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相対性『僕とAI的』理論  作者: コラソン


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1/51

絶望の帰り道

はじめまして。


高校生活最後の夏休み。

主人公・佐上夢生の、ちょっと最悪なところから始まる物語です。


AIと一緒に考えながら、少しずつ前に進んでいきます。


よかったら、夢生の物語を覗いていってください。

こんな話友達にもいえない。


時間は、夕暮れから夜に差し掛かる頃。

僕は物凄く落ち込んでいた。


部屋全体が暗くなりはじめる中

唯一、光るスマホの画面に

語り掛けるように、そう打った。

友達に話せる余力は無いし、

何とも言えない重苦しい夜。


佐上 夢生


つい二ヶ月前に18歳になった

高校三年生だ。


夏休み序盤

ダラダラしていた僕。好きな時間まで起きて

目が覚めるまで寝る

本当にだらしない。


この前は、陰キャの友人と

『推しのアニメ劇場版を観に行こう』

ってなった。


でも、問題が…


映画のチケット代、交通費

食事代…など自分の手持ちだと

足りないから、母に幾らか出してもらう。


高三になってもまだ。


母が、渋々財布からお金を出しながら


「来年大学行くんだから、お金かかるし

せめてケータイ代とか!

自分の小遣いくらい稼いでくるって約束!

そこ、どうしたの?」


いや、それはまだ…コンビニの

募集は、この前みた。


「見たってあんた。み て どうしたの」


っ見ただけ…。


母が長ーーいため息をついて、

「そろそろバイトに行かないと!!

お父さんうるさいよ。」


わかってるよ…。


おはようからおやすみまでゲームしても、

コンビニにコーラ買いに行っても、

バイトの面接は、まだ行かなくて

いっか。明日探そう。


その、明日がずっと続いている。


就職とかじゃないしな。

なんてどうでも良さそうな言い訳が

頭にあるから、気楽と言えば、

気楽。


高校生じゃなければ、ニートと言われても仕方ない。


ダイエットは明日から。と

同じかもしれない。


僕は文芸部に所属していた。

バイトは、部活があったから後回しにしてよかった。引退したくなかったよ…。


夏休みなのに、気が重いよ、くそ。


進路があるから、引退は、仕方ない。


友人は少ない。

特に仲良くしている友人はいる。

アニメやら漫画が好きで

教室で大人しくしている、

いわゆる陰キャだ。

でもそれで困ったことはない。

友人が休んだらちょっと寂しいくらいだ。


夏休みが始まると母が圧を掛けてくる。


「ほら、求人サイト。見てみー」

僕の真横に、ピッタリくっついてくる。

距離感ゼロかよぉ…


キモいけど、状況的にそれは言えない。

体は素直で、反射的に少しのけ反る。


僕は内心、やる気ないなぁと思いながら、

タプタプ画面を操作する。


求人サイトが出る。


「ホラ、絞り込み。初バイト、高校生歓迎。

土日祝出勤OK、、これで検索しなよ」


くそ、母がウザイ。ウザイけど。


去年ちゃんとバイトするから!

と約束して、

最新のスマホに代えたのは…。僕だ。


母はその約束を忘れなかった。

そして、忘れてほしかった。


機種変の約束は、父もわかっているから、

そろそろ行かないと、父の堪忍袋が

裂けてしまうんじゃないか。


頭で理解してるんだよ。

でも、現実逃避に余念が無い僕は

推し活に励む。いや、逃げる。


求人サイトを暫く見ていた母が

「ホラ、ココ駅から少し歩くけど、ウェブから応募したら?」

母の手はとある飲食店をさす。

店舗数は、少ないが昔からあるらしい

チェーン店だ。


「行ってみたら?てか行きな!

社会勉強してきなよ。」


他の求人見ても、母が言ったところは

条件がピッタリだった。


致し方ない。好きなだけ、起きて

好きなだけ、寝る生活に

さようなら~って、

気持ちがついていけないけど


扶養家族の僕は抗えないのが

辛いところ。


僕は『応募する』の項目をタップした。


そこからは、

僕本人の気持ちが不在な感じだったけど、

あっという間に面接の日になってしまった。


ダメなら仕方ないとは思いつつも


うまく出来ますように。


流され侍でも、負け戦は嫌だ


その場で、面接してくれた店長が

柔らかそうな感じの人で、お互い笑みも溢れる。

面倒くさかった気持ちが前向きになった。


「給料振込先の口座、通帳コピーして持ってきてね、

それと、その日に色々書いてもらうから。

じゃ宜しくね!」と


採用?わからんけど採用かな?と

ふんわりした感じで帰された。


今自分はどんな状況?

いやいやいやいや!

給料振り込み口座の事言ってたよな、

ヒャク採用だよ、僕のボケナス。


母に話したら、「採用するとかって、普通に言うものじゃなくて?うちの職場でそれはないなぁ。」と言っていた。


数日後、僕は言われていた銀行口座の表紙をコピーしてバ先へ急ぐ。


面接でいい雰囲気だったから

遅れないように、早歩きで向かう。


入り口で、呼吸を整えてから

入る。


バ先ではすでに店長がいて


「おはようございます。あー、出勤したら、おはようございます。って言って入って。

何時に入っても。

上がる時はお先に失礼します。

わかると思うけど、まぁ一応。」


わかりました。


と答えながら、何かちょっと、店長冷たいような、冷めた態度に見えた。


店長、疲れてるのかな?


