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乱入者VS黒騎士部隊

あああ…


余裕がなくなって来たでごわす


一日に一話って、やはり無理があるんじゃ…


勇者達とリョーガの間に、ズドォォオンッ!と本日二度目の落下物。

砂埃が捲き上る。それを煩わしく思ったリョーガは剣を一振り、即座に砂埃を掻き消した。


そして、そこに現れたのは。


「なんなんだよ。って、お、おい、アレって噂の…」


「マジかよ…なんでこんな所に…」


「”ソラの瞬き”のリーダー…ソラ……」


観客が口々と新たに現れた乱入者を見つめて呟く。


少年少女の孤児を拾い、大きなキャラバンを率いるリーダーのソラ。その噂がここにまで来ていた。否、今では、知らない人は居ないと言われる程に有名である。

だが、乱入者はそのリーダーであるソラではない。真っ白の仮面にある一文字に結ばれた口と両目を覆うゴーグルがその証拠である。


「………」


新たな乱入者ーーネモは何も喋らない。首を動かして、周囲を見渡している。


「「………」」


ネモの出現により、警戒よりも先にリョーガは怒りを、勇者達は驚愕を露わにした。


それもそのはず。リョーガは今から良い所だったのを邪魔され怒りを露わにした。勇者達はリョーガに集中していた為、予想外の事が起きて驚いてしまったのだ。


周囲を一通り確認したネモは、一歩、二歩とリョーガの方へと歩いて行く。

勿論、リョーガは警戒した。目の前の存在が、全く未知の存在であり、人間かどうかも怪しいのだ。いや、人間ではなかった。


「いっ!?」


「な、何アレ!?」


「バ、化け物!」


「こ、こっち見てる!見てるぅ!!」


勇者達は突然のネモの奇怪な行動に狼狽えた。

ネモの首が一八〇度グルリと回り、後方の勇者へと視線を向けたのだ。


ギギギッと首から鳴らしながら、首をもう一八〇度回転させ、リョーガへと視線を戻した。ちょうど一回転だ。


「ハッ、ハハハ…お前、人間やないやろ」


「………」


リョーガは乾いた笑みを浮かべて尋ねたが、ネモは何も答えない。無言で歩みを進めるだけだ。


「た、隊長!その者は危険です!即刻退避して下さい!!」


リョーガの背後の影から気配も感じさせずに現れた者達が注意を促しながら飛び出した。


それは、リョーガと同じ鎧を着た黒騎士達。若干、リョーガの鎧よりは薄黒い鎧は所々汚れ、傷も目立つ。まるで、戦った後のようにも見える。

だが、そんな事など御構い無しに、黒騎士達はリョーガを守る体制に入った。


次々にリョーガの影から出てきた黒騎士達は、リョーガの前で薄黒い剣を手に構え始める。


誰も予想だにしなかった事だ。


「ま、まさか…く、黒騎士部隊…」


これまで何も言わずに黙って観客と化していた兵士のリーダーが呟いた。


「隊長、黒騎士部隊とはなんですか?」


近くに居た兵士は、隊長(リーダー)の言葉を耳聡く拾い、尋ねた。

だが、それに答えたのは、別の者。後方に居た噂好きの冒険者だった。


「大の兵士が黒騎士部隊も知らねぇのかよ」


視線の先で、立ち止まったネモと黒騎士部隊が睨み合ってるのを注視しながら言葉を続ける。


「黒騎士部隊ってのはな、魔王直属の第六部隊で、黒騎士だけで構成された超隠密部隊の事だ」


それは噂ではなく、事実である。知っている人ならば、誰でも知っている。案外有名な話だ。


「隠密だけでなく、戦闘技術も一流と来た化け物集団。一人でオーガ一匹を討伐できるって噂だ」


そんな奴らが、なぜ。と、僅かに考え、即座に結論へと至る。


ーー勇者を殺しに来た。


考えなくても、彼等が動くと言う事はそう言う事なのだろう。

古くから、彼等の行動は改革を起す者を闇に葬ってきていた。同族である魔族も、人間達も、魔王の言葉一つで動く暗殺部隊。


だが、名前の通り、騎士としての自覚もあり、闇討ちばかりではない。決闘も行うし、正々堂々と戦う事もある。


だが、今の彼等を見ていると、全くそう言う風には見えない。

明らかに怯えているのだ。


たった一人の人物に怯えている。それは、誰が見ても明らかだ。

ネモが一歩進むごとに黒騎士達は一歩下がる。ジリジリと一定間隔の間合いを取ったまま、後退している。


彼等も騎士として恥ずべき行動なのは理解している。が、そうせざる終えない理由があるのだ。


ネモはおもむろに片手を持ち上げて、黒騎士達へと向ける。


その瞬間、黒騎士が居るすぐ目の前が爆ぜた。何が起きたかなど誰にも理解のできない不可視の攻撃だ。そのせいで、警戒せざる終えず、近寄る事もできない。


トンッと黒騎士の背がリョーガとぶつかった。刹那、黒騎士の真下の地面が爆ぜ、宙を舞った。


ガシャンッと音を立ててリョーガの後方へと落下した黒騎士。原型は止まっているが、ピクリとも動かない。


「く、クソォ!!」


黒騎士の一人が手の平をネモへと向ける。すると、そこから薄黒い礫が幾つもネモ目掛けて飛来する。

避ける事は不可能な面による攻撃だ。だが、その全ては、まるで壁でもあるかのように、ネモの目前で全て止まり、地面に落ち、霧散した。


また別の黒騎士は無謀にもネモへと向かって突進した。後方で地面が爆ぜるのも気にせず、捨て身の覚悟で剣をネモに振り抜く。

が、それは腕を翳す事によって容易く止められ、ついでとばかりに、黒騎士の脇腹へと力の乗っていないような軽いパンチが繰り出された。そして、どう言う原理なのか遠方へと吹き飛ばされた。


