工房と遊戯 その十
(=ↀωↀ=)<更新ラッシュ最終日
(=ↀωↀ=)<蒼白Ⅳ年内完了まであと一息
(=〇ω〇=)<毎度のことだけどバトルパートは筆がノって予定より文字数増える……
□■【呪術王】LS・エルゴ・スムについて
LS・エルゴ・スム。
レジェンダリアに所属する<超級>の一人にして、トップクラン<YLNT倶楽部>のオーナー。
幼児を愛する奇行と、幼児に化けてそこかしこに忍び込む奇行によって悪目立ちする男女不詳の人物。
しかし同時に、レジェンダリアでも信頼のおける<超級>としても知られている。
なぜなら、レジェンダリアは国家に所属しない……指名手配された<超級>が数多いる。
それらと戦い、法の秩序の下で生きている時点で信頼に値する。
さらにはクランの活動も慈善活動がメインであり、良識派である。
だからこそ、レジェンダリアを治める者達は彼の奇行を悲しみもした。
カルディナへの旅に出る前、レジェンダリアを治める【妖精女王】が「なぜあなたはそうなのか」と尋ねたことがある。
当初は普段通りの奇天烈な発言でお茶を濁そうとしていたが、食い下がる【妖精女王】にやがて観念したのか……LS・エルゴ・スムは話し始めた。
『俺にとって「生きる」とは段々と汚れていくことですぞ』
「汚れる?」
『幼いころはいくらでも夢を描いて前を向いていられる。けれど、生きるほどに妥協を覚え、悪徳を覚え、そして諦念を覚える。いつまでも子供のままではいられない。いつまでも……綺麗な目ではいられない』
「大人になっても、瞳が綺麗な人はいてよ?」
『無垢の綺麗さと、磨いた綺麗さは違いますぞ。もしかすると、曇った目にピカピカのカラーコンタクトをつけているだけなのかも……。結局は大人になるほどに、あるいは子供であっても年を経るごとに……人は自分や他者を誤魔化すことを覚えますぞ。俺もまた例外ではなく、自己嫌悪感もある。だから俺は、無垢な子供という象徴に惹かれているのでしょうな。子供が好きであると同時に、大人の否定ですな』
「だから、あなたの<エンブリオ>は人の心まで子供にするのかしら。“児童機会”」
『かもしれませぬな。無垢だったころに戻って、心を洗う機会を与える。そんな思いの発露と言われれば……否定する材料が見つかりませぬぞ。とすれば、最終スキルは俺自身の諦念の発露ですかな』
「……そう。カルディナに珠を求めに行くのもその信条のため? 同行者のヨミコは友達に会うために天地まで旅行するって言っていたけれど」
『ですな。モンスターなら、あるいはずっと無垢なものが見られるかもしれない。まぁ、望み薄ですがな。一人では厳しいので翼神子がいるのは助かりますぞ』
「そう。分かったわ。もう止めない。旅の無事を祈っているわ」
「ところで、どうして旅の前に各地の子供の周りで空気を集めているのかしら?」
『無垢な子供の空気が世間の悪徳に浸かりそうな俺の身体を浄化してくれる(気がする)のですぞ! あとちょっと興奮しますぞ! 俺の魂と直結したどこかが!』
「うん。ちょっとシリアスだったけど、アンタやっぱりヘンタイだわさ」
『埃まみれのババアに言われたくありませんぞ!』
そのようなやり取りの末にLS・エルゴ・スムはカルディナへと旅立ち……【ドラグノマド】で倒すべき敵と相対した。
◇◆◇
□■【漂竜王 ドラグノマド】・背上都市・孤児院
結論を言えば、ハーメルンユニットは壊滅する。
彼らの敗因は<超級>を放置したことである。
◇◆
LS・エルゴ・スムは笛の特典武具【民眠罠 バルビツール】によって、一時的に行動不能に陥っていた。
だが、そのLS・エルゴ・スムを最優先の脅威にして排除対象と認定することは、彼らには不可能だった。