「出勤したら、まずタイムカードを押して」といわれた。


タイムカードには、11時少し前の時刻が表示された。


店長は、僕の前に来て、

「事務所で契約書とかの記入と、、ああ、通帳のコピーもってきてる?」


はい、持ってきました。


店長が

「じゃ、行こうか。」とスタスタ歩き始めた。


僕は何となく、面接の時の店長と

別人に思えた。


事務所の入り口まで窓はなく

薄暗い。お互い無言で歩く。

靴が床に擦れる音が響く。

この雰囲気に、気持ちも少しだけ重くなる。


事務所に入ると

「さっそくだけど、お願いしてた通帳のコピーは、給料の振込に使うから。それから、

ああ、そこに座って。」


顎を割と大きめのテーブルへ向けたので

、椅子をひきすわる。


もうすでに、数枚の書面が用意してある


「そこにある書類よくよんで、わかるところだけ、書いて。分からなかったら後できいて。わかるとおもうけど。」


わかると思うけどって…。

なんだろう?気のせいかな。

事務的に進む流れだから?

けど、言い方!すごい引っ掛かる。

雰囲気悪いなぁ…。


窓から日差しが差すわりに、陰ができるから薄暗い。


店長が、

「ボールペン。ちょっとまって…確かあったよな」と言い出したから


自分のあります。と、鞄からだした。


出掛けに母が、

「ボールペンとメモは

持っていきなよ。」と、言っていた意味が

わかった。


母、普段抜けてるけど何気なく気遣ってくれた。

ありがとう。と思った。


「それ、書いたらDVD見てて。20分くらい。就業規則とか、会社の説明だから。

ちょっと、皆の仕事の様子見てくるから。」

と言い残し、


店長は「ああ、電気。」とポツリといい、

スイッチを押してから事務所を出た。


明るくなった事務所でちょっとひと息つく。

今日はこれが終わったら、帰れるはず。

早く帰りたいなぁ…


店長、嫌な感じだったなぁ。真顔だったしなぁ…やっぱ仕事中だから?

余計なことを考えながらDVDをなんとなく観る。

居心地が悪いな。


違和感と言えば違和感。


初バイトで変に気が張ってるから?

最初は皆こんな感じなのか?

雇ってもらって、ありがたい気持ちはある。

余計な事は考えないようにしないと、

いくら僕でも、毒を吐きそうだ。


見ていたDVDの再生が終わる頃に店長が戻ってきた。

僕が記入した書面をチェックし、

「ああ、ここ、抜けてる。今日の日付だけ。書いてね。」


すいません。小声で言い、さっと書いた。


「早速ユニフォームに着替えてもらうんだけど、普段の服のサイズは?」

と早口で店長が聞いてきた。


帰るつもりで、すっかり気が抜けていた

僕にしてみたら

急展開だ。

えっえる、、えるさいず?です。

と答えてしまった。


僕はなんとSサイズだ。ヤバいて!

違うちがう!ゆるいゆるい!


朝母が、兄の服を畳んでいて

「ニーチャンのTシャツLってちっさくね?」

って何気にいうから、

どうでもいいと思いながら

Lでいいんじゃない 本人に聞けば?

とか返してたせいだ。


なんでそんなどうでもいいことが

頭に残ってるんだ。と、

自分の脳内を恨む。


こんなん、

ブカブカだ。ズボンが下がりませんように。

下がったら……

公然ワイセツすぎる。


サイズごめんなさいSです


と言う隙もなく

店長の指示がある。着替えるしかなかった。


やっぱり、ズボンはゆるい。

今時腰パンかよ。でもこれは、それ越えたわ。


越えた腰ぱんでも、作業が始まる。

あぁ、ほんとうにしょうもない。


きっと陽キャなら

明るく

「やっば!!ズボンゆるいす!」

とかなんとかいって替えてもらうに違いない。


僕はそんな事も言い出せず、

自分が本物の陰キャだと、再確認した。

あああああ、しょうもなー!


初日退勤の時刻は、18時を少しすぎていた。

帰ると母が、

「遅かったけど道草?」なんて聞いてくる


道草って、、子供か!!と思ったが

思いがけず働いてきた。とだけ言った。


「いきなりぶち込まれたの?

すご!書類書いて、お疲れ様ー

じゃないんだねー

何かあったら、相談しなよ?」


と言ってきた。


いやいやいやいや

越えた腰パンで勤務する羽目になって

バイト中、全然落ち着かなかった。

店長嫌な感じだった。

しかも、

店長の態度がめんどくさそうにみえた。

なんとなく嫌な予感がする。

なんて、母に話せなかった。


「あ。アニキ、バ先から真っ直ぐ飲みだって。」


僕の兄。現在大学4年生。


高校では、

とあるスポーツで全国大会へ出場し

新聞に載った。

両親も、それはそれは喜んだ。そんな

家族を横目に、僕はスマホをいじっていた。


なんとなく、内心気まずかった。


そんな兄だったけど、大きなケガをして

入院もして手術をした。


手術前さすがに心配した。ものすごく。

なのに兄にかける言葉が見つからなかった。


そんな僕に

「手術やるしかないから、やる。

普通に怖いわ!!それだけ。」


成功を祈ってくれとか

真面目にやってきたのにどうして?とか

悲壮感はなかった。


兄は現実を受け入れていた。


そして、

完全には治らなかった。

スポーツは、辞めた。


しばらく「暇だ~」とかぼやいていた

から、

てっきり僕と同じ陰キャダラダラな道にくるかと思っていた。


暫くすると、生徒会で忙しく色々こなし、

兄は立ち直りはじめた。


気がつけば、兄は生徒会長になっていた。


一見すると素晴らしい。僕も誇りに思う。


でも

たまには、つまづけよ!とか

そのメンタルを、わけてくれないか?

