って、睨み合っている。今にも、戦いが始まりそうな感じだ。
「では、ものすっごーーく久し振りな決闘を執り行います!」
「おぉー!良いぞー!!」
「楽しみにしてるぜぇ!!」
「Sランクのエリオス対、ルーキーか…楽しみだ…」
「やっぱり、Sランクが勝つのかな?」
「いや、あの人、ずっと酒場で酒ばかり飲んでるから腕が鈍ってるんじゃないかな?」
受付嬢が彼等の間に入り、妙に気合の入った声で進行役をする。
彼女の発言により、冒険者達は拍手や雄叫びを上げて場を盛り上げた。服装が豪華な方々は腕を組んで彼等を見ているだけだ。
「両者、名乗りを上げてください!」
そう言ってから一歩下がり、右手を男性冒険者、左手を少年に向ける。
「それじゃあ、俺から言わせてもらうぜ!」
男性冒険者が背中の槍を取って言葉を続ける。
「俺の名はエリオス!Sランク、狂飆のエリオスだ!」
「良いぞエリオス!!」
「ガキに冒険者の教えを躾けてやれ!」
「ふむ。どっちが勝つのか見ものだな」
「やはり、Sランクのエリオスかと思われます」
ゆっくりと、構えの体制に入りながら名乗った。それに、観客達は歓声を上げたりして、場が盛り上げ始める。
受付嬢はエリオスが名乗ったのを聴いてから、次に少年の方へと問うような視線を向けた。観客達は黙り込み、少年が名乗るのを待つ。
「俺か。俺はリョーガや。崇め奉りやがれ」
どこからか黒い無骨な直剣を取り出し、構えながら偉そうに言った。
受付嬢も観客達も彼の名乗りに納得いかなそうな表情をしたが、受付嬢は決闘を続行させる。
「で、では、両者、構え!…は、しているみたいなので」
何歩か後ろに下がり、少しの溜めの後、開始の合図を口にする。
「……始め!」
刹那、闘技場内に突風が吹き荒れた。
突風とも強風とも言えるそれは、砂を巻き上げ、壁の木の板は軋みを上げ、崩れ掛けの物は風によって抉り取って行く。
「行くぞ!」
エリオスがそう言うと同時に、突風が一箇所に集まって闘技場のあちこちで風の塊と化した。
その中には、細かな砂やズタズタに引き裂かれた木の破片なども含まれており、触れれば怪我では済まないだろう。
「『ストームボール!』」
粉砕機と化した風の塊ーーストームボールがリョーガ目掛けて一直線に飛んで行く。
だが、それを目視していながらもリョーガは撤退をしない。感心したような、羨ましそうな表情でストームボールを見ているだけだ。
ストームボールが目前にまで迫っても、彼はそれを見つめ続け、何をする事もなくストームボールの餌食と化した。
爆発するかのように、溜め込まれていた小型の竜巻が周囲の地面を深く抉り、大気を切り刻んだ。その威力は絶大だ。
一瞬にしてリョーガを切り刻み、全身に傷を付けてなお止まらない。
地面を抉った拍子に砂埃がリョーガの姿を隠し、大気を切り裂いた拍子に突風が闘技場を駆け抜ける。
受付嬢は疎か観客達でさえリョーガの身を案じた。
なにせ、エリオスが使った魔法は、どこからどう見ても、粉塵機に掛けるが如く、相手を木っ端微塵にする魔法なのだ。
死んでないか。と心配する受付嬢達を他所に、次々とストームボールは容赦無く砂埃の舞う中心へと向かう。
ストームボールが破裂すると、風が吹き荒れ、地面が深く削られ、大量の砂埃が闘技場に立ち込める。
「なんだよ。見えねぇじゃねぇかよ」
「シッカリしろよ〜」
「あいつ、あのガキ、死んだんじゃねぇか?」
「リョーガ、大丈夫なのか…?」
「リョーガだから、大丈夫じゃないかな?」
「あのお兄さん、やっぱり無茶だったんじゃ…」
闘技場内を換気する術はなく、砂煙によって周囲が真っ茶色に染まる。一寸先も見えない程だ。冒険者達は口々に愚痴などを言っている間、受付嬢は咄嗟に換気をしようと二つある出入り口を開けに向かい、冒険者達は砂煙が晴れるのを今か今かと待つ。
その中で、豪快でいて嘲笑うかのような笑いが響いた。
「ふっ、ふふふっ、ふははははっ、アカン、笑えるわ」
時が止まった。そう誰もが感じた。
リョーガの声が聴こえると同時に底知れぬ恐怖がネットリと彼等に絡み付き、背筋に冷たい汗を流れ出させる。
「ーー使えたわ」
その一言で、何が起きたか彼等は理解した。一人の冒険者が何か違和感を感じて足元を見た。そして、凍りついた。それに気が付いた冒険者達も自分の足元を見て、固まった。
動けないのだ。否、動いたりすれば死ぬかもしれない。と不安を抱かせたのだ。
彼等にそう思わせたのは、足元の地面がなくなっていたから。いや、砂の地面が全ての光を吸い尽くす程の暗闇へと変化していたからだ。
そこに足場が本当にあるのか。自分が立っている場所に足場などは本当にあるのか。今すぐにでも暗闇へと落ちるかもしれない。そう冒険者達に思わせる暗闇だ。