なぜなら、かくれんぼの直後だったから。LS・エルゴ・スムは子供の姿であり、自身のジョブや名前も見破れないように隠蔽の装備で隠していた。
LS・エルゴ・スムがLS・エルゴ・スムであると分かる観測結果があればともかく、そうでなければルーチンに従って行動するハーメルンユニットでは排除する判断を下せない。
それよりも遥かに、行動不能に陥っておらず、【マーシャルⅡ】で応戦してきたユーゴーの方が排除の優先度が高かったのである。
「ユーゴー君、でしたかな。もう少し、そのガチャガチャと五月蠅い奴を抑えていてほしいのですぞ」
『……了解!』
しかし今、ハーメルンユニットの判断ミスのつけが彼らに回る。
「――《カース・ゾーン・エンタングル》」
LS・エルゴ・スムが発動したスキルは、【呪術王】の奥義。
周囲一帯にデバフ特化空間を形成する。
呪怨系状態異常の発生率上昇。
自身のデバフスキル成功率上昇、敵対者のバフスキル成功率低下。
自身のデバフスキル効果増大、敵対者のバフスキル効果減少。
自身のデバフスキル効果時間延長、敵対者のバフスキル効果時間短縮。
【女教皇】の奥義、《ホーリー・ゾーン・ホライゾン》の対となるスキルであり、周囲一帯に対して呪術が猛威を振るう下準備が整った。
『ゲラァアアア!!』
『♪~♪~~』
その脅威を今度こそ把握し、両生類――サラマンドラ・イデアと毛むくじゃらの笛使い――マクロプース・イデアが動く。
サラマンドラは再生する肉体を活かし、反撃によるダメージを省みない突撃を。
マクロプースは本命である胸部の笛ではなく、デコイである頭部の笛の演奏でLS・エルゴ・スムへのデバフを掛ける。
周囲環境を把握し、サラマンドラへのバフではなくデバフを優先したのである。
その選択ができる時点で、ラ・クリマの組んだ戦闘ルーチンはそれなりに優秀であった。
だが、相手が悪い。
バフと違いデバフは軽減されないが……そもそもにして敵手は【呪術王】。
デバフスキルのエキスパートにして、相応のレジスト性能を有している。
それこそ、【呪術王】自身の《カース・オブ・マリオネット》であっても成立に時間が掛かるほどに。
ゆえに、マクロプースのデバフが効果を発揮するにはまるで時間が足りない。
サラマンドラとLS・エルゴ・スムの距離が詰まった時点で、LS・エルゴ・スムはほとんど弱体化されていない。
『ゲルルォオオオア!!』
それでも改造を施されたサラマンドラの巨体とステータスは通常の前衛上級職を上回っている。
後衛のデバッファーであり、肉体的には脆弱なLS・エルゴ・スムを一撃で粉砕できる。
「んんん、巨体で押せば俺が倒れるとでも? 甘いですな」
だが、迫るサラマンドラに対し、LS・エルゴ・スムの顏に恐怖は微塵もない。
「せめて【嫉妬魔王】のクトゥルーでも持ってきやがれですぞ!」
より恐るべき敵と、日々戦ってきたがゆえに。
巨体を恐れず、LS・エルゴ・スムは自らの親指の腹を噛みちぎり、血を垂らす。
「《ブラッド・アレスト》!」
LS・エルゴ・スムの血が零れた地面が輝き、赤い光の網がサラマンドラへと投射される。
サラマンドラは突撃の方向を変えられず、自らその網へと頭を突っ込む。
直後、サラマンドラは慣性さえも消えたようにその動きを止めた。
生命活動はあっても、欠片も身動きできていない。
「よっと!」
LS・エルゴ・スムは衣服を翻し、懐から愛用の魔力式散弾銃を取り出す。
自らの超級職としての魔力を注ぎ込みながら、引き金を引く。
赤い網に囚われたままのサラマンドラに回避する術はなく、全身に散弾の弾痕を作る。
全身に無数に空いた穴。
そして、その傷は再生しない。
『げ、ゲエェ!?』
《ブラッド・アレスト》。