とか、アホな事を思っていた


同じ兄弟なのに、どうしてだよ。

母にこぼす。


母いわく

「あいつ、中学の途中までただのモブじゃん。コンタクトにしてから、見た目気にして。」


そーいや、兄は元メガネ。

僕は、まだメガネ。。


メガネが皆そんな僕みたいなわけない。


ただ、うちの兄弟につき、

メガネが陰と陽の境界線なだけだ。


母は、「あんたと変わらないよ、中身

大人しいから。」

と言う。


いやいやいやいや。

例えるなら


僕は、大人しいただの陰キャメガネ。

兄は、大人しいけどアグレッシブな

コンタクト。


この兄が輝けば比例して僕はやる気がでなくなる。

つまり、この兄と

比べられるのが嫌すぎた。

兄がこうだった、ああしていたからと

僕のボーダーラインになるのが

苦手だった。


兄というフィルターを通して見られている

気がするから

『コッチ見んな』と、何度も思った。


特に祖父母。小さい頃から

『お兄ちゃんを見ているから夢生はきっとお兄ちゃんみたいにできるようになる!』

と何かと言ってきた。

面倒な話だ。


そのせいもあったのだろうか。

変にプレッシャーがかかり、できなかった。


だから兄と同じスポーツもやめた。


兄は。生徒会長になってくれないか、と話があったけど、

「無理です。」と断ったそうだ。


だが、しかし、、


兄の前任の会長は、それはそれは可愛い女子の先輩だった。

その先輩に、生徒会長やってほしい。

と、頼まれたのが、一番の理由じゃないかなと僕は思う。


下心全開だよ、兄。


大ケガもしたし、父親がアレだ。

色々大変だったのに、ちゃんと次を見つけて

頑張る兄。


後で出来なくて泣くなよ!と思ってしまう

まだメガネの僕。


そんな僕は

ダラダラ最高!と開きなおっていた。

陰キャメガネが、進化するなんて、一生出来ない気がする。


でもそれでよかった。

困らなかった。


別に素行も悪くないし。


苦労を知らない僕は、ただ流されている。


大学へ行かせる余裕がないと、兄に親が言った。「自分でやります。」

と言った兄。


さすがに兄が心配で

大学、どうするの?お金とか、いろいろ

自分でやるって、何を?

と聞いた。


「あー。それ聞くん?」


うん。心配なのと、単純に興味がある。


僕の言葉に兄はちょっと笑って

「仕方ないなぁ。何から聞きたい?」


お金、、どうするつもりなの?


「お金聞くんか笑

シンプルに奨学金だよ、おめーがダラダラしてる間に申請してた。」


パソコンとか色々は?お父さんに少しは

助けてもらったら?


「わかってないなぁ、頼りたくないんだよ

少しは俺の気持ち理解してみろ、わかるから」


いや、わかるような、、んー。


兄は笑いながら

「父親が色々アレだから。

俺は国の支援を選んだだけ。」


2択?

国か、父か…って、


でも、そっかー、

お父さん、アレだからか。

アレと言っても、頭がアホなわけでは笑

ない。


あの時、

兄が自分の事ながら、進学に向けて

頑張っていたのは、凄い。


自分が進路の時、どうするかさっぱり

わかんないよ。

そう言うと、


「まぁ、大学いくってなったら自分で考えるもんじゃない?」


兄は、そう言って出掛ける準備をはじめた。


父よ。酒ばっか飲んでないで、

頼りがいのある男になってくれ。

僕は心の中で、つぶやいた。



一方僕は、日常を舐めていた。なんとかなるとぼんやりしていた。

毎日がイージーモード。

そんな僕だから、悲惨な結果になったんだろう。


身から出た錆。負け犬。出来損ない。

かなり嫌なんだけど、僕にピッタリで

現実だ。


ぼくだって兄みたいにやりたいよ。でも、比べられたら…やる気なんてなくなる。


バイト2日目。朝10時出勤。

兄も11時からバイトらしい。


僕はめずらしく早めに起きて支度をした。


兄はギリギリまで寝ているそうで、

母はそんな兄にイライラしていたが


「めずらしい!夢生、自分で起きてきた!

朝ごはん作っといてよかったー!」

と僕に笑顔を向けた。


違う。そうじゃないよオカーサン、

変に気が張ってただけだよ。と

内心思った。


気分が重かった。

昨日はズボンがゆるく気をとられたせいでうまくいかなかった。とか

どうしようもない言い訳が頭を巡った。

が、時間が迫る。


急いでベルトを、鞄につっこんだ



おはようございます。


バ先で挨拶すると

なんとなく場の雰囲気が冷たく感じた。


が、すぐに始まる。

忙しい中、作業が滞るのは僕だけ。

変にあせる。


あ、迷惑なんだ。そう感じた。

冷たい態度の従業員が僕のみぞおちをえぐる。

何回か同じミスをした。

何回か同じ事をきいた。


迷惑そうな、あからさまな冷たい態度に、

わからないことを聞けなくなった。


聞く隙間もなかった。そんなんだから

出来上がったものも見た目が悪い。

やり直して。と、突っ返される。


ここで、『うまく出来ないんですが

コツとかありますか?』


と聞くに聞けない自分がいる。


母が

「うちに来るバイト、すぐ、

『うまく出来なさすぎ!ヤッベ!

助けてくださーい』ってくるから

『よっしゃまかせろ私も未熟だわ』とか言いながら、やってるー」とか言ってた。


一方僕は

見えない壁が立ちはだかる。

この違いは、何なんだろ。

気まずい気持ちが先走る。

きっと顔にも出ている。


遠くに聞こえる店長と従業員の会話。


僕の事で良くない話をしているように

聞こえてしまう。


被害妄想?


従業員の、僕に対する、返事とため息。

悪循環、と考えるのが妥当な気がする。

居たたまれなかったが僕が悪い。


出来なさすぎて。


たった2日目で、僕は僕なりに

仕事ができないから嫌われたんだと

痛感した。


内心、嘘だろこれ。どういう状況?