近接戦も、遠距離戦も、全く意味を成さない。彼には全く効果がない。否、彼等には、だ。


「お前、何者(なにもん)や?」


リョーガは再び疑問を口にする。黒騎士達の悲惨な最期を見ているのに、全く気にした様子はない。


「た、隊長?」


黒騎士の一人がリョーガの言葉に本当に自分達の隊長なのか。と疑問を持って、声を発したが、リョーガには聴こえていない。


「………」


リョーガは、ネモの返答を待つ。だが、ネモは喋らない。まるで、口がないのではないか。と思う程に喋らない。


だが、行動で示した。


ポケットに片手を突っ込み、ある物を取って、リョーガへとポイッと投げる。

一瞬取り落としそうになるリョーガだったが、それを受け取った。

そして、一応ネモを警戒しながら、受け取った物へ視線を向けると、固まった。


ワナワナと身体を震わせ、鎧をカタカタと鳴らした。


「ユート…お前、ユートなんか!」


「そうなんやろ!?」と期待と渇望を織り交ぜた感情で確信を持った疑問を投げ掛ける。


だが、ネモが首を縦に振る事はない。ゆっくりと、首を横に振って否定する。


リョーガは、それでも手に持つ物が彼を本物だと信じて、黒騎士達の停止の声も聞かずにズカズカとネモに近付いて肩をムンズと掴んで必死さを露わに問いかける。


「なぁ!お前なんやろ!おふざけは要らんねん!」


肩をガクガクと揺らして訴え掛ける。それでも、ネモは首を横に振る。


遂に我慢の限界に来たリョーガは本人かどうかを確認する為にネモの仮面へと手を伸ばした。が、それはネモの手によって止められた。


「ふ、ふざけんな!顔見せろや!」


ネモの手は、そこに置いているように見えるのに、その握力は鎧を凹ます程で、リョーガの力を持ってしてもビクともしない。


もう片方の手も突き出して、ネモの仮面を引っぺがそうとする。と、突然目の前が真っ暗になった。


即座に顔を逸らし、視界を隠した物が目に入った。

それは、手紙であった。


『俺の友 リョーガへ』


と、表面に記載された手紙だ。無駄に筆圧が強く、特徴的な雑な字。それをリョーガは見逃すはずがない。間違いなくユートのものだ。


バッと手紙を引ったくるように受け取り、その場にしゃがみ込んで恐る恐る手紙を開き、内容を読む。


『よっ、事後報告で悪いけど、俺は一応生きとんで。

生憎と死に損ねたわ。笑


先に言うとくけど、仮面のやつは俺やないで。

この世界でお前一人を見つけんのは俺一人じゃ無理そうやから、頼んだんよ。そいつの名前はネモやから。そこんとこ、よろしく〜。


どうでもええと思うけど、俺は今、迷宮のラスボス倒して、地上に出る所やねん。


ま、それは放っといて、本題やけど、俺、元の世界に帰りたいって思ってんねん。

ネモがお前の現在地を俺に教えてくれたから、俺はたぶん、お前に会えると思う。