対象に【呪縛】の状態異常を付与すると共に、ランダムにスキルを封印する呪術。
【呪術王】のパッシブスキルと《カース・ゾーン・エンタングル》で効果が拡大されており、サラマンドラは《自己修復》を含む幾つものスキルが機能不全に陥っていた。
「そろそろ効果圏ですな」
迫るサラマンドラに対処したLS・エルゴ・スムは、冷静に彼我の能力を推測し、マクロプースのデバフ演奏が自身に効果を及ぼすタイミングが迫っていることを読む。
ゆえに、その前にマクロプースを始末すると決めていた。
「ほいっと」
LS・エルゴ・スムはアイテムボックスから取り出した小さな球を、マクロプースの背後へと投擲する。
マクロプースはそれを目で追うが、演奏する手は止めない。
だが、目で追おうが追うまいが、関係はない。
直後に小さな球が空中の一点に留まり、光を放った。
それは閃光弾のような激しい光ではない。
ただ照らすだけの……照明の灯り。
だが、マクロプースの側面から照らされた光は――その影を長く伸ばす。
「《シャドウ・スタンプ》」
LS・エルゴ・スムは魔力を込めた右足で、子供の影踏みのようにマクロプースの影を踏む。
直後、マクロプースは恐るべき重圧に身が竦み、【呪縛】と【恐怖】、【吸魔】の状態異常を受けて演奏が止まる。
《シャドウ・スタンプ》は影踏みの呪術。影を介して相手に呪いをかけ、三重状態異常で行動を制限する。
「二つもあれば十分ですな」
その言葉と共に、LS・エルゴ・スムは決めに掛かる。
散弾銃を持った右手とは逆。球を投げた左手を、子供の指鉄砲のようにセットする。
そして指先の照準をマクロプースに合わせ――スキルを発動。
「《デス・バランス》」
【高位呪術師】の奥義、《デス・バランス》。
彼我のMP差と対象に付与した呪怨系状態異常の数で成功率が変動する、即死魔法。
ただし、判定に失敗した場合は自身が対象のHP分のダメージを受けるリスクもある。
もっとも、現在そのリスクはないと言っていい。
なぜなら今は《カース・ゾーン・エンタングル》の効果圏であり、状態異常も複数。
――その成功率は限りなく一〇〇%である。
マクロプースは抵抗もできないまま、絶命して仰向けに倒れた。
死の証左として胸元の笛、【民眠罠 バルビツール】が虚空に消えて回収される。
先に死したラケルタ二体と合わせ、ハーメルンユニットの過半数が消えた。
『ギャガガガガガ!!』
マクロプースの死とサラマンドラの窮地に、残る鋼――アルメハ・イデアが動きを変える。
自分自身はユーゴーの【マーシャルⅡ】と絡み合って動けないが、装備したブーメラン……【鋼転鋭星 サテライト】を全機、LS・エルゴ・スムへと放つ。
毒性を塗布した十枚の刃がLS・エルゴ・スムに迫る。
LS・エルゴ・スムの身体能力で、それを回避しきるのは不可能だろう。
《デス・バランス》を撃とうにも未だアルメハは状態異常に罹っておらず、そもそもクールタイムがあるためにまだ使えない。
「スキルリチャージ」
だが、問題はない。
仕留める手など、他にもある。
要は、二体それぞれにどちらを使うかというだけの話であるから。
「範囲指定完了」
今しがたクールタイムが明けたのは、ラケルタ二体を塵と化したスキル。
【呪術王】の呪術ではなく、<超級>としての力。
ネバーランドの、最終スキル。
LS・エルゴ・スムの<超級エンブリオ>、ネバーランドの固有スキルは複数ある。
身体と精神を一定時間幼少期に戻す、《幼生への回帰》。
ジョブリセットの承認を引き換えに、子供に戻した状態で固定する《無垢への回帰》。
そしてこれらの発展形である必殺スキル、《永遠への回帰》
だが、最終スキルはこれらとは方向性が違う。真逆だ。
それこそ、本人が諦めの発露と言うほどに。
「…………」