会話の、キャッチボールが出来ない。

それどころか、僕はブルペンにすら

入っていなかった。


クッソ重い気持ちで退勤の打刻をした。


17時過ぎ。

重い気持ちをひきずりながら帰路につく。


母の

「今日どうだった?2日目だから、わけわからんか。お疲れ!!」

と迎えた顔は笑顔だった。


疲れた。全然できなくて。

言葉がもれる。

実際、僕は本当に疲れていた。


母は今のパート先に10年以上勤めていて

色んな人を見てきた。


もちろん、学生のバイトも。

「最初なんて、できなくて当たり前。

覚えるスピードなんて個人差だし。

ミスはだれでもあるさ!

がんばって。」


明るい母と対照的に、

僕は、すこぶる気分が重い。

また、あの妙に冷たい人々の中へ行きたくない。


ため息がでる。高熱でも出ないかな。

即休みますよ?


明日も行かなきゃいけないのが

嫌すぎる


夜も眠れない。落ち着かないのだ。


数日で辞めたらはずかしいという気持ちが燻っている。


何故なら…バイトの面接のこの日

さっそく父に報告した。

これが仇となった。


父が自分の実家に物を取りに行ったついでに

祖父母に、僕のバイトの話をしたからだ。


母は、そんな父に、

「まだ続くかどうかわからないのに

言うのは早すぎ!

夢生が、ここでがんばるって

落ち着いてからする話でしょ?」

と、少し怒っていた。


頑張る気力はない。

だって、バ先最悪。

僕のライフは

ゼロに近いんだよオカーサン、と

本気で思った。


祖父母に話してほしくなかった。

それは母と同感。


だけどこの父が面倒な性格だから

僕は黙っていた。


母は、文句ならまだあるぞ!

と、言わんばかりに父に詰め寄る


「お前の親。

お兄ちゃんもがんばってるから、

がんばれとかさ。言ってたでしょ?

変なプレッシャー与えないでほしい。

ああ、本当クソババア」


父は黙るしかなかった。


母が

「クソババア」と

口悪く呼ぶのは、理由がある。


実際祖母に

「私から見て、お前、マッジでクソババア」

と言った事実もある。


母怒ると、口が悪くなりすぎる


母は、祖母に、

「お前が私にしてきたことを許さない。

しかも孫いびりまでしてるの、自覚ある?

嫁だけじゃたりんか。

表向き、良き姑。裏はしょうもねえな!

2度とそっちいかねぇからな!」


と祖母を怒鳴りつけたのだ。


クソババアにいびられたのは、

僕の妹だった。


この話の内容も壮絶。別の話だが

簡単に説明すると、

妹は、小学生の低学年の時、

病んだ。祖父母が原因だ。

学校に相談した、母。

先生が、作文を神楽に書かせた。


その先生は養護教諭だった。

「お母さん。難しいですが、祖父母に

会う時間を減らしましょう。

あの、天真爛漫な神楽ちゃんを、私は失いたくない。」と話して先生が泣いた。



スクールカウンセラーもついた。

カウンセラーが、母に

「私、不謹慎ですけど、神楽ちゃんに

会うのスッゴク楽しみで。」


母号泣。


父は、自分の母親が

クソババアと言われても反論しない。

出来ない。父は、知らない振りしか

しなかったから。


反論できなかった。

れだけの事を祖母はした。


父が小さい声で、「バイトの話しただけで、

くだらない…」

とボソボソボソボソ言っていた。


母が、

「何回も聞かないとわかんない?あんた頭悪すぎ!」

と父を責める。


父も怒ってきた。


だいたい我が家が大変なのは

この父が色々やらかすからなので、

そのストレスも 母にはある。

だから、いちいち父にきつい。


とにもかくにも、ケンカになってきた。


めんどくさいなぁ、

そう感じ、僕は自室へ向かった。


バ先も、家も落ち着かない。

グチでもこぼしたいなぁ。


誰かに話す勇気もない。

説明出来ない感情がある。


ぐるぐる頭がまわる。

朝がこないでほしい。


眠れなくて夜中になってしまい、

水を飲みに居間へ行く。


妹がパンを噛りながらスマホをいじっていた。

今年の春、高校生になった。


「夢生さん、まだ起きてたん?寝なよ

てか、寝れないとか?」


そんな感じ。暑いし。と答える


「チャッピーに眠れなくて困ってるって

聞いてみたらぁ?」


スマホの画面から目を離さず

言ってきた。


AIかよ、微妙だわ…。


「チャッピーには色々聞いてるけど

かなり使えるよ。内緒の相談とかー

神楽はめっちゃ助かってるからオススメだよ」


いや、ゲームして時間潰すわ。

僕は部屋に戻った。



…何か…やかましいなぁ。

頭の上で、やかましいなぁ。


母だ。最強の目覚ましだ。

「夢生!起きなよ! 今日バイト10時出勤じゃないの?ほら早く! 」


「やだ!

スマホバッテリーやばいんじゃない?

充電して! その間、支度しなよ!」


スマホの、バッテリー…

あ?そうかぁ、朝になっちゃったんだ。


ああ、だるい。だるすぎる。


母捲し立てられ、ヨタヨタと階段をおりる。


スマホのバッテリーが残りわずかって。

僕のライフと同じだなぁ…に


ああ、そうか。

ゲームしたまま、寝落ちしたのか。


出勤3日目。タイムカードは

9時50分。遅刻はしなかった。

仕事中、またあの冷たい雰囲気が

襲ってくる。


ハイハイハイハイ。あーそーですか。

皆さん僕がいて、気分悪いすか。


もう気持ちは折れていた。


周りの人に

新人に完璧求めてんじゃねえよ!