今度、会える時までに決めといてや。


それとな、ネモはそいつ一人じゃないから。世界中にわんさか居るから、捕らえるとかやめたってな。可哀想や。


追伸。


リョーガの荷物の他、タバコやらなんやらと先に渡したい物あるから、この手紙に魔力流してちょんまげ』


ユートらしく、とても巫山戯た内容だった。歓楽的で、一番大事な所を端折ったり、無駄に先の事を考えていたり、人の事を想う所は、本当にユートらしい。


「ズズッ…」


風邪も引いていないのに、鼻をすするリョーガ。ヘルムで顔が隠れて、彼はどんな顔をしているか分からないが、もし、ヘルムが無ければ走り去るのは間違いないだろう。


「た、隊長?」


突然の奇行に走ったリョーガを心配するように声を掛ける黒騎士。彼等は未だに彼を本物の隊長だと勘違いしているようだ。


「……帰る」


一言発し、立ち上がる。そして、呆然としている勇者達に視線を向けてからネモへと視線を変えて言う。


「ネモか…ちゃんとユートに伝えとけよ」


コクリとネモが頷くのを確認したリョーガは、林の方へと歩いて行く。

その後ろから黒騎士達が追いかけて行く。ネモに爆撃された黒騎士も、吹き飛ばされた黒騎士も、起き上がり、フラフラと覚束ない足取りで追いかけて行く。どうやらネモはトドメは刺さなかったようだ。


リョーガが離れて行くのを少しの間だけ見送ってから、ネモは視線を後方へと向ける。

そこには、未だに呆然とした勇者達がいる。いや、勇者達だけではない。兵士達も、人々も、皆が唐突の事に頭が追いつかずに呆然としている。


ネモは何も言わず、語らない。勇者達に一瞥をくれてから、リョーガが向かった方向とは逆の、だだっ広い草原へと足を向けて歩き始めた。


その後、勇者のお披露目は無事とは言い難いが、終えることができた。

そして、馬車も、人々も、街へと入る事ができた。


『あの黒騎士達と仮面はなんだったのだろう』


と、疑問だけを残して。


ちなみに、黒騎士達はリョーガの手下となった。それは、とても平和的でない交渉の結果であった。

ユース「あの仮面の人、強かったですね。あんな重たそうな鎧を着た黒騎士達を簡単に倒しちゃうんですから」

リョーガ「仮面?ああ、ネモの事か。あれ、人間ちゃうやろ。首一回転してたし」

ユース「そういえば…」

リョーガ「まぁ、ユートと何か関係があるって事や」

ユース「えっ!?ユートさんと!?い、生きてたんですか!?」

リョーガ「だから言ったやんけ。あいつは死ぬような奴やないって」

ユース「やっぱり、ユートさんって、リョーガさんのお友達なんですね…(ボソ」

リョーガ「あ?なんか言ったか?」

ユース「い、いえ。何も…」

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