実を言えば、この孤児院に訪れた時点でLS・エルゴ・スムはハーメルンユニットを怪しんでいた。
ユーゴーがハーメルンユニットをLS・エルゴ・スムでないかと怪しんだのと同様に、しかし本人であるがゆえにただ純粋に怪しんだ。
だからこそ、何が起きてもいいように手は打っていた。
いつでも、彼らを対象として最終スキルを発動させられるように。
「――《終点への追放》」
そして今、ネバーランドの最終スキルを発動した。
『――――』
変化は一瞬だった。
【マーシャルⅡ】と組み合っていたアルメハ本体が……一瞬で塵になる。
まるで時経た化石が崩れるように、光ならざる塵となって風に溶けていく。
放たれたブーメランも、LS・エルゴ・スムに届く前に回収された。
『これ、は……』
眼前で敵手の崩壊を目撃したユーゴーが、驚愕の声を漏らす。
それはユーゴー自身も体験した、子供への巻き戻りとは真逆だ。
この力は……。
『時間……経過?』
――寿命終点までの急速老化である。
◇◆
ネバーランド。
親とはぐれた子供たちが住み、年を取らなくなる国。
子供に戻す<エンブリオ>の名として、これ以上に相応しいものはない。
だが、ネバーランドという地にはもう一つ、逸話がある。
それはネバーランドを出る者の話。
ネバーランドを出た子供は……年を取らずに重ねた年月の分だけ一気に年老いてしまうという逸話。
ゆえに、ネバーランドをモチーフとしたLS・エルゴ・スムの<エンブリオ>には巻き戻しだけではなく、この要素も混ざった。
【順逆時在 ネバーランド】の正確な能力特性は、年齢操作。
時を巻き戻して無垢な子供にするも、時を進めて風化した死体に変えるも自在。
無論、制限はある。
逸話がそうであったように、時を進めるにはネバーランドに滞在……つまりは射程圏内に入っていなければならない。(子供に戻す《幼生への回帰》を受けている必要はない)
ネバーランドの射程に入っていた時間一分につき、二年。《終点への追放》の発動時に老化する。
LS・エルゴ・スムはかくれんぼが始まった後、デコイを用意してからはすぐに孤児院を訪れ、ずっとハーメルンユニットを射程に捉え続けていた。
その時間はかくれんぼの終了時間を過ぎた今では五〇分以上。
結果、スキル発動と同時に一〇〇年の時間経過を受け……死体が風化するように消えていったのである。
LS・エルゴ・スムは、この恐るべきスキルを使う相手を選ぶ。
彼の信条からすれば、ティアンの罪人はジョブのリセットも含めて記憶も体も子供に戻す《無垢への回帰》が解決方法としてはベスト。
だが、それができない者もいる。
今回の改人のように、生物としてネバーランドの対象外になっている者。
そしてやはり今回の改人のように、罪が重すぎる者。
そんな相手を……LS・エルゴ・スムは終わらせる。
◇◆
アルメハが斃れ、残るはサラマンドラ一体のみ。
そのサラマンドラにしても既に呪術で拘束され、スキルも機能不全になっている。
既にハーメルンユニットは壊滅し、勝負は決したと言える。
「これで終いですぞ」
トドメを刺すべく、LS・エルゴ・スムが《デス・バランス》を込めた指先を向ける。
ユーゴーも又、キューコの解除と再合体でブレードを再形成して備えていた。
これで終わりだとユーゴーが考えたとき、
『ゲロォ!』
鳴き声と共に、サラマンドラが何かを吐き出した。
「「!」」
サラマンドラが吐き出したのは、見知らぬ子供。
既に別の街で捕獲され、人間を収監する特典武具【囚人袋 プリズメア】に保存されていた子供だ。
気絶している子供をまるで人質のように、口に咥えた状態でLS・エルゴ・スムとユーゴーに見せたのである。
「…………」
『貴様……!』