だるそうにしてないで、教えてみろよ!

なんて心の中で、悪態をついていた


ふと、

あ。メガネ。

ちょっと、汚れてきたから、拭きたいかも。

と思っていた矢先、


店長が、気だるそうに、

「夏休み教習所の予定は?」

と聞いてきた。


急に何?と思ったが、

いやまだ考えてません。と答えた。


暇でもないし、むしろ忙しい時に何なんだよ

聞いてきた理由くらい言えばいいのに

ワケわかんない。あほくさすぎて

べっっつにどうでもいいわ!!こちとら

ダルいし!!

と、店長のそんなひと言にイライラした。

何故かって?店長の態度が悪いから!!


その日の退勤は14時すぎ。

メガネが汚れたまま帰ってきちゃったな。


帰宅すると、

母が「あれ早いね。なんかあった?」と聞いてきた。


何もない……あー、でも何か

教習所、車の、行かないかどうか予定聞かれた。意味が、わからん。


母も、首を傾げながら

「…なんだろうね?聞いてみたら?

必要そうなら、大学進学してから検討しますって言えば?」と言っていた。


まあ、そうだね。でもいいや、

終わった会話だし。

それだけ母に伝えて2階へ向かった。


部屋のドアを開けたまま

神楽が、スマホで何かしている。


たぶんバ先を探しているはず。


あー、自分あんなくそみたいな所やめたいけど、神楽に先越されたら気まずいよな。


なんとなくそう思ってしまうのは、バイトでダメになりそうな自分がいるから。


夕飯は疲れすぎて、あまり食べなかった。


この状態のメンタルで、『飯を元気に食う』ができるのは神楽くらいだな。


父が、

「体がもたないから、食え!だからお前は弱いんだよ!」

と強めに言ってきた。


だけど正直、今は構いたくない。

ああ、もう本当にウザイ。ダルい。


父のだる絡みが始まるまえに、

自室へむかった。


何も考えたくない。考えちゃうけど。

今日の出来事が頭の中を駆け巡る。


ストレスと不安で、開いたゲーム画面も

ただ、見てるだけ。

自分でも引くレベルの豆腐メンタルだ。


どうにもならなかった。


友達に愚痴をこぼしたいけど、

『そんなことで?』

と返されたら、何も言えない。



バイト4日目。

10時前にタイムカードの打刻。


この日の退勤の打刻は12時すぎ。

やけに早い。早すぎて内心

あー、やっぱりかと、意味なく呟く。


それも、悪い方での、やっぱりか…だ。


「ちょっと話がある。」

そう言われ、


面接の時と同様に事務所へ向かう。

何ともいえない、重い空気。

歩く靴の音より、僕の心臓が鳴る音の方が

大きく感じる。


気のせいではない。


店長の態度は今までで1番悪く

嫌な予感が……じゃない。

これは直感だった。


事務所に入ると、店長がエアコンのスイッチを入れた。稼働する音がやけに耳について

さらに気分が悪くなる


…そう感じるくらい今の時間が重苦しい。

この時まで、僕たちはお互い無言だったから


店長が椅子を引き、座る。


窓から、夏の太陽が明るく照らしているのに、店長の顔には影ができて、よく見えない。


「あのさぁ、仕事覚えわるいよね?」


立ったままの僕にそう言った。


僕の鼓動が、早くなる。何も言えない。

間ができる。足が竦んで声も言葉も出ない。

心臓が、ますますうるさい。

お説教?長くなる?変に考える。


僕は何も言えず下を向く。


こんな時なのに、

ああ、店舗用のシューズ、用意してなかったな。

バイトに来てから、この数日で汚れた

自分のスニーカーの爪先を見る


店長がため息をつき、僕は店長の方を

反射的にみた。


「合わないんじゃない?仕事。」

と上目遣いで言ってきた。


何も言えない。

吐き気に似た、何かが込み上げる。

喉がなる。



店長が、顎をひき、ため息をつく。

「正直うちにはちょっと…。

次のバイト先、考えた方がいいんじゃないの?」


その言葉で

僕の胃のあたりが重くなる。


次の?バイト先?え、、?


何か言わなきゃ…声がでない。


さらに店長の言葉が続く。

「学校で勉強不得意なんじゃないの?」

と、聞いてきた。


喉が貼り付く。無理やり唾を静かに飲み込む。

苦手です…。小さく僕が答えると、


店長はため息をつきながら

「あーー。勉強できないんだ。無理なんじゃない?色々…さ。」


は?それって今する話なの?

吐き気に似た何かがこみあげるせいか、

声がでない。


こんな時なのに、メガネがまた

汚れているのに気付く。


耳には言葉が聞こえている。

なのに

頭がついていかない。混乱する。


店長が、もう何回目かのため息をつく

「とりあえず明日は来なくていいから

あがって。」


言われるがままにあがった。

汚れたメガネが僕をより一層みじめに

した。

その後どうやってバ先をでたのか

記憶にない。


帰りのバスの中。

どうしよう。自分が悪いのに焦る。

バカだからバイトダメになったって、

母に話す?


こんな情けない話をどうやって?

僕の脳裏に響く

母の、「明日何時に出勤?」の声。

話したくないけど 話さなきゃ。


気分もますます悪くなる。


バスの窓から照りつける太陽が、

ジリジリ後頭部にあたる。頭痛がする。

だけど、

頭が痛いのはそのせいだけじゃないって

唯一わかる。


家に帰りたい、帰りたくない。


自分が悪い。

成績が悪いから仕事ができないんだ。

店長の言葉と態度が脳裏に焼き付いて、

消えない。

店長がまるで黒い大きな影に思える。

ぼくはその影に飲み込まれながら

気がついたら、家に着いてしまった。


「夢生、なんか帰り早くない?