唯一、彼等の正気を保たせたのは、辺り一帯を埋め尽くす砂煙だけだ。だが、それもすぐになくなってしまった。
足元の闇からシャボン玉のような泡が浮き出てきて、砂煙を吸い込み始めたのだ。
まるで、球状のブラックホールの如く、砂煙を吸い込むシャボン玉。吸い込む量に終わりはなく、永遠と吸い続ける。その玉を見ていると、そこにポッカリと穴が空いているかのように見え、見ているだけで吸い込まれそうに感じる。
砂煙が徐々に晴れて行くと同時に目の前の光景が鮮明になっていく。そして、この場の誰もが息を呑んだ。
「う、うそ…だろ…」
暗闇は地面だけではなかった。部屋全体が暗闇へと変化していた。まるで、別世界に連れてこられたように思える真っ暗な空間。
光を全て吸い込む程の暗闇。なのに、なぜか周りが見える。驚き、恐怖している人達の姿が見える。
この暗黒世界に居ると、どこに自分が立っていて、どうやって生きているのかすら分からなくなる。理解ができず、恐怖が、怯えが忍び寄ってくる。
「まさか…”黒魔法”……」
冒険者の誰か。いや、リョーガのステータスに記載された魔法の事を知るごく僅かな人物であるルミネが呟いた。
「ほぅ、これがあの伝説の…」
感心したような声が冒険者達の中から聞こえた。
「おいおい…なんだよこりゃ…」
エリオスは自分の目を疑い、恐る恐る足場があるかの確認をしている。
「やっと、やっと使えたわ。めっちゃ嬉しいわ」
途轍もなく凶悪な笑顔で喜ぶリョーガ。それを見ているのはエリオスだけだが、彼の表情を見れば誰もが思うだろう。
ーー鬼だ、と。
「ほな、続きや」
そう言うや否や、リョーガは剣を捨てて警戒を疎かにしてしまっているエリオスに素手で殴り掛かった。
目前まで迫った拳を見て、我に返ったエリオスは咄嗟にリョーガの攻撃を槍で防ごうとする。が、それはリョーガの圧倒的な攻撃力の前には無力だった。
「うっ!?」
鉄製の槍は半ばがグニャリと歪み、余りの威力に呻き声を漏らしたエリオスの身体が軽々と吹き飛んだ。リョーガの攻撃により発生した衝撃とも言える拳圧が唖然としている観客達の方まで届き、彼等の髪や服を揺らす。
「カハッ」
そこに壁があるのか、誰も分からない。だが、壁のような場所に背中から激突して、肺の中に含まれていた空気が全て抜けた。
深い底なしの暗闇を思わせる場所にドサッと崩れ落ちる。
刹那、暗闇から触手のようなものが伸び、エリオスを拘束した。
まるで鋼鉄を思わせるような冷たさと硬さを持った暗闇の触手。なんとか立ち上がろうとするエリオスだが、地面に張り付けられた状態で拘束され、立ち上がる事ができない。
「すげぇな魔法って。こんな事もできんねんな」
一度親指を立ててから、地面を指差す。
それだけで、天井の暗闇が針の形をしてエリオスへと伸びる。
そして、体に当たる寸前で停止した。
下は底無しを思わせる暗闇。地面などないように思えるのに、砂利のような感触がする。
上も同じような暗闇。なのに、深淵のような暗闇が針山となってエリオスへと先端を向けている。
「俺様の圧勝!んでから、お前は雑魚!」
親指で自信を指差してから、人差し指をビシッとエリオスに突き付けて言った。
その間に、リョーガから一番離れた所から暗闇が消えていき、まるでリョーガに吸い込まれるように全てが消えた。
誰も理解のできない圧倒的な力。理解が出来ない為、脳が今の状況を処理できず、混乱してしまう。
だが、これだけはハッキリとしている。
「強い…」
観客達の中の誰かが呟いた。それは、誰しもが思った事を代弁した言葉だった。
槍を一撃で破壊した力もそうだが、なによりも彼等にそう思わせたのは、リョーガ使った理解不能の魔法だった。
この街の闘技場は比較的に小さいが、それでも、魔法によって部屋全体を暗闇で覆ったのだ。それだけで、彼は莫大な量の魔力を持っている事が分かる。
ワッハッハッと胸を張って偉そうに笑うリョーガ。未だに混乱した脳で、己の敗北を知ったエリオス。
唖然と自らの目を疑う観客達や受付嬢を全く気にせず、彼は、リョーガは一人で勝利に酔っていた。
ルミネ「黒魔法、よかったね」
リョーガ「おうよ!やっと使えたわ」
ルミネ「でも、どうして使えたの?」
リョーガ「ああ、あいつの魔法見てたら、なんとなく出来るかな?って思ってさ」
ルミネ「……?それだけ?」
リョーガ「おん。出来るかな?って思ったら、出来てんよ」
ルミネ「はぁ…やっぱり、リョーガはリョーガね…(ボソ」
リョーガ「ん?なんて?」
ルミネ「いえ、こっちの話だから」
リョーガ「そか」