一撃だ。《デス・バランス》の一撃で、サラマンドラは殺傷できる。
だが、それよりも早く……呪術の発動の気配を感じた時点でサラマンドラは子供の身体を噛み千切るだろう。
窮地に追い詰められた際に人質を使う。
それはラ・クリマの仕込んだルーチンではなく、サラマンドラの素体となった人間……既にないキャラバンの奴隷商だった男の残滓が考えたものだ。
そして、この局面でそれは有効だった。
LS・エルゴ・スムは子供の被害を無視できず、ユーゴーもまた看過できる人間ではない。
そうする間に、《ブラッド・アレスト》の効果時間が終了する。
サラマンドラが待っていたのはそれだった。
拘束が解けた直後に、LS・エルゴ・スムへと突撃する。
咥えた子供を見せつけるように、LS・エルゴ・スムが手出しできないように。
攻撃すれば、子供の身体が二つに分かれることは火を見るよりも明らかだった。
「……!」
LS・エルゴ・スムはカウンターの呪術を放つこともできず、回避に専念するしかなかった。
だが、回避した直後にサラマンドラの口から赤い血が、僅かに傷つけられた子供の血が流れる。
あたかも、「次に避ければ殺す」と言わんばかりに。
LS・エルゴ・スムの動きが止まり、サラマンドラが再び突撃する。
ここで自分が倒れれれば他の子どもも救えない。
だが、反撃すれば目の前の子供が確実に死ぬ。
その両方を解決する手段をLS・エルゴ・スムが思考し、
それよりも早くに激突の瞬間が訪れ、
――どこからともなく伸びてきた鋼糸が、子供を咥えていたサラマンドラの上顎を強引に開かせた。
「!」
鋼糸はそれに留まらず、サラマンドラの口内の子供を引っ張って救い出すと同時に、上顎と下顎を斬り飛ばした。
さらに、いずこからか飛来した二発の光弾が、サラマンドラの両手足を吹き飛ばしてその体を地べたに擦りつけさせる。
「間一髪、ですね」
「そっちに転がってる死体を見るに、大分遅れての登場になったらしいがな」
それを為したのは、ユーゴー達のよく知る人物だった。
『マニゴルドさん! それに、イサラさん!』
それは駆けつけたマニゴルドと、時間経過によって《幼生への回帰》が解除されたイサラの姿だった。
合流するために孤児院へと駆けつけ、そして今サラマンドラの人質戦術を真っ向から粉砕したのである。
「わー。滅茶苦茶美味しい登場しやがりましたぞ」
LS・エルゴ・スムはそう言いながら、《ブラッド・アレスト》で再度拘束する。
さらに《カース・オブ・マリオネット》で肉体を動かす権利さえも完全に差し押さえた。
それで、完全決着だった。
◇◇◇
□【装甲操縦士】ユーゴー・レセップス
戦いが終わったとき、孤児院の敷地にいる子供の数は増えていた。
マニゴルドさん達のお陰で窮地を脱した後、LSが両生類に呪術をかけ、まだ呑み込んでいた子供達を吐き出させたからだ。
どうやら口内に見えた特典武具は人間を捕らえるものだったらしい。今この孤児院では救出された数十人の子供達が、笛によって意識を失った子供達と並んで寝かされている。
イサラさんは先に捕らえられていた孤児院の職員と共に、ケアに回っている。
いずれも命や健康に別条はないそうだ。
「……良かった」
既に他の街で誘拐されていた子供達も含め、多くの子供達を助けることができた。
それが、嬉しい。
「さて、後はこいつがどこの手の者か、だが……」
今、マニゴルドさん達の前には拘束され、人間の姿に戻った両生類がいる。
既に仮面は着けておらず、人間とは異なる見た目の双眸も隠されてはいない。
「……十中八九は改人。ラ・クリマの手口だろう。まさか、こんな向こう見ずなやり方をしてくるとは思わなかったがな」
マニゴルドさんはこの男達……それを操る者に心当たりがあるようだった。