体調わるくなった?顔色悪いし。

早退したの?」


母はすぐさま、心配してきた。


いや、、お母さん。ごめんなさい。

自分、バイトダメだった。


「え?」


仕事できなかった。

全部自分が悪いからごめんなさい。


まだ玄関に入ったばかりだったけど、

口が勝手に動いた。


これで終わり。


少し間をおいて、

「合う合わないはあるし…とりあえず、

入って。」

と母にうながされた。


ソファーに、座る。

疲労。ストレス。


母は、

「しんどかったんじゃないの?色々」

と言いながら、

パタパタと、スリッパの擦れる音を

させながら冷蔵庫を開ける。


その音が妙に耳につく。


冷やしたペットボトルの水を出して僕に渡しながら、

「店長に辞めたいってちゃんと話したの?シフト入ってるならその分は出勤してからって、店長に…」


という母の言葉を遮って


違う。店長に、言われて。

覚えわるいねって………。


「え?」


母の顔が見れない。


お兄ちゃんみたいに、バイトして…

自分の事は自分でやりたかった。


でも無理ごめんなさい。

あそこに行くのは怖い。

情けなくてごめんなさい。


そう言って、

なんとか母の顔を見る。

動揺してるような怒っているような、

顔をしている。


「今日4日目だけど。

でもってあなたの悪いところは、

まぁ………後で話そう?

で、店長と話したこと、

覚えてる範囲でいいから教えて。」


店長が言ってきたことを、母が知ると、


「お母さん夢生の、勤務中の様子がわからない。当然だけど。

仕事ができなかったって話は、

覚える気が、なかったのか、

聞くに聞けなかった何かがあったのか。

この、2つは重要なんだよね。

さっきからどうして自分だけが悪いってなってるの?それって仕事放棄した人の事だってお母さんは、思う。」


店長が、覚え悪いって。

だからダメなんだよ!!

このひと言を口にだすのも躊躇う


「それで?」


本当に自分が悪くて。

わかってるけど!


だから!!


その成績じゃ、、

仕事できないよねって店長は言いたいんじゃない?


母が、

「勉強できないから、ダメ?それはおかしいでしょ。

筋がちがうんだけど。仕事できない人皆、

学校の成績悪いってなるけど。」


筋もなにも。実際成績よくない。


「だから。勉強苦手だからって、

ネチネチネチネチ言うの、

聞いたことない。

実際うちのバイトの子、大学院生だけど

仕事できなくて、大変なんだから。


それにしても、あんたの店長も大概だわ

牽制したつもりかよ!ってね。」

母は、呆れていた。


「店長次どうするか指示はあったの?」


明日は来なくていい、休んでしか言われなかった。そう答えると


母が少し考える。

「うーん。明日は、来なくていい、

休んで。

しか言わないんだ。へー。

例えば、

退職の手続きあるから都合はどうかとか?

まずは電話でもいいから、今週中にでも連絡してとか。言ってなかった?」


なかった。


「ぶっちゃけ辞めろって言われたんだよね?」


辞める話はしてなかった。

合わないんじゃない?って言ってたけど。

明日は来なくていいしか、聞いてない。


「ん?明は?って?…明日から、じゃなくて?」


明日は来なくていいから休んで。だった。


「相当自分を責めてるけど…

店長がタチわるいなぁ。

もう、来なくていいとか、はっきり

言わずに、

次のバ先考えろって、いったんだよね?」


うん。そう。


「休んでいいとか。店長の話浅いな。

辞めろとかもない…曖昧すぎる。」


少し母が黙る。何か考えてる。

店長の発言が引っ掛かるんだろう。


「察しろってか。私はそう受け取った。」


ひと息ついてから、


「ちょっと2日時間もらうわ。店長から電話きたら、お母さんでるから。

お母さん居ないときは絶対出ないで。」


いや、声も聞きたくないから、大丈夫。


あの店長の様子は、

なんなら記憶から抹消したいレベルで

態度が悪かった。


「お母さんも、自分から店長には、連絡しないから。

心配しないで。あ、着信の履歴は残して。」


履歴は普段も放置してるし、もうくたびれたし…わかった。とだけ母に言った


これで、母に報告は終わったと思ったのに


「バイトが勝手に来なくなったで終わらせない!次のバ先考えろって?

退職の話も、曖昧にすませて匂わせかよ。

やっぱりちょっと整理してまとめる。」


…話の持ちかけ方がどうのこうのと

母がぶつぶつ言ってる。


僕は焦った。やめてくれ。変に恨まれたくない。あの人、底意地悪そうにみえて

気味が悪い。


自分が悪いで納得できてる!

もういいから!

だから!!

店長にケンカ売るとか店長責めないで。


成績悪くて本当に自分がバカだったから。


ユニフォームなら、お金払って弁償するから。捨てていい!

お母さん何もしないで。お願い!

親がでてくるって恥ずかしい!


一気にまくしたてる。あの陰湿な店長の

影の中に親まで巻き込みたくない。


汗が頬をつたう。首筋に流れていく。

辞める話も自分1人じゃ、出来ないのが

情けない。


母が静かに口をひらく


「夢生、たしかに、お前も悪いとこある

けど、大切な話を夢生に伝えなかった。

そこが問題」


「けど、店長も…あほだよ。

そんな阿呆な小物にケンカ売るわけないでしょ。

お母さんのケンカスキルもったいないわ」


「夢生は大人しいから親も大人しいとか、俺は上手く言ってやったとか、思い込んでそうだよな」


だから?それが何?


