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旅の再開

役職が変わりました!


給料は少し増えましたが、残業も増えました!

散々ですっ!今すぐにでも辞めたいです!


って、毎日思いながら仕事してるんですが、やはりヤル気と言うものがなくてですね…。


体調は崩しまくり、怪我はしまくり、もう散々ですよ…。


ユートが2本目のタバコを吸っている最中。


「ん…んぅ…」


少女が目を覚ました。


「おはよーさん」


「んぁ?……誰?」


目を擦って小さな欠伸をする少女に、ユートは苦笑いを浮かべて疑問に答える。


「俺はイクスや。前に会ったやろ?」


吹雪の中で彼女と出会った事を彼は覚えていた。

だから、その時に名乗った偽名を使う事にした。


「…イクス?……あぁ…あの時の…」


どうやら、彼女もユートーーイクスの事を憶えていたようだ。


寝起きだからか、定まらない視線。それをイクスの右半身に向け、


「ーーっ!?」


明らかに怯えを見せて後退りした。

しかし、すぐに壁に背を当てる事に。


「ハハハ…そこまで怖がられんのって、なんか悲しいわ…」


「す、すまない…。それで…貴様は…」


「イクスや」


「違う。そうではない。貴様は何だと聴いているのだ」


「そっちか。まぁ、何やって聞かれても、今は普通の人間やで」


少女ーーミーシャは、イクスの身体を上から下まで観察するかのように見て、


「どこがだ?」


思った事をそのまま口にした。


彼女が疑問を発するのも無理はない。

なにせ、イクスの半身は機械だ。しかも、機械を覆う肉が剥げてしまっており、丸見えの状態である。


それには、イクスも苦笑いを浮かべるしかできない。


「一応、人間のつもりやねんけどなぁ…」


悲しみの篭った呟きを漏らして視線を足元に向ける。

右脚は投げ出し、左足は胡座をかいた状態の足だ。


ミーシャも吊られて視線を彼の足に向け、


「古代技術の身体か…確か、あの化け物もそうだったな。……貴様、ここに居ると言う事は、化け物を見なかったか?」


「……いや、見てないで」


「そうか…」


自分がそうであったなどとは言わない。言えない。

それに、説明した所で理解などしてくれないだろう。


「……これは、貴様が?」


ふと、気が付いた手当された跡。

ボロ切れが巻かれているが、その柄はイクスが着ている服と同じ物だ。


「魔法とか使われへんから雑なもんになってもうたけど、勘弁な」


「いや、助かった」


軽く礼を言って、手当てされた場所を触ってみる。

僅かな痛みはあるが、血が滲んだりはしない。


「(切り傷の筈だったが…?)」


そんな疑問を残しながら、立ち上がるミーシャ。

周囲を見渡して、穴へと視線を向ける。


「………」


暫し彼女は考えるような仕草をしてから、小さく溜息を吐いて、視線をイクスへと向ける。


「これから貴様はどうするんだ?」


そう問われてイクスは困惑した。

どうするもこうするも、彼は動けないのだ。


ここから出るのにも一苦労するのに、町のある場所すら知らないと来た。

彼女に放って行かれれば、餓死しかねない。


だから、彼は正直に助けを求める。


「身体が壊れて動かへんねん。なんか金属製の部品とかないかな?あと、魔石も」


「金属か…短剣ならばあるぞ。それと、魔石なら幾つか持ってる」


そう言って、短剣と魔石を取り出すミーシャ。


「頂戴」


貸して、ではない。

欲しい、である。


それを理解してか、ミーシャはイクスに短剣と魔石を渡した。


「今度返すわ」


そう言いながらも二つを受け取り、片手で足を修理し始めるイクス。

スキルが有った時と比べれば、かなり作業速度が遅くなったが、それでも普通の人が作業するよりかは断然早い。


スキルで持っていた技術は、身体に馴染んでいるようだ。


片手だと言うのに、指や短剣を駆使して配線やパイプや内骨格などを外したり他の場所に繋いだりする。


最後に、短剣を解体して足の中の部品として使用し、魔石を嵌め込む。


掛かった時間は約30分。

道具は短剣だけだ。

たったそれだけで彼は、見てて飽きない素早さと正確さで足の修理を終えた。


「これで……」


足を動かしてみて、


「うん、動くな」


動く事を確認してから立ち上がる。

今回は、魔石を動力源に、脳から伝達される電気信号ーー意識によって動かせるようにした。


立ち上がった拍子にフラついたのは、これまで全てを魔石によって、魔力によって動かしていた為だ。

その時に、思いもよらぬイレギュラーが起きたから、それを考慮しての処置だろう。

いや、そもそも魔力が使えないから、こうするしか方法がなかったとも言えよう。


「さて……どないしよか?」


「ん?もしかして予定がないのか?」


「うん、今ん所なんもやる事ないし、行く宛もない」


「ならば、我と共に来るか?」


「うん、そうするわ」



〜〜〜



「………寒くないのか?」


ビュービューと吹き荒れる吹雪。

その中をミーシャとイクスは歩いているのだが、イクスの服はズタボロで、それを着ていると言って良いのかは定かではない。


素肌や機械質な身体は丸見えで、股付近は隠されているが、胸は半分露出し、ヘソは出し、袖なんて物はない。

辛うじて服が残っていると言っていい程だ。


そんな姿のイクスに、ミーシャが疑問を発するのは当たり前だろう。


だが、彼への心配は無用だ。


「痛覚センサーと感覚センサーが壊れてるから、少ししか寒さ感じへん」


素肌の部分。そこしか寒さを感じない。

いや、その一部でしか感じない。


しかも、寒すぎて、その部分は感覚が麻痺してしまい、既に寒さなど一切感じなくもなっていたりする。


「何を言ってるかサッパリだが…寒くないのか…」


おかしな奴だ。ボソリと呟いて、前を見る。


前と言っても、吹雪が酷くて何も見えやしない。

しかし、行きと比べて魔物の影を見る事が多い。


やはり、あの怪物が魔物達を片っ端から喰らっていたのだろう。そう結論付けるミーシャ。


だが、魔物達はミーシャ達の前に姿を表す事はなかった。

まるで、これまで散々な目に遭わされて、もう懲り懲りだと怯えるかのように、彼等を見つけた瞬間に逃げ出していた。


チラリとミーシャは横目でイクスを確認する。


イクスは歩きにくそうに、右足をぎこちなく動かして歩いている。

しかし、表情は常に笑みを浮かべ、彼を見ていると薄ら寒く感じる。


イクスとの会話の数は少ないが、なぜか彼には最大の隠し事がある気がするのだ。


ふと、イクスは見られている事に気がつき、ミーシャにニッコリと微笑みかける。

それだけを見れば、優しく、温かみのある笑みだ。

しかし、顔は半分程が凍り付いており、彼を見ていると寒さしか感じない。


「後少しだ。後少しで、街に着く。それまで我慢しろ」


「ぇ……ぁ…ぇ?」


吹雪の所為で、声が聞き取れない。

初めて会った時は、嫌ってほどに聴き取れたのに、おかしな話だ。

いや、これが普通なのだろう。


あの時は、何かがおかしかった。


「後少しで街だ!それまで我慢しろ!!」


「…ぁ…ぃ…」


何を言っているのか定かではないが、イクスは笑みを浮かべながら頷いたので、彼女の声を聞き取れたのだろう。


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