「どうしますかな?」
「議長に回し、口を割らせるのが得意な連中に預ける。今の時点で死んでいないなら、自害させる仕組みを組み込めていないんだろう。連中の情報を搾り取れる」
マニゴルドさんは冷徹にそう言った。
もしかすると、この孤児院を襲撃されたことに少し怒っているのかもしれない。
「まぁ、俺としては子供が無事だったから後は任せますぞ」
「……今回は助かった」
「いやいや、好きでやっていることですからな! 子供は世界の宝ですぞー!」
子供の顏で嬉しそうに笑うLSが印象的だった。
こうして、連続誘拐事件はこれで解決して……。
「……?」
そう思ったとき、視界内で何かが変わった。
マニゴルドさんとLS、イサラさんや子供達は変わらない。
もちろん、私やキューコも変わらない。
変わっていたのは、捕らえられていた両生類の男。
いつの間にか首が落ちていた。
明らかに、何者かに切断された断面を晒して。
「え!?」
私の驚愕の声と、二人がそれに気づくのは同時だった。
たまたま視界に入れていた私が最初に気づいて、二人は私の反応で気づく。
つまりは――<超級>二人に気づかれずに、誰かが両生類の男を殺したのだ。
恐らくは、口封じに。
「…………」
周囲への警戒を強めるマニゴルドさんとLS。
その二人を見ながら、私は解決した事件の裏でまだ動いている何者かがいることを悟ったのだった。
◆◆◆
■???
【ドラグノマド】の入り組んだ路地に、一人の男が立っていた。
特徴もない平凡な男。
その顔は、LS・エルゴ・スムにデコイを押し付けられた男だった。
彼は何かを待つように、建物の壁に背中を預けている。
やがて、その視線を路地の一点に向ける。
そこには何もない。
蟲一匹歩いておらず、音もない。
だが、彼は手乗り文鳥を乗せるときのように、指をそちらへと向けた。
すると、彼の指に僅かな重さが掛かる。
直後、何もいなかったはずの指先に、機械仕掛けの蟷螂が現れた。
「よーし。上出来だ、【煙水晶之暗殺者】。ラスカルさんに任せられた仕事はこれにてカンリョー」
シシシと笑いながら、男は蟷螂をアイテムボックスに仕舞う。
「さーて、気づかれないうちにずらかりますか。気づきようがねーけど」
その言葉と共に、男は路地を立ち去る。
だが、瞬く間に平凡な男の姿は……同様に平凡な女の姿に変わっていた。
別人に擬態した姿を、さらに別人の姿で覆い隠しながら、それは立ち去る。
そうして男とも女とも分からぬモノ――<IF>のサポートメンバー【幻王】リヒテルは、仕事を終えて再び【ドラグノマド】の街に溶け込んだ。
To be continued
(=ↀωↀ=)<あとは22:00投稿のエピローグで終了
(=〇ω〇=)<この数日、執筆ブーストかけまくったので脳が痛いです……
〇【呪術王】LS・エルゴ・スム
子供、そして生きることについて独自の哲学を持っているが、それはそれとしてHENTAI。
無垢な子供という概念そのものに一人の思考者として惹かれるが、それはそれとしてロリとかショタ見てると興奮する。
<マスター>・ティアン問わず数多の犯罪者相手に実戦を重ねて独自の戦闘スタイルを構築した猛者だが、それはそれとして紙装甲と低HPなので同格以上にワンパン貰ったら死ぬ。
また、今回の戦闘は最初から子供だったので関係ないが、実は大人から子供に肉体を巻き戻すことで一回はダメージを帳消しにできるという裏技も使う。
それはそれとして、HPが低いので概ね帳消しにする前に死ぬ。
(=ↀωↀ=)<スタイリッシュな戦い方のHENTAI
(=ↀωↀ=)<だけど実は戦闘スタイルとしてはキツネーサンに近いよ(ジョブと<エンブリオ>の役割が逆だけど)
(=`ω´=)<なんかイヤやー