「バカなりに察しろって言いたいんじゃない?」

母は、中指を立てる。


「バカ扱いで結構っす!

そのバカに正論ぶちまけられたらどう出るかなぁ?」


母の顔に怒りが滲む。


いや、本当に何もしなくていい。

お母さんは関係ないから!


ぼくは声も大きくなる。


しかし、

母は、スンとして

「お母さんが思うに、店長からあんたに連絡来ないと思う。」


いや、また、何それ?とつぶやく。

てゆーか電話こないでほしい。


「急に来なくなったバイトは、こっちから連絡しても、無視されたーとか言えばいいからさ。着歴は必須になる。逆に言えば

着歴がなければ、放置してるって事」


だから、

それでいいってば。ぼくはため息まじりだ。


「まぁ、今日は夜までゆっくりしてなよ

ただし!

お父さんに話すのも今日ね。

後回しにしたら、ますますやばくなるわ!」


ヤバくなるのはいつ話しても同じじゃないか?


父のヤバイ所は沢山ある。


母は何度か、ケガをしている。

我が家に警察が2回来たことがある。


1回目は、兄が中3の時。

この時は

食後すぐの兄のみぞおちを父がなぐり、

うずくまった兄の髪を掴み顔を殴る。

頬が赤くなった。


何度止めても、止まらず

母が通報した。


警察が到着する前に

父は殴るのを辞めた。


僕は、警察に何でもいいから

父を連れていってほしかった。


だけど、

警察が『民事不介入』と言うし

父は『加減した、ただの親子ゲンカ』だと

主張した


母は、兄を夜間救急につれて行った。

当番医に

「今のところ、問題ないから

何かあれば救急車よんでね。

万が一の時はお母さんの判断だから」

と言われた。


兄も翌日いつものように登校した

母はまだ怒っていた。


母は、

警察へ相談の名目で電話をし、

家に呼んでいた。


「感情論ではなく、適切に子供を守りたい。

それだけです。」と前置きして。


冷静にそういった母だけど


心の中は

民事不介入で解決させねーからな!

ふざけんな!!だった。


同行していた婦警さんには話が通じた。

母の話に親身になり、

何よりも僕たちの身の安全を考えた。


今回は、児童相談所と連携し、

経過観察になった。


家に翌日児相の職員がきて

「兄と2人で話したい。」となり

兄は自室で面談した。


職員は、「お兄ちゃん、すごく落ち着いて話してくれました。」


と話の内容を報告してくれた。


兄は、

「食後にすぐ、みぞおちを殴られた事が一番ショックだった」と

話した。

「お兄ちゃんの件、学校にも報告します。」との事だった。


報告を受けた兄の担任が来て、

目に涙をためながら、


「佐上を、澄空を…どうやって守るか。

職員会議で話しました。


お母さん、ささいなことでも、結構です。

何かあれば連絡をください。必ず。」


鼻をすすりながら、頭を下げそう言った。


母が慌てて

「いやいや逆です。お世話になります。

すみませんがよろしくお願いします」と頭を下げた。


僕は、子供の素行不良じゃなくて

父親の素行不良で、逆転親子かよ、、と

心底恥ずかしかった。


母は、なんとかこの件を落ち着かせた。

内心、父を許してないけど…。


2回目は、僕と父で児相案件が発動した。


児相職員が過去資料をみて


「お兄ちゃん、夢生くん、警察を呼ぶ事案になったのが…


2人とも中3の秋なんです。


時期を考えると…


お父さんと、いわゆる進路で揉めたかな?」

と言ったが


僕たちは、

いやいや。受験で揉めてない。

お父さんは、

ただの酒癖が悪い人なんです。

なんて口に出して言えなかった。


またもや、父は逮捕されずおわった。

親子ゲンカで済まされただけだった。


しかも父は警察にお兄ちゃんの優勝トロフィーを見せ、自慢していた。


この時の兄の気持ちを想像すると

切ない。

通報したのは兄だったから。


父はしょうもない。


「警察に俺を売りやがって。大げさなんだって!

警察だって暇じゃねーから!!」


そう言った父の顔が醜いくらいゆがんでいた。


売るとか売らないとかの話ではないはず。


どこかで耳にした

『酒は飲んでも、のまれるな』


大人になっても、忘れないようにしたい


僕や兄は、むしろ、お金払うから

父を連れていってほしかった。


そんな父相手に話すのは、気が重い。

嫌な時間が迫る。


今夜は修羅場だ。

僕は今、遠くに行きたい。


何ともいえない重苦しい気持ち。


考えるのは、

バイトの時の事。

気持ちに負けないで、出来たことも

あったはず。なのに、出来なかった。


後悔と、少しの苛立ち。


気がついたら、

「ちょっと。寝てる?

起きて、お父さん話聞くって。」


ベッドに転がったまま、


あーーー。さすがに疲れたから、

明日じゃだめ?明日何も予定ないから

明日話したい。


「お父さんに、お酒飲まないで先に話きいてやってってお願いしたから、それに

明日話したら、なんですぐ話さなかったかって言ってくるから」


母が僕の腕を軽くつかみながら

そう言った


モソモソと起き上がり母の後ろを少し離れて階段をおりる。


居間で父が何故か立っていて

母が、座ったら?と言った。が、

父は立ったままだ。


「で?話は?」


僕は

お父さんごめんなさい。自分が悪い話だけど…バイト、だめでした。


と早口で一気に言った。父相手だと

母とは別の気まずさがあるから。


「何がダメかわかってんのか?」


僕は母に話したときより、丁寧に

事の顛末を話した。


が…

見えてしまった。

父の手に、スト缶が。

飲み干した。慣れた感じで缶を潰し

いつものように、冷蔵庫から

また缶をだし、開けた。



母が「!」となり、

父から取り上げてテーブルにおいた。


「あんた飲んだら話できなくなるから!」

母が言った


父は「よってない」


いや、テレビ特番でみた酔っ払いのセリフだし!!

と思ってしまう。


続けて僕に、


「おまえは、根性がない。」


-いや、お父さんの息子って

だけでも、かなり根性が必要。


「返事もおそい。」


-そもそも、お父さん酔ってて

人の話聞いてないし!


「仕事をバカにしている」


-根拠の無さそうな

決め付けは、どうかと思う。


心の中で、返すしかなかった。


他にもごちゃごちゃ言っていたが

正直、ネチネチうざい。


ああ、もう! お父さんと会話無理!

心の中で言う。


母も、何度か遮っていたけど


父が「だからお前はだめなんだ」

と、僕に言ってきた。


母が

「今論点そこじゃない!

店長の話が曖昧だったからその話。

気持ちもわかるけど…」


父は、全く母の話を聞いてなかった


「お前、俺になんか言うことないのか?

ごめんなさいしか言えないのか?」


僕にしてみたら、何を話せば正解か

わからなくなる。話したくもなくなる。


しんとなる。


父が「何かいえや。」

と、僕の肩を押してきた。


僕はよろけた。


母が「夢生!部屋!!戻りな!!」

と父の服を掴みながら、言った


父が「逃げんな」と叫ぶ。


母が、父が2階に来るのを止めているのが

背中に伝わる。


多分父の服のどこかをつかんでいるはず


僕は、

自室へ行き、ベッドの布団に潜り込み、

息をととのえる。

…外に行けばよかったと後悔した瞬間


布団が捲られる。


側頭部に、痛みが鈍く響いた。


父だ。目が据わった、父だ。


僕は殴られたんだ。


体を丸めたが、髪を掴まれる。

今度は、頬に痛みがきた。


母が、僕に覆いかぶさり


「ごめん、出遅れた。お母さんも突き飛ばされて足ひねったわ。」

早口だった。


父は母に「どけろ」、とか

僕に「逃げるな」とか

怒鳴り散らしていた。


ああ、どうしてうちはこんななんだろう。


母が「神楽!警察に電話して!早く!」


神楽が泣きながら部屋にきた。

鼻をすすり、肩が小刻みに揺れている。

「手が震えて無理」と言った。


「くだらないことで、警察よぶな!

お前はバカか!」父が怒鳴る。


「バカはお前だよね!?

酒に飲まれてしょうもねえな!

神楽、電話!

繋がったらスピーカーにして!

話しはお母さんがする!」


母が怒っている。


父は、母の頭を平手で叩き、

「お前が甘いから、こいつこんな根性ねぇんだよ」

と言いながら、部屋をでた。


逃げてるの、どっちだよ。母がつぶやく。


「お、おかあさぁん…けーさつ呼ぶぅ??」

神楽が泣きながら聞いた。


「いや、いい。」と母は断り


「夢生、病院いこう。痛いところあるでしょ」と言いながら、僕のケガを確認した。


痛いのは、痛いけど、今は1人になりたい。

よっぽどになったら、行く。


本当に今は

そっとしてくれると、ありがたい。


お母さんこそ、大丈夫?足…


「お母さんは大丈夫。神楽、冷やしたタオルとアイスノン、持ってきて」


「絶対、様子変わったらおしえて。もしくは明日病院行く。」と念をおして、神楽と出ていった。


母は、少しびっこを引いていた。自分のケガより胸が痛む。


数分後、神楽が来て、

「夢生さん、大丈夫?タオル冷やしたのと

アイスノン、ちゃんと当てて。

欲しいの他にある?、、

あ、痛み止めの薬は?

それからえーっと、、

喉かわいたら、、、

待ってて水筒もってくる!

あとなんか、欲しい?」


泣いた名残で鼻声の神楽が

矢継ぎ早に色々言ってきた。


ちょっと笑ってしまう。

神楽がアワアワしているからだ。


ありがとう。大丈夫と言ったが、


世話焼きの神楽が


「お水だけは持ってくる」といって、ベッドの棚に、水筒と、痛み止めの薬をセットしながら、


「こんな時に、澄空さん飲みにいってて、草。」と、軽くため息をついていた。


そう。スカイさんが不在。


父は

成長し、逞しくなった兄に勝てないと思ってしまうのか


兄に、「殴られてぇのか」

と言ってつっかかっても、

兄は冷めた顔で

「どーぞ」とひと言だけかえす。


それ以上、発展しなくなった。


神楽が出ていき、やっと落ち着く。


僕はまだ混乱してる。


父親のこと。バ先のこと。


なんとなく開いたスマホの動画も、

ゲームもただ見ているだけ。


誰かに話したい。

でもこんな話をだれにする??


スマホを手に布団に潜る

誰かに吐き出したら、楽になれるかな。。


父に殴られて頭に出来たたんこぶが

痛いし、

唇の端がヒリヒリする。ちょっと血の味もする。


怪我の経緯を人に話せるほど

元気じゃない。


誰かに

吐き出せたら楽になるかなぁ…


いや、無理。普通に恥ずかしい


父に

やられっぱなしの自分を、


店長に

言われっぱなしの自分を。


打ち明けるには、メンタル的に

難しい。


…「内緒の相談とか。」ふと神楽のことばを思い出した。


スマホの画面をスワイプし、

検索バーで、アプリを探す。


ああ、これだ…。


ChatGPT


ゆっくりタップする。


インストール。


僕は、、今チャッピーを呼んでいる。

画面の1部を見つめる。


チャッピーの到着までもう少し。


何から話そうか。僕は布団から頭を出し

考え始めた。

